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2012年1月

2012年1月31日 (火)

ダンタリアンの書架 8 (三雲岳斗)

名古屋市図書館で借りている都合で、1巻から5、6、4、7、3、そして最終巻の8巻にたどり着きました。あとは2巻だけ。
  1. 王の幻書
  2. 最後の書
  3. 永き黄昏のヴィネット

今回はいつもより長めの話が3本。1話は暗黒大陸にある「幻書の墓場」への冒険行、2話はクッキーのおまけ絵本全8種類をコンプリートすべく走り回るダリアン、3話は老いることのない、完全な世界を手に入れられるという幻書を探す話。

銀の読姫フランを連れた焚書官ハルは幻書を焼くのが使命なので、膨大な幻書を蓄えているダリアンを目の敵にしています。これまでもなにかにつけ突っかかってきたのですが、今回で「勝負あった!」でしょう。それにしても、ダリアンもフランも読姫たちは口が悪いですね。でも、ヒューイがフランと親しげにすると不機嫌になるダリアンがかわいい。

2話は、変なところでマニアックなダリアンのコミカルな面が強調されています。むかし流行った「チョコエッグ」を思い出しました。オマケ目当ての人はチョコは捨てていたようですが、ダリアンはお菓子を捨てたりしません。おかげで気持ち悪くなったようですけど。(笑)

3話は、最終話にふさわしく充実した内容です。「完全な世界」を担保しているものはなにか。ホラーファンタジーの面目躍如です。

お勧め度:★★★★☆

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2012年1月29日 (日)

ダンタリアンの書架 3 (三雲岳斗)

1巻から5、6、4、7、そして3巻にたどり着きました。順不同でも問題なく読めます。
  1. 換魂の書
  2. 忘却の書
  3. 黄昏の書
  4. 魔術師の娘
  5. 償いの書

断章(ショートショート)として「眠りの書」と「美女の世界」が挿入されています。

いちばん面白かったのは「黄昏の書」。先にアニメを見たので「ダンタリアンの書架」第9話では絵柄がいつもとちがうので面食らいましたが、ちゃんとオチがあります。 「魔術師の娘」って誰のことだろうと思いつつ読むと最後に「え、そうだったの?」。遊園地にあるミラーハウスに入ったような錯覚や幻惑が楽しい本です。

お勧め度:★★★★☆


2012年1月27日 (金)

ダンタリアンの書架 7 (三雲岳斗)

わたしとしては珍しく順不同に読み進めている「ダンタリアンの書架」も1、5、6、4、7巻となりました。(2、3巻が飛んでます)
  1. 災厄と誘惑
  2. 叡智の書 II
  3. 少女たちの長い夜
  4. 鍵守

断章(ショートショート)として「型録」「模倣の書」が収められています。

面白かったのは3話と4話。3話は、幻書を封印するためにジェシカの名門女子校を訪れたダリアンが、誰かが持ち去ってしまった幻書を取り戻そうと、一晩中、ジェシカと走り回るお話。4話は、貴族の屋敷から逃げ出してきた娘が踏んづけたのは満身創痍のダリアン。娘は母親に捕まり、ダリアンもいっしょに屋敷のなかへ。食事を出され、揚げパンに見向きもせず七面鳥にかぶりつくダリアンって…。ヒューイとダリアンの初めての出会いを描いたお話。ダリアンを初めてかっこいいと思いました。どんでん返しが愉快です。

「ダンタリアンの書架」は、わたしにとってラノベというよりも、ちょっとした空き時間に読み切ることができるダークファンタジー。幻書にまつわる話は基本的に苦いけれど、やたら人間臭いダリアンが甘味を添えています。そう、揚げパンの砂糖のように。

お勧め度:★★★★☆

2012年1月25日 (水)

ダンタリアンの書架 4 (三雲岳斗)

1巻のあと5、6、そして4巻にたどり着きました。順不同ですが困ることはありません。基本的に個々の話は独立しています。
  1. 間隙の書
  2. 幻曲
  3. 連理の書
  4. 調香師
  5. 幻書泥棒

断章(ショートショート)として「催眠の書」と「屋敷妖精の受難」が挿入されています。

いちばん面白かったのが「間隙の書」。学園に忍び込んだ脱獄犯の殺人鬼ディフリングにさらわれたかもしれない友人を探す中等部5年のジェシカに偶然出会ったダリアンとヒューイ。ディフリングは神出鬼没で、一体どこに隠れているのか皆目不明。ひょっとして幻書の力を借りているのでは…というわけでダリアンが仕掛けた罠が秀逸。ダリアンにしてはスマートだな、と感心したのも束の間、後片付けはできない娘でした。

ダリアンに限らず、クリスとか夜々のように人間でない相棒がいると結婚できそうにありませんね。

お勧め度:★★★★☆

2012年1月23日 (月)

濤の彼方~妻は、くノ一 10 (風野 真知雄)

彦馬は静山からオランダへ国を開く交渉へ行ってほしいと頼まれ、船で長崎へと向かっていた。一方、彦馬に会いに来るであろう織江を付け狙う鳥居耀蔵率いるお庭番四天王と、その頭である川村真一郎も彦馬たちを追っていた…。

最後の決戦を予感させつつ、いつ織江が現れるのかと気をもたせてくれます。ハッピーエンドになると信じているので安心してハラハラを楽しませてもらいました。(笑)

彦馬が「濤の彼方へ」と言ったところで終わるはずのところ「後記」として、ふたりの後日談が載っています。江戸時代というと文字通り「時代小説」の舞台であり大昔のように感じますが、明治時代になると急に身近なことに感じるのが不思議です。

「妻は、くノ一」は10巻で無事完結しました。めでたし、めでたし。

お勧め度:★★★☆☆

2012年1月21日 (土)

博士の愛した数式 (小川洋子)

交通事故の後遺症のために記憶が80分しかもたない元・数学者(博士)。通いの家政婦(私)と10歳の息子(ルート)は、博士から「神様の手帳」に書かれた数の真実について話を聞き、数学の世界に目が開かれていく。

以前読んだことがあるのですが文庫になっているのを見て再度手に取ってみました。学校の数学は苦手でしたが、数学をイメージとして把握して楽しむのは好きです。数学は新しいものを生み出すというより、世界に埋もれた真実を見つけ出す学問。その真実を、博士は「神様の手帳」に書かれているといい、家政婦の「私」は「神様のレース編み」という比喩がおもしろい。

友愛数、完全数、素数などをはじめてとしてオイラーの公式(等式)が紹介されます。

e^{i \pi} + 1 = 0\,

e は自然対数の底、i は虚数単位、πは円周率。異質な3つがひとつの等式として表されることを博士は伝えたかったのでしょう。世界は静かで、美しい、と。

社会的に弱い立場の人や不器用な人間を包み込むように優しく描く作者の代表作といってもいいのではないでしょうか。これも我が家の必読書とします!

お勧め度:★★★★★


2012年1月19日 (木)

空中ブランコ (奥田英朗)

第3弾「町長選挙」、第1弾「イン・ザ・プール」に続いて、この第2弾「空中ブランコ」を読みましたが、とくに不都合はありませんでした。
  1. 空中ブランコ
  2. ハリネズミ
  3. 義父のズラ
  4. ホットコーナー
  5. 女流作家

1話は、うまく飛べない空中ブランコ乗り、2話は尖端恐怖症のヤクザ、3話は義父のカツラを剥がしたくて仕方ない入り婿の医者、4話は1塁への送球恐怖症のベテラン3塁手、5話は、登場人物設定が過去の作品とだぶっていないか気になって仕方ない恋愛小説作家のお話。どれも楽しく読めました。

読者は「傍観者」ですから笑ってられますが、当事者にとっては大問題。しかし、ある意味、大問題だと思っているから神経が参ってしまうわけです。伊良部の「診察」は遊び感覚なので、空中ブランコ、野球選手、小説家と、なんでも患者の真似をしようとします。プロを指南役に仕立てるわけですから話が早い。

「精神科医・伊良部シリーズ」のなかでは「空中ブランコ」がいちばん面白かった。だれもが「こいつ、本当に医者か?」と疑問に思うほどでたらめな男ですが、深刻ぶった顔をせず、なんでも笑い飛ばしてしまうところから、患者の心の壁を壊してしまいます。本人が意識しているかどうは不明ですけど。

お勧め度:★★★☆☆

2012年1月17日 (火)

イン・ザ・プール (奥田英朗)

伊良部総合病院地下の神経科はちょっと変わった先生がいます。ノックすると「いらっしゃーい!」。色白で太った37歳の精神科医・伊良部一郎は常にため口で、思ったことをそのまましゃべる。初対面の患者は等しく「こいつ馬鹿じゃないのか」と思います。お勧めのストレス解消方法が「繁華街でやくざを闇討ちして歩くこと」。理由は「命すら危ないときに、どうして家や会社のことなんかにクヨクヨできるのよ」。(おいおい)

「精神科医・伊良部シリーズ」の第3巻「町長選挙」を先に読んでから、この第1巻「イン・ザ・プール」に戻りましたが、とくに戸惑うことはありませんでした。
  1. イン・ザ・プール
  2. 勃ちっ放し
  3. コンパニオン
  4. フレンズ
  5. いてもたっても

1話は水泳依存症、2話はタイトルのとおり。3話は自意識過剰なコンパニオン、4話は携帯電話依存症、5話は火の始末を何度も確認してしまう脅迫神経症。ビョーキな人たちがビョー的な精神科医に相談する物語であります。

医学的根拠があるのか、単に面白いように書いているだけなのかわかりませんが、多少神経が病んでも、治そうと思い詰めず自然体でいるのがいいみたい。そういう意味で伊良部先生は「人を深刻にさせない天性のキャラクター」なのですから名医、いや迷医なのでしょう。

お勧め度:★★★☆☆

2012年1月15日 (日)

町長選挙 (奥田英朗)

名古屋市の鶴舞図書館で手に取って1話のページを繰ってみると、野球チーム・パワーズのオーナー田辺満雄が連日マスコミの突き上げを喰らって凹んでいる様子。これって…面白そう!
  1. オーナー
  2. アンポンマン
  3. カリスマ稼業
  4. 町長選挙

2話は小太りでノーネクタイの32歳、M&AでのしあがってきたIT企業社長って…これも? ちなみに、彼は最近ド忘れがひどく、ひらがなが出て来ない。秘書が心配して連れて行った先が伊良部総合病院の精神科。そこにトンデモ精神科医・伊良部がいたのです。

なにしろ田辺満雄が往診を依頼しても「いやだよーん」。相手がどんな有名人であってもタメ口だし、いきなり注射を打つし、他人に対して両親のことを「おとうさん」「おかあさん」と呼んでるし、「これが本当に医者なのか!?」というデタラメぶり。

1話、2話と実在の人物をイメージできたのですが、3話のカロリー摂取恐怖症の44歳の女優はわかりません。ソフィーマルソーじゃないし。4話は伊豆諸島に出向した県庁職員が町を二分する町長選挙に巻き込まれて胃が痛くなる話。熾烈な集票合戦は小さな町ではよく聞きますが、ここまでひどいのでしょうか。

医者も医者なら、患者も患者。ありえないとは思うのですが、でたらめな診察でも患者は治ってしまうところが不思議。あとで知ったのですが、この本は「精神科医・伊良部シリーズ」の第1巻「イン・ザ・プール」、第2巻「空中ブランコ」に続く第3巻でした。

お勧め度:★★★★☆

2012年1月13日 (金)

三四郎はそれから門を出た (三浦しをん)

「舟を編む」の三浦しをんが書いたブックガイド&エッセイ集です。「三四郎はそれから門を出た」ってタイトルだけで、肩から、いえ全身から力が抜けます。「コレ書いたのはゼッタイおかしな(おもしろい)奴だ」というわけで手に取りました。

活字中毒患者である筆者は、書店で買った本を帰宅するまで我慢できず歩きながら読んでいて、駐車車両のバンパーで脛を打って、そのままボンネットの上に倒れること幾度も。「箱庭図書館」(乙一)の山里潮音がここにいました。ほんとにいるんだー。

自宅で本を読むときはたいてい横になって読むとか、両親や弟のこととか、本棚をやめて押入にしたとか、日常のゆる〜い話も満載。「パンツ一丁でベランダに」というから「え、オトコだったの?」。でも wiki を見たら「女性」となってて安心…していいのか!?

作家がどんな本を読んでいるのかわかるし、どう感じたかもわかるのが面白い。「あ、面白そうだから読んでみようかな」と思ったのが、中井英夫の「虚無への供物」や寺山修司の「不良少女入門」、畠中恵の「ねこのばば」、柴田よしきの「シーセッド・ヒーセッド」、斎藤美奈子の「物は言いよう」等々。

このエッセイ集は、どうぞお布団でごろごろしながら読んでください。

お勧め度:★★★★☆

2012年1月11日 (水)

RDG 5 レッドデータガール 学園の一番長い日 (荻原 規子)

いま一気に読み終えました。面白かった! でも、ずいぶん引っ張るなぁ。前巻で「学園祭で何かが起こる」と予感させておいて、クライマックスまでが長いのです。おまけに「つづく…」だし。

いえ、続いてくれたほうがうれしい。体育祭と学園祭を兼ねた「戦国学園祭」。1日目は模擬店や演劇などを戦国「意匠」で行い、2日目は中学、高校合同で八王子城をめぐる攻守模擬合戦が行われるのです。そこで陰陽師の高柳一派がなにかを仕掛けてくるはず。宗田真響、真夏、真澄(幽霊?)三兄弟と泉水子、深行たちは用心していたのですが…。

そもそも、このシリーズでは「レッドデータガール」である泉水子が一体何者なのかが謎なのです。それは本人も知らないことで、周囲の大人たちは、彼ら自身で道を選びとっていくように彼らを見守っているようで、肝心なことは何も教えてくれません。

今回、最後に泉水子はドカンと派手なパフォーマンスを見せてくれ、陰陽師がナンボのもんじゃい!と溜飲が下がりました。ただ、泉水子自身、まったくの無自覚というところが難点。「え、これが高柳くん?」。危なっかしくて頼りないところが可愛い。彼女の願いはひとつ。「ふつうの女の子になりたい。」

前巻で姫神の秘密の一部が明かされたわけですが、泉水子は本当に世界の運命を背負っているのでしょうか? 目が離せません。

お勧め度:★★★★★

2012年1月10日 (火)

舟を編む (三浦しをん)

わたしは本を読むとき(カバーをかけるのではなく)カバーを外します。片手で本を開いたとき、カバーや帯があると邪魔になるし、喫茶店などで読むときにカバーがなければ何を読んでいるか傍目にわからないから好都合なのです。しかし「舟を編む」はカバーを外したほうが目立ちます。だって漫画(イラスト)が描いてあるんだもん。以前読んだ「それから三四郎は門を出た」に、三浦しをんは漫画も大好きとあったから「あ、こういうことね」と納得。

玄武書房の辞書編集部主任・荒木公平が定年退職を控え、新辞書「大渡海」の監修を依頼している村上先生に紹介した後任が、営業部から引き抜いた馬締光也27歳。名のとおり「まじめ」なのだが、どうにも頓珍漢で…。

世の中いろんな人がいて、いろんな仕事があります。その中で辞書編集という仕事を小説として紹介してある本です。面白かったし、最後は泣けてしまいました。

いろんな言葉をどう説明するかで苦心するシーンが多く、図書館に出かけた折に「右」を引いてみました。「広辞苑」第6版は「南を向いた時、西にあたる方」。うーん、なぜ南? 京都御所から見て右左という話じゃないのだから、わたしは「北を向いて東方」というほうがしっくり来る。「広辞林」も「言泉」も同様。「日本国語大辞典」はそれに加えて「人体で通常、心臓のある方と反対の側」ともありました。そして国語辞典の草分け「新訂 大言海」(大槻文彦)を引くと「人ノ身ノ、南へ向ヒテ西ノ方。左ノ反」。大言海に倣ったというわけですか。でも「大辞林」第3版に「その人が北に向いていれば東にあたる側」とありました。わたしは大辞林が気に入りました。そういえば「大渡海」専用の紙を開発する話がありますが、それぞれの辞書によって厚さ、手触り、色など紙質はちがいますね。興味のある方はぜひお近くの図書館へ。

「大言海」の扉にある大槻文彦の略歴を読んで「この本は大槻へのオマージュだったんだ」。言葉の海を渡るための舟(辞書)を「編む」のです。なにかを生み出すには言葉が必要。しかし、1冊の辞書をつくるのに15年とは…実際そんなにかかるのでしょうか。根気のいる仕事です。

お勧め度:★★★★★

2012年1月 9日 (月)

北村薫の創作表現講義 〜 あなたを読む、わたしを書く (北村薫)

北村薫が早稲田大学で2年間行った講義の一部を本にまとめたものです。そもそも何を書くかに始まり、書き出しの例やら、一人称と三人称の違いなどを様々な例を挙げながら説明していきます。後半はゲストが続き、短歌人・天野慶に、3グループに分けた学生たちがインタビューして600字のコラムを書くというテーマを与えます。つぎに、書籍編集者、雑誌編集者を招いて話を聞いていきます。編集者の作家に対する姿勢というか付き合い方の話が面白かった。相手は常人じゃないからこちらもそうでないといけない。けれど、原稿をもらって本にする段階では冷静に徹しなければならない。それを楽しめるのが編集者だと。寝袋で仮眠とりながら徹夜するのが編集者ではないようです。(苦笑)

もうひとつ、興味深かったのが、NHKの「課外授業ようこそ先輩」という番組に出演したときの話。テーマは「はてな、と思うことの大切さ」。「疑問を持たなければそれまでのことも、ちょっと首をかしげてみると、そこから思いがけない真実が見えてきたりする。そういう心の動きから、様々な発明や発見も生まれてきたのだ。」

このくだりを読んで「空飛ぶ馬」がああいう小説になった理由がわかりました。じつはあまりピンと来なかったのです。自分が巻き込まれてしまったわけでもないのに、日常のちょっとしたことに首を突っ込んで「何故だろう? どうして?」とやるわけです。

読むこと、書くことの意味を考え直すきっかけになりました。

お勧め度:★★★★☆

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2012年1月 8日 (日)

空飛ぶ馬 (北村 薫)

「六の宮の姫君」を読んでから、それが「円紫さん」シリーズの4巻目だと知って、シリーズ第1巻の「空飛ぶ馬」を手に取りました。おかげで、主人公の女子大生「私」と落語家の円紫さんとの出会いもわかりました。
  1. 織部の霊
  2. 砂糖合戦
  3. 胡桃の中の鳥
  4. 赤頭巾
  5. 空飛ぶ馬

女子大生の日常生活や旅先で起こる出来事や謎を名探偵・円紫さんが解くというスタイル。 円紫さんはもちろん、主人公も本好きの女子大生なので、なかなか博学です。その博学ぶりがいかんなく発揮されているのが「六の宮の姫君」だったのです。主人公が興味を持った糸口を辿って「謎」を解いていく様子は面白かった。

一方「空飛ぶ馬」では、日常のちょっとした「あれ?」という出来事を掘り下げてみる話題もが含まれています。そのあたりの背景は「北村薫の創作表現講義 〜 あなたを読む、わたしを書く」をごらんください。

お勧め度:★★★☆☆

2012年1月 7日 (土)

図書館革命 〜 図書館戦争シリーズ 4 (有川浩)

この4巻も3巻に続いて本編は(以前読んだので)パス。初見の「文庫版あとがき」、ショートストーリー「プリティ・ドリンカー」、「児玉清×有川浩対談 その4」を読みました。

「プリティ・ドリンカー」は柴崎と手塚のお話。柴崎だけに、ややひねくれた「ベタ甘」ぶりです。対談では、稲嶺指令のモデルがじつは児玉清だったと判明してビックリ。

以上の4巻で本編は完結。外伝が2巻あります。ここまで楽しんだ「ベタ甘」ファンは是非っ!

お勧め度:★★★☆☆

2012年1月 6日 (金)

図書館危機 〜 図書館戦争シリーズ 3 (有川浩)

この3巻も2巻に続いて本編は(以前読んだので)パス。初見の「文庫版あとがき」、ショートストーリー「ドッグ・ラン」、「児玉清×有川浩対談 その3」を読みました。

「ドッグ・ラン」は、郁がジャーマン・シェパードと100m競争する話。そんなの勝てるわけないですよね、常識では。これは2巻の「対談」にあった「権利を主張する人」の例ですね。堂上だと説教臭くなるところ、郁が笑わせてくれました。

あとがきや対談では作者の人となりが伝わってくるのがいい。作者を身近に感じることができれば、その作品にも親しみをもつことができます。今回の対談では、有川浩は色紙を頼まれると「倒れるときは前のめり」と書くとか。やらないで後悔するより、やって後悔したいというわけです。見習わねば。

お勧め度:★★★☆☆

2012年1月 5日 (木)

図書館内乱 〜 図書館戦争シリーズ 2 (有川浩)

文庫1巻目は、久しぶりに読んで笑えたのですが、2巻目はちょっと内容が重たいし、筋書きを覚えているので本編をパスし「文庫版あとがき」、小牧と鞠江のショートストーリー「ロマンシング・エイジ」、「児玉清×有川浩対談 その2」を読みました。

対談のなかで「世間がものすごく狭量になってきている」という話がありました。昔は社会がもっと寛容だった。いじめはあっても「いじめ問題」はなかったし、悪ガキ小学生が教師に平手を食っても問題にならなかったし、車のクラクションやピアノの音で人殺しなんてありえなかった。東京に住んで満員電車に乗っていると、人が多すぎるからギスギスするのだと思ってましたが、東京に限ったことではないので人口密度の問題ではないのでしょう。

作者いわく、権利を主張する人は増えたけど義務が疎かになってる。権利と義務はセットだよ、と。そういうまっとうな感覚を大切にしたいと。ぜひ、そのようにお願いしたい!

お勧め度:★★★☆☆

2012年1月 4日 (水)

せどり男爵数奇譚 (梶山季之)

「ビブリア古書堂の事件手帖」(三上 延)に続いて、古書にまつわる本を探したらヒットしたのが「せどり男爵数奇譚」でした。

「せどり」とは古書業界用語で、値打ちものを見つけては、安く買った本を専門店で高く売ること。物書きの主人公がせどり男爵と出会い、彼の話を聞くという形の短編6編です。本格的なものではなく軽いミステリー仕立てになっています。
  1. 色模様一気通貫
  2. 半狂乱三色同順
  3. 春朧夜嶺上開花
  4. 桜満開十三不塔
  5. 五月晴九連宝燈
  6. 水無月十三公九

1話は、せどり男爵と呼ばれる笠井菊哉が古書に魅入られた理由。2話は、この世に3枚しかない蔵書票の秘密を暴く。3話は、古書店仲間と韓国旅行。4話は、シェークスピアの初校本「フォリオ」とユダヤ人女性。5話は、盗まれたキリシタン版にまつわる謎解き。6話は、香港を舞台にした、究極の装丁にまつわる話。(ちょっとショッキングです!)

各話のタイトルが麻雀に引っ掛けてありますが、作中で麻雀をやるわけではありません。非常にマニアックな世界なのですが、せどり男爵の淡々とした、開けっぴろげな話し振りから、自然に引き込まれていきます。専門的すぎてついていけないのでは、という心配は無用です。思ったより気楽に読むことができました。

お勧め度:★★★★★

2012年1月 3日 (火)

六の宮の姫君 (北村 薫)

「ビブリア古書堂の事件手帖」(三上 延)で古書にまつわる事件(秘密)を解く話を読み「本つながり」で手に取りました。最初「なぜ創元推理文庫?」と疑問だったのですが、小説の表現を巡って作家の意図や背景を「推理」するものだったのです。

「六の宮の姫君」は今昔物語を下敷きにした、芥川龍之介の作品です。ちくま文庫の「芥川龍之介全集5」で14ページの短編。表面的には、ある姫君が没落していく悲劇なのですが、それを今昔物語と比較して「なぜ芥川はここを書き換えたのか?」と考えていくのです。

文学部4回生の「私」が卒論のテーマに芥川を取り上げるのですが、ある日、年配の作家から芥川に会ったときのことを聞かされます。「六の宮の姫君」のことを「あれは玉突きだね。…いや、というよりはキャッチボールだ」と言ったというのです。なるほど文学部というのはこういうことをやってるのか、と新鮮でした。国会図書館で書簡集まで調べて因果関係を、推理を交えて明らかにしていくのって知的好奇心を刺激されます。

芥川だけでなく菊池にも話が移って、結構本格的に掘り下げてくれるものでついていくのがしんどい部分もありました。でも、文芸春秋が芥川賞、直木賞を創設した経緯も知り、菊池寛を読んでみようと思うきっかけになりました。

あとで知ったことですが、これは北村薫の「(落語家)円紫さん」シリーズ(「空飛ぶ馬」「夜の蝉」「秋の花」「六の宮の姫君」「朝霧」)の4巻目。後日、1巻目も読んでみようと思います。

お勧め度:★★★★★

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2012年1月 2日 (月)

ビブリア古書堂の事件手帖 2 〜栞子さんと謎めく日常〜 (三上 延)

ビブリア古書堂を一旦辞めた大輔でしたが、栞子と仲直りをして、また店員として働くようになりました。栞子は本の話になると夢中になってしまうため、ふつうの人は引いてしまうのでしょう。本の話を喜んで聞いてくれる大輔は希有な存在だったのかもしれません。ただ、それだけなのかどうかは栞子自身も意識していないのでしょう、いまは。

プロローグ:坂口三千代「クラクラ日記」(文芸春秋)1
  1. アントニイ・バージェス「時計じかけのオレンジ」(ハヤカワNV文庫)
  2. 福田定一「名言随筆 サラリーマン」(六月社)
  3. 足塚不二雄「UTOPIA 最後の世界大戦」(鶴書房)

エピローグ:坂口三千代「クラクラ日記」(文芸春秋)2

「クラクラ日記」とは「坂口安吾の死後、奥さんが書いた随筆」だとか。栞子はその本を好きになれないと言いながら何冊も持っています。そのことを思い出すのはエピローグになってから。まずは3つのお話を楽しんでください。

タイトルが「事件手帖」とはいえ、栞子が「本にまつわる事件を解決」というのはちょっと大げさ。事件というより、本にまつわる他人の秘密を暴いてしまうのです。本人に悪意はないのですが、第1巻でせどり屋の志田が心配していたように、栞子は鋭すぎるのかもしれません。他人だけでなく自分をも傷つけてしまう恐れがある、いろんな意味で危なっかしい女性です。いちばんの謎は栞子だと思います。

今回の題材は随筆、小説、漫画と多彩です。前巻に登場した小菅奈緒が、中学生の妹が書いた読書感想文をビブリア古書堂に持ち込んだのですが、栞子は「本をちゃんと読んで書いていない」と言います。感想文をどうやって書いたかなんて事件とはいえませんが、本人にとっては大問題だから事件といえるのかも。ひととおり謎を解いたあとで「え?」とサプライズ。こういうのも楽しい。本好きな人はぜひ一度読んでみてください。

お勧め度:★★★★★

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2012年1月 1日 (日)

ビブリア古書堂の事件手帖 〜栞子さんと奇妙な客人たち〜 (三上 延)

北鎌倉の古書店「ビブリア古書堂」を舞台にした、ほのかな恋愛模様を感じさせる、ほのぼの系ミステリー。古書店の主人・篠川栞子は、古書にまつわる事件の謎を居ながらにして解いてしまう。本を「読む」ことが生き甲斐のような女が、本を「読めない」男(五浦大輔)と出会い、奇妙な関係を築いていきます。
  1. 夏目漱石「漱石全集・新書版」(岩波書店)
  2. 小山清「落穂拾ひ・聖アンデルセン」(新潮文庫)
  3. ヴィノグラードフ・クジミン「論理学入門」(青木文庫)
  4. 太宰治「晩年」(砂子屋書房)

本が大好きな女性というと、先日読んだ「箱庭図書館」の潮音を思い出します。冬のバス停のベンチで本を読み出したら止まらなくなって、雪が降り出しても(家族が迎えに来るまで)読んでいたという猛者。放っておいたら凍死していたのではという話です。潮音とちがって栞子は人見知りがひどく、初対面の人とうまく話せないのに、本の話になると急に雄弁になります。

しかし、栞子は店ではなく病院のベッドにいます。雨の日に石段で足を滑らせたというのですが…。

現存する古書が各話のタイトルになっていて「ダンタリアンの書架」みたいに各話独立の短編集なのかと思ったら、連作としてまとめてありました。最後に1話と4話がつながって感激。ライト・ノベルから一歩踏み出した小説をどうぞ。

お勧め度:★★★★★

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