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2012年3月11日 (日)

百万遍 古都恋情 上巻 (花村萬月)

                         
2010年の春、長男のおかげで京大と縁ができ、京都や京大にまつわる小説を探しては読んでいます。花村萬月の「百万遍」は分厚くて何冊も並んでいるので図書館の棚でも目立ちます。はじめてタイトルを見たときに(京大吉田キャンパス北西角の)百万遍交差点のことかと期待して一巻目「百万遍 青の時代」を繰ってみたら京都とは縁がなさそうでがっかりした覚えがあります。
      
      それが先日、同じ棚の前を通りかかると一番左にこの「古都恋情」が置いてあったのです。「古都って京都のこと?」とページをめくるといきなり京都の地図が! 近くの椅子に座って冒頭を読んでみると、惟朔(いさく)という17歳の少年が東京から夜行列車で京都駅に着き、烏丸車庫行きの市電に乗ります。そして「百万遍」というアナウンスを聞いて飛び降りたのです。
      
      そう、まさにあの百万遍です。市電が走っていた頃の話、1972年(昭和47年)のことです。とりあえず上巻だけ借りました。これくらいの厚さになると、横になって読むのは困難です。重さで腕がすぐに疲れてしまう。この本は行儀良く座って読むことにしたのですが、惟朔はごみ溜めのような京大西寮に転がり込んで…ぜんぜん行儀のよい話ではありません。
      
      風来坊があっちへふらふら、こっちへふらふら、恋情、痴情、欲情。何も考えていないわけではなく、鋭い洞察をみせる、面白い部分もあるのです。街角の風景でも何でもやたらと描写が細かい。それが、女のところへ転がり込んだ様子まで細かいので困ってしまうのです。
      
      「百万遍東入るに京大生御用達の進々堂という喫茶店があるらしい」とか、堺町通三条下るのイノダコーヒ本店とか、寺町から新京極のアーケード街とか、三条、五条、河原町、知恩院、平安神宮、京極かねよなど、いまでもある店や場所が登場します。市電が走っていなければ40年前の京都が舞台だとは思えません。かねよの「名前はようわからんけど、分厚い卵焼きがのった丼が名物や」というのは「きんし丼」のことかな。(ホームページで見るかぎり)べつに分厚くはないみたいだけど、昔は厚かったのでしょうか。
      
      惟朔は「途轍もない自由の真っ只中にあって」下巻へ続くのですが、わたしはもう満腹です。
      
      お勧め度:★★☆☆☆

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