« Story Seller 3 (有川浩、他) | トップページ | プリズンホテル 2 秋 (浅田次郎) »

2012年2月13日 (月)

プリズンホテル 1 夏 (浅田次郎)

ヤクザ小説作家・木戸孝之介のたったひとりの身内である叔父・仲蔵がリゾートホテルを買い取った。ヤクザ、いや任侠団体専用ホテルなので人呼んで「監獄(プリズン)ホテル」。招待された孝之介は仕事を兼ねて「秘書」の清子を連れてホテルへ出向いたのだが…。

奥田英朗の「精神科医・伊良部シリーズ」は、まっとうであるはずの医師がでたらめなのですが「プリズンホテル」では、でたらめであるはずのヤクザ従業員たちが意外なことにまっとうなのです。悩みや問題を抱えた客がやってくるところは共通しています。客とはこの場合、怪しい小説家・孝之介と清子、任侠団体一行、懲役を終えたばかりの入れ墨男、定年後のフルムーン夫婦、一家心中を図ろうとする親子5人。

「プリズンホテル」の従業員たちはヤクザではなく任侠と呼ぶそうです。だとしたらヤクザなのは孝之介 です。粗野で乱暴であまりに胡散臭いので本を閉じたくなったのですが、浅田次郎だから一癖あるだろうと観念して読み続けてよかった。面白かったです。「精神科医・伊良部シリーズ」同様、なぜだかわからないけれど、客たちは癒されて悩みが消えてしまうのです。凄腕シェフと板前が腕を振るうところは、おいしい料理を食べて生きる勇気をもらう「みをつくし料理帖」(高田郁)にも通じるところがあります。

このホテルのパンフレットには「一泊二食ソフト付き」って書いてあるとか。宿泊客は翌朝、従業員チームとソフトボールの試合をするそうです。そのチーム名が「木戸アウトローズ」と「大曽根バッドマンズ」。おまけにカラオケバーの名前は「しがらみ」と、笑わせてくれます。「今夜は”しがらみ”でパーッと盛り上がろうぜ!」って…どう考えても盛り上がらないでしょう。随所に落語的な可笑し味を感じます。そもそもタイトルからしてふざけてます。プリンスホテルならぬプリズンホテルですから。

「ぼったくりバー」ならぬ「ぼったくりホテル」かと思いきや、危なくてヘンテコな連中が、彼らなりに真剣に接客業に取り組んでいるのが可笑しい。こんなホテルがあるわけない。あるわけないから面白いのです。

お勧め度:★★★★★

« Story Seller 3 (有川浩、他) | トップページ | プリズンホテル 2 秋 (浅田次郎) »

現代小説」カテゴリの記事

2018年12月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          
無料ブログはココログ