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2011年12月17日 (土)

蒲生邸事件 (宮部みゆき)

尾崎孝史18歳。大学受験に失敗し、予備校受験のため宿泊した東京のホテルで火事に遭う。もうだめだ、と思った次の瞬間、気づくと雪の降る暗い場所にいた。時間旅行者・平田と共に昭和11年2月26日にやってきたのだった。そう、あの二・二六事件勃発の日に…。

タイムトラベルだからSFですが、蒲生邸で自決したはずの元陸軍大将・蒲生憲之の拳銃が見つからず「これは殺人か?」というミステリーでもあります。火事から逃れるためとはいえ、なぜ昭和11年だったのか。その疑問の答えを知るには最後まで読む必要があります。しかし長い。長いんです、この小説。おまけにずうっと暗いので疲れましたが、それだけ読み応えがありました。

舞台のほとんどは蒲生邸内。二・二六事件の封鎖区域内だったため、ほとんど外を出歩くことはできません。事件が鎮圧される4日間のお話です。平田の甥という建前で蒲生邸に転がり込んだ孝史は当初混乱し、現代に帰ろうと平田に詰め寄りますが、拳銃が見つからないことを知ると調査を始めます。屋敷から追い出されないのが不思議。まるで探偵気取りです。

タイムトラベルには過去改変のパラドックスが付きまといますが、その点について作中で平田はこう説明しています。「ある事件でAさんが死ぬことは防げても、その代わりにBさんが死んでしまう。大きな歴史の流れは変えられない」。また、この小説のひとつのテーマとして(その時、その場所で現実と向き合って生きる人間にとって)「歴史をあとから批判するのはフェアじゃない」というものがあります。

蒲生憲之は架空の人物ですが、二・二六事件当時の雰囲気はリアルに伝わってきました。そんな、小説(フィクション)の醍醐味を味わってみてください。

お勧め度:★★★★☆

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