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2012年1月10日 (火)

舟を編む (三浦しをん)

わたしは本を読むとき(カバーをかけるのではなく)カバーを外します。片手で本を開いたとき、カバーや帯があると邪魔になるし、喫茶店などで読むときにカバーがなければ何を読んでいるか傍目にわからないから好都合なのです。しかし「舟を編む」はカバーを外したほうが目立ちます。だって漫画(イラスト)が描いてあるんだもん。以前読んだ「それから三四郎は門を出た」に、三浦しをんは漫画も大好きとあったから「あ、こういうことね」と納得。

玄武書房の辞書編集部主任・荒木公平が定年退職を控え、新辞書「大渡海」の監修を依頼している村上先生に紹介した後任が、営業部から引き抜いた馬締光也27歳。名のとおり「まじめ」なのだが、どうにも頓珍漢で…。

世の中いろんな人がいて、いろんな仕事があります。その中で辞書編集という仕事を小説として紹介してある本です。面白かったし、最後は泣けてしまいました。

いろんな言葉をどう説明するかで苦心するシーンが多く、図書館に出かけた折に「右」を引いてみました。「広辞苑」第6版は「南を向いた時、西にあたる方」。うーん、なぜ南? 京都御所から見て右左という話じゃないのだから、わたしは「北を向いて東方」というほうがしっくり来る。「広辞林」も「言泉」も同様。「日本国語大辞典」はそれに加えて「人体で通常、心臓のある方と反対の側」ともありました。そして国語辞典の草分け「新訂 大言海」(大槻文彦)を引くと「人ノ身ノ、南へ向ヒテ西ノ方。左ノ反」。大言海に倣ったというわけですか。でも「大辞林」第3版に「その人が北に向いていれば東にあたる側」とありました。わたしは大辞林が気に入りました。そういえば「大渡海」専用の紙を開発する話がありますが、それぞれの辞書によって厚さ、手触り、色など紙質はちがいますね。興味のある方はぜひお近くの図書館へ。

「大言海」の扉にある大槻文彦の略歴を読んで「この本は大槻へのオマージュだったんだ」。言葉の海を渡るための舟(辞書)を「編む」のです。なにかを生み出すには言葉が必要。しかし、1冊の辞書をつくるのに15年とは…実際そんなにかかるのでしょうか。根気のいる仕事です。

お勧め度:★★★★★

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