あかんべえ (上) (宮部みゆき)
宮部みゆきの時代小説「ぼんくら」「日暮らし」という連作を読んだあと、他にも面白そうな時代ものはないかと探して見つけたのが「あかんべえ」でした。 料理人太一郎とその妻・多恵の12歳になる娘おりんは高熱を出して三途の河原に迷い込んでしまう。船着き場から離れた場所に出るのは迷ったからで、まだ死ぬことはないと翁は言った。実際、おりんは助かった。助かったが、その日から幽霊が見えるようになった。 亡者、幽霊、怨霊、亡霊が登場する時代ものですが、ホラーというよりファンタジーとして描かれていて、素直で健気なおりんの姿に好感が持てます。 さて、おりんたちが暮らす深川の「ふね屋」は両親が念願かなって出した料理屋です。が、じつはそこには幽霊たちが棲みついていて、おりんは5人(5体?)の「お化けさん」たちとの付き合いが始まります。按摩の笑い坊、侍の玄之介、三味線弾きのおみつ、幼い娘のお梅、亡者のおどろ髪。彼ら自身もなぜこの世に、しかもこの場所に憑いているのかわからないといいます。忘れてしまっているのです。おりんは、このお化けさんたちを成仏させてあげたいと考えるようになって…。 表紙絵はおどろおどろしいけれど、実際は江戸深川を舞台にしたファンタジックなミステリー。怖さよりは好奇心が先に立って「え、次はどうなるんだろう?」と気が急きます。おりんも、大人の欲や勝手、わがままを見聞きしてショックを受けながらも成長していく様が眩しい。ぜひ! お勧め度:★★★★★ |
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