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2011年12月

2011年12月31日 (土)

2011年 BOOKS of the YEAR

今年ご紹介した本は全部で161冊。そのうち「お勧め度:★★★★★」の本44冊を以下に挙げます。
2011/1 神様のカルテ (夏川 草介)
永遠の0 (百田 尚樹)
神様のカルテ 2 (夏川 草介)
告白 (湊かなえ)
ボーイズ・ビー (森 望実)
僕は友達が少ない (平坂読)
美女と竹林 (森見登美彦)
2011/2 阪急電車 (有川浩)
トッカン―特別国税徴収官 (高殿 円)
空飛ぶタイヤ (池井戸 潤)
2011/3 鉄の骨 (池井戸 潤)
そうか、もう君はいないのか (城山三郎)
13階段 (高野和明)
神様のメモ帳 (杉井 光)
2011/4 アイダ王女の小さな月 〜 魔法の国ザンス (ピアズ・アンソニー)
恋文の技術 (森見登美彦)
2011/5 ヒプノスの回廊 〜 グイン・サーガ外伝 22 (栗本 薫)
コブの怪しい魔法使い~(株)魔法製作所 (シャンナ・ウェンドソン)
スーパーヒーローの秘密~(株)魔法製作所 (シャンナ・ウェンドソン)
墓場の少年 (ニール・ゲイマン)
京都時代MAP 幕末・維新編
京都時代MAP 平安京編
京都時代MAP 安土桃山編
プリンセス・トヨトミ (万城目 学)
下町ロケット (池井戸 潤)
涼宮ハルヒの驚愕 (前) (谷川 流)
涼宮ハルヒの驚愕 (後) (谷川 流)
2011/6 県庁おもてなし課 (有川 浩)
2011/7 世界の中心で、愛をさけぶ (片山恭一)
kaguya 5 〜月のウサギの銀の箱舟〜 (鴨志田一)
ペンギン・ハイウェイ (森見登美彦)
2011/8 六百六十円の事情 (入間人間)
風に舞い上がるビニールシート (森 絵都)
飛鳥へ、そしてまだ見ぬ子へ (井村和清)
天国の本屋 (松久淳+田中渉)
2011/9 天国の本屋 3 〜恋火 (松久淳+田中渉)
星を継ぐもの (ジェイムズ・P・ホーガン)
かのこちゃんとマドレーヌ夫人 (万城目 学)
2011/10 タラ・ダンカン 8 〜 悪魔の指輪 (上)(ソフィー・オドゥワン・マミコニアン)
RDG 4 レッドデータガール 世界遺産の少女 (荻原 規子)
2011/12 あかんべえ (上) (宮部みゆき)
あかんべえ (下) (宮部みゆき)
八朔の雪 〜 みをつくし料理帖 (高田 郁)
図書館戦争 〜 図書館戦争シリーズ 1 (有川浩)
ライトノベルも結構読んだはずなのですが5つ星は少ないですね。現状では、小説として素晴らしいと思える作品はなく、コミックと小説の中間にあるような気がします。だから、基本マンガ好きだけど活字にも興味があるという世代に受けるのではないでしょうか。

さて、来年はどんな本と出会えるでしょうか。みなさん、どうぞ良いお年を!

図書館戦争 〜 図書館戦争シリーズ 1 (有川浩)

笠原郁21歳、図書館に採用され「毎日軍事訓練に励んでいます」。

ない、ない。ありえないでしょう。「塩の街」「空の上」「海の底」の通称「自衛隊3部作」を書いた有川浩が、自衛隊のノリそのままの勢いで書いたフィクションです。図書検閲のために市街地で戦闘なんて、荒唐無稽な設定と笑い飛ばせない怖さを秘めつつ、一方で「ベタ甘」の恋愛小説でもあるところが魅力。このシリーズは一度読んだことがあるのですが、文庫になったものを大学2年の長男が買ったので借りてきました。彼も好きなのです。

無法を合法とする「メディア良化法」が2019年に成立して30年。笠原郁が高校時代、差し押さえようとした良化委員会から、彼女が大好きな本の続編を守ってくれた図書隊員がいた。彼女はその「王子様」に憧れて図書隊の防衛部を志望したのです。体育会系・笠原郁のキャラが最高に愉快。とにかく騙されたと思って一度読んでみてください!

また、巻末には郁と堂上とのショートストーリー「ジュエル・ボックス」と「児玉清×有川浩対談」が収録されています。ちなみに「図書館戦争シリーズ」は本編4冊、外伝2冊あります。

お勧め度:★★★★★

2011年12月30日 (金)

心星ひとつ 〜 みをつくし料理帖 6 (高田 郁)

つる家の料理人・澪は、周囲が善かれと思って「お膳立て」をしてくれるのはうれしいけれど、あちらを立てればこちらが立たず、迷い惑い揺れるのでした。
  1. 青葉闇 — しくじり生麩
  2. 天つ瑞風 — 賄い三方よし
  3. 時ならぬ花 — お手軽割籠
  4. 心星ひとつ — あたり苧環

2話では、翁屋の伝右衛門が手を貸すから吉原に店を出さないかと誘い、登龍楼からは神田須田町の店を居抜きで譲ろうといってきます。つる家の種市や芳たちは侃々諤々。まず相手の気持ちを考えてしまう澪は決めることができません。わたしも読みながら、それぞれの道に進んだ澪を想像してみたのですが、どちらもピンと来ません。それじゃ葛藤が消えてしまってつまらない。(笑)

4話は「お膳立て」の極めつけ。しかし、あれこれ手を差し伸べてもらえるのですから澪は果報者です。ちなみに、心星というのは北極星のこと。ここでは自分が目指すべき方向を意味します。澪がどんな心星を見つけるのか次巻が楽しみです。6巻まで一気に読んでしまいました。これまで年2巻ペースだから、7巻が出るのは2012年かなぁ。待ち遠しいです。

お勧め度:★★★★☆

2011年12月29日 (木)

小夜しぐれ 〜 みをつくし料理帖 5 (高田 郁)

うまくいくこともあれば、うまくいかないこともある。芳のいうように「禍福はあざなえる縄の如し」。人生、いいことばかりではないけれど、おいしいものを食べれば「とりあえず明日も生きてみよう」と思える。そんな人たちのために澪は今日も腕を振るいます。
  1. 迷い蟹 — 浅蜊のお神酒蒸し
  2. 夢宵桜 — 菜の花尽くし
  3. 小夜しぐれ — 寿ぎ膳
  4. 嘉祥 — ひとくち宝珠

1話では、種市の娘おつるにまつわる過去が明らかに。迷い蟹というのは浅蜊のなかに棲む小さな蟹のこと。2話では、吉原の翁屋が花見の膳を澪に頼んできた。悩みに悩んだ挙句、澪が用意した膳は? 3話では、父親が進める中番頭との縁談を受け入れた伊勢屋の美緒は、祝言の料理を澪に頼みたいという。4話では、御膳奉行・小野寺数馬は 公方さまより菓子を賜る「嘉祥」という儀式のために1品菓子を用意しなければならず途方に暮れる。つる家で澪に「好きな菓子はなんだ?」と聞いたら「炒り豆です」。それを思い出した数馬は大豆を取り出して…。ここにも料理好きがいました。

澪はこれまで結構ひどい目に遭っているので、ぜひシアワセになっていただきたい!

お勧め度:★★★★☆

2011年12月28日 (水)

今朝の春 〜 みをつくし料理帖 4 (高田 郁)

戯作者清右衛門は吉原のあさひ太夫の戯作を書くと言い出し、澪は野江の過去を知りたい反面、そんな戯作が世に出れば野江が好奇の目に晒されることを憂う。清右衛門に対して澪が願い出たのは…。
  1. 花嫁御寮 — ははきぎ飯
  2. 友待つ雪 — 里の白雪
  3. 寒紅 — ひょっとこ温寿司
  4. 今朝の春 — 寒鰆の昆布締め

1話では、伊勢屋の美緒が大奥奉公の包丁試験のため「つる家」で澪に指南を受けます。2話が冒頭に挙げたお話。3話では、おりょうの主人・伊佐三は普請場がある新宿に通っているのですが、茶屋の女に入れあげているという浮気話がおりょうの耳に入ります。4話では、今年は料理番付が出ないと聞いて不審に思っていたつる家の面々の元へ、料理番付の版元が訪れ「登龍楼」との料理の競い合いを提案します。

4話で澪が寒鰆の昆布締めを思いつく場面もよかったけれど、2話の最後で清右衛門が澪に投げた話が衝撃的。澪が密かに想いを寄せる小松原の正体が徐々に明らかになり、ついには母親まで登場し、今後の成り行きが気になるところ。いろんなことが水面下で大きく動く4巻です。

山本周五郎、池波正太郎、藤沢周平らの時代小説もよいのですが、たとえば学生高校生や大学生に「時代小説入門」として勧めるのに「みをつくし料理帖」はちょうどいい。固すぎず、砕けすぎずの文章と、とっつきやすい話題。料理に興味があれば、一層楽しめること請け合いです。

お勧め度:★★★★☆

2011年12月27日 (火)

想い雲 〜 みをつくし料理帖 3 (高田 郁)

澪の料理のファンである版元・坂村堂は、自分で抱えている料理人に澪の味を教えてやってほしいと頼み込みます。その料理人とは、行方不明の若旦那・佐兵衛といっしょに働いていた富三だったのです。果たして佐兵衛の手掛かりは得られるのでしょうか…。
  1. 豊年星 — 「う」尽くし
  2. 想い雲 — ふっくら鱧の葛叩き
  3. 花一輪 — ふわり菊花雪
  4. 初雁 — こんがり焼き柿

新聞やテレビでは、強盗だの殺人だと殺伐としたニュースが多くて「天災を除いて世の中で一番恐ろしいのは、妖怪でも化け物でもなく、生きているひとだと思う。だが、恐ろしいひとだけど、同時にこの上なく優しく、温かいのもひとなのだ」。 ひとの情けの温かさを思い出させてくれるのが時代小説の魅力。そういう意味で「みをつくし料理帖」は素晴らしい。1冊4話。澪の成長、若旦那の消息、「登龍楼」との関わり、小松原の正体など全体を貫く縦糸に、各話が横糸となって絡んで、特有の絵柄を紡いでいきます。

お勧め度:★★★★☆

2011年12月26日 (月)

花散らしの雨 〜 みをつくし料理帖 2 (高田 郁)

消失した料理屋「つる家」は、場所を九段坂に移して再開。主人の種市、元・ご寮さんの芳、長屋のおりょうに手伝ってもらっても手が足りないため、口入れ屋から「ふき」という少女を紹介してもらったのです。が、その後、澪が工夫した料理が悉く「登龍楼」に真似されます。これはどう考えても…。
  1. 俎橋から — ほろにが蕗ご飯
  2. 花散らしの雨 — こぼれ梅
  3. 一粒符 — なめらか葛饅頭
  4. 銀菊 — 忍び瓜

以上、4話が収められています。澪は1巻から医者(しかも名医らしい)や吉原、小松原なる正体不明の人物と縁ができます。とくに吉原に身を落とした花魁を救おうと考えるなど「居眠り磐音 江戸双紙」と同じです。主人公の人徳なのか、あるいは時代小説の1パターンなのでしょうか。

それでも料理にはリアリティがあります。読んでいるだけでおいしそう。わたしも料理の真似事をするのですが、なかなか自分で「これはおいしい!」と思えるようにはできませんし、たまたまおいしくできても再現できない。ですから、澪の工夫を「これ、今夜試してみようかな」などと考えながら読むのが楽しい。そういえば「忍び瓜」は同じように作ったことがあります。たしかに叩けば「模様」は見えなくなりますね。納得。

「おいしいと思えれば生きていける」という澪の言葉には実感がこもっていますし、そのとおりだと思います。季節ごとの食材や料理の面から江戸の文化を垣間みる喜びが「みをつくし料理帖」シリーズにはあります。

お勧め度:★★★★☆

2011年12月25日 (日)

八朔の雪 〜 みをつくし料理帖 (高田 郁)

澪は10年前、8歳のとき、大坂で水害のため両親を亡くし、天満一兆庵のご寮さんに拾われました。一兆庵で女衆として働くうち、澪の天性の味覚を見出した主人の嘉兵衛が、澪を料理人として育ててくれました。その後、一兆庵は江戸にも店を出したのですが、若旦那・佐兵衛が借金をつくって失踪。江戸店を失い、嘉兵衛は失意のうちに亡くなったのでした。「いつか天満一兆庵を再興してほしい」という嘉兵衛の遺言を胸に、澪はご寮さん・芳とふたりで長屋暮らしをしているのでした。

まだ若く、未熟ではあるけれど、天性の料理人・澪が大坂から江戸へ出てきて、土地の味覚の違いに戸惑いながらも、すこしずつお客の心(舌)を掴んでいく物語。ふと韓国ドラマ「宮廷料理人チャングム」を思い出しました。宮廷ほどドロドロしていないものの、名料理店「登龍楼」の嫌がらせに澪はピンチに陥ります。

時代小説としては多少荒削りだけど初々しくて新鮮な文章。料理に真摯に取り組む澪の心情と、周囲に人間たちとの交流がほのぼのと描かれていて好印象。巻末には本書4編中で紹介された「ぴりから鰹田麩」「ひんやり心太」「とろとろ茶碗蒸し」「ほっこり酒粕汁」のレシピも載っています。大坂は昆布、江戸は鰹で出汁を取るなど、料理に関するうんちくも興味深い。そうそう、上等な昆布って高いんだよねぇ。澪が考えたとされる昆布と鰹の合わせ出汁の取り方を今度真似てみようと思ってます。

澪は「艱難辛苦」に堪え精進すれば「雲外蒼天」を見ることができると予言されています。2009年から年2冊ペースで刊行されていて、現時点で6巻まで出ています。「これは面白い!」と気に入った本に出会えたときはうれしい。しかもシリーズものであればしばらく楽しめます。(ささやかなシアワセ)

お勧め度:★★★★★

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2011年12月24日 (土)

失踪HOLIDAY (乙一)

乙一のライトノベル「さみしさの周波数」(2002)、「きみにしか聞こえない」(2001)に続いて「失踪HOLIDAY」(2000)を年代を遡って読みました。図書館で何気に手に取ったのが最新刊で、読後に同系列の本を読もうとしたためにこうなりました。
  1. しあわせは子猫のかたち
  2. 失踪HOLIDAY

1話は、大学を通うために下宿を探していた主人公が、自宅前で殺された女性の住んでいたアパートに入居することになって不思議な体験をする話。2話は、ほんとうの両親を亡くした14歳の少女が、母親の再婚相手と同居しつつも疎外感を感じて冬休みに「失踪」する話です。

乙一の作品を「箱庭図書館」に加えて3冊読んでみて、すこし傾向がわかりました。1話は「箱庭図書館」のなかの「ホワイト・ステップ」に似ていますね。不思議な出来事にミステリーを絡めたストーリーが面白い。ただ、2話の最後のどんでん返しはひっかかります。「オレたちバブル入行組」 (池井戸 潤)同様、悪事を勝手な理屈で正当化されても困ります。それくらいなら「きんぴか1〜三人の悪党」(浅田次郎)みたいに、最初から「オレたちは悪党だ!」と開き直ってくれたほうがいい。「許せないフラグ」が立ってしまうのは、わたしの性格の問題?

わたしが読んだ乙一の4冊のなかで気に入った話は「ホワイト・ステップ」「失はれた物語」「Calling」「しあわせは子猫のかたち」。あなたはいかがでしたでしょうか?

お勧め度:★★★☆☆

2011年12月23日 (金)

きみにしか聞こえない (乙一)

「さみしさの周波数」に続いて乙一の作品を手に取りました。
  1. Calling You
  2. 傷 —KIZ / KIDS—
  3. 華歌

1話は、友達がいないからと携帯電話を持たない女子高生リョウ。クラスメイトたちの、ストラップやプリクラで飾った携帯電話を羨ましく思っているうち「わたしが持つなら白くてツルツルで」と考え出して…。(大変便利ですがカンニングはどうかと思います。)

2話は、家庭に恵まれない子供たちが通う小学校の特別教室。そこでオレは不思議な力をもつアサトと出会った。(なんでもいいけど痛そう。痛いのは苦手です。)

3話は、列車事故に遭って入院したわたしは病院の庭で一輪の花を見つけ、植木鉢に入れて病室に持ち帰った。なんと、その花は歌うのだった。(不思議を通り越して不気味です。そのうえ性別トリックは不自然だと思います。)

お勧め度:★★☆☆☆

2011年12月21日 (水)

さみしさの周波数 (乙一)

「箱庭図書館」に続いて乙一の作品を読んでみました。「GOTH」は怖そうだったのでライトノベルから入ることにしました。(苦笑)
  1. 未来予報 あした、晴れればいい。
  2. 手を握る泥棒の物語
  3. フィルムの中の少女
  4. 失はれた物語

1話は、小学生のとき、未来を予言できるという転校生から「おまえたち二人、どちらかが死ななければ、いつか結婚するぜ」と言われた僕と清水。それ以来、ぎくしゃくして顔を合わせづらくなり…。(そうなるのかなぁ、と思ってたらそうなって、せつないです。)

2話は、切羽詰まって泥棒しようと壁の穴に手を突っ込んだら、握ったものは金の入ったバッグではなく…。(世の中、男よりも女のほうが肝が据わってたりするようで。)

3話、トンネルで撮影した8mmフィルムに映っていた少女は、もう一度再生したらさっきよりこちらを向いている!?(やだヤダやだー、怖い話は苦手です。)

4話は、突然、右腕の触覚以外すべて奪われたら…。(最初はなにが起きたのかわからず、主人公の置かれた状況を想像すると恐ろしかった。モールス信号を覚えておこうかな。)

衝撃的だったのは「失はれた物語」。切ないのを通り越して、辛いです。別作品になるけれど『きみにしか聞こえない』の「Calling」の力があれば、と思います。興味のある方はそちらもお読みください。

ライトノベルを書いているつもりでも枠からはみ出す作家がいます。乙一然り、有川浩もそうでしょう。乙一のライトノベルを続けて読んでみようと思います。

お勧め度:★★★★☆

2011年12月19日 (月)

ゴールデンタイム 3 (竹宮ゆゆこ)

完璧お嬢様・加賀香子と付き合い始めた多田万里。彼はリンダ(林田奈々)との過去がわかって以来、彼女と素直に向き合えず逃げてばかり。一方、岡千波に特攻自爆して落ち込んでる柳澤光央を励ますべく万里と二次元は飲み会を開くことにしたのでしたが…。

現在、主な登場人物は男女3名ずつ。転落事故で過去の記憶を失った多田万里と、柳澤光央、二次元の3人が大学の友人同士。女性は、光央にはっきりフラれて万里と付き合うことになったのが加賀香子、かつて親しかった(好きだった?)リンダ、小柄で可愛い岡千波。そういえばもうひとり男がいます。失われた万里の記憶という亡霊。いまの万里が死んだら幽霊がふたりになるのかと突っ込みたい!

この6人はまともに講義にも出ないし、勉強している様子もない。大学生ってこんなにかわいかったっけ? 大学生の日常を描いたラブコメなのですが、可笑しいやら切ないやら、ぐいぐい引っ張られて一気読みしてしまいました。

お勧め度:★★★★☆

2011年12月17日 (土)

蒲生邸事件 (宮部みゆき)

尾崎孝史18歳。大学受験に失敗し、予備校受験のため宿泊した東京のホテルで火事に遭う。もうだめだ、と思った次の瞬間、気づくと雪の降る暗い場所にいた。時間旅行者・平田と共に昭和11年2月26日にやってきたのだった。そう、あの二・二六事件勃発の日に…。

タイムトラベルだからSFですが、蒲生邸で自決したはずの元陸軍大将・蒲生憲之の拳銃が見つからず「これは殺人か?」というミステリーでもあります。火事から逃れるためとはいえ、なぜ昭和11年だったのか。その疑問の答えを知るには最後まで読む必要があります。しかし長い。長いんです、この小説。おまけにずうっと暗いので疲れましたが、それだけ読み応えがありました。

舞台のほとんどは蒲生邸内。二・二六事件の封鎖区域内だったため、ほとんど外を出歩くことはできません。事件が鎮圧される4日間のお話です。平田の甥という建前で蒲生邸に転がり込んだ孝史は当初混乱し、現代に帰ろうと平田に詰め寄りますが、拳銃が見つからないことを知ると調査を始めます。屋敷から追い出されないのが不思議。まるで探偵気取りです。

タイムトラベルには過去改変のパラドックスが付きまといますが、その点について作中で平田はこう説明しています。「ある事件でAさんが死ぬことは防げても、その代わりにBさんが死んでしまう。大きな歴史の流れは変えられない」。また、この小説のひとつのテーマとして(その時、その場所で現実と向き合って生きる人間にとって)「歴史をあとから批判するのはフェアじゃない」というものがあります。

蒲生憲之は架空の人物ですが、二・二六事件当時の雰囲気はリアルに伝わってきました。そんな、小説(フィクション)の醍醐味を味わってみてください。

お勧め度:★★★★☆

2011年12月15日 (木)

機巧少女は傷つかない 6 (海冬レイジ)

雷真は、シェフィールドに住む「迷宮の魔王」グリゼルダ・ウェストンの内偵を硝子から命じられます。今回のお伴は末娘・小紫。グリゼルダは魔王だけあって、むちゃくちゃ強くて、おっかない女性なのですが、雷真をイジりつつも憎からず想っている様子。雷真はゼルダに弟子入りします。

復習しますと、1巻がシャル、2巻がフレイ、3巻がアンリ、4巻がいろり、5巻はイオとエヴァ、6巻がグリゼルダとなり、雷真のハーレム度がずいぶん上がりました。そういえば、夜々が初めて雷真と出会ったときのエピソードが紹介されていて、なかなか興味深かったです。グリゼルダの自動人形イプシロンが可愛いくて可哀相。

肝心の「夜会」は参加者100人中50人目となり、いつの間にか折り返していました。パワーアップした雷真と夜々はどんな戦いを見せてくれるでしょうか。

お勧め度:★★★★☆

2011年12月13日 (火)

機巧少女は傷つかない 5 (海冬レイジ)

1巻がシャル、2巻がフレイ、3巻がアンリ、4巻がいろり、5巻は(表紙にあるように)イオとエヴァと仲良くなる雷真。人間、人形を問わず女の子のお友達が着実に増えていて、夜々の「ゴゴゴ」(嫉妬の地鳴り?)が絶えません。

機巧都市リヴァプールでは自動人形の祭典(エクスポ)が開催されます。一方で「夜会」参加者たちの自動人形が次々に姿を消す事件が起きます。硝子の命じられ、学園内の人形師エリアーデ教授に会いにいったら、それがイオだったのです。エヴァは自分に似せて作った人形。だから表紙絵は双子に見えるわけです。

自動人形を失った夜会参加者たちが棄権となると雷真たちの敵もずっと少なくなります。よかった、よかった…なんて言ってると夜会の空洞化を招くので、そこは作者がなんとかするでしょう。というか、夜会が終わると話が終わるから先延ばししようとしてません?>作者

お勧め度:★★★☆☆

2011年12月11日 (日)

機巧少女は傷つかない 4 (海冬レイジ)

夜々は「わたしでは雷真を守れないから」と姿を消してしまう。しかし、それは「十字架の騎士」と名乗る敵の罠。硝子は「夜々はあきらめます。姉のいろりを使いなさい」。しかし、雷真は夜々を救い出そうとする。それをシャル、フレイ、ロキが手助けするのですが…。

要するに「夜々の家出編」です。相変わらずの場外乱闘ですが、闇討ちだろうがなんだろうが相手を倒して(夜会参加資格を表す)手袋を奪えば夜会で勝ったのと同じことになるらしい。結果、雷真と夜々も勝ち進むことになるのです。雷真は他の人たちよりは正攻法かもしれませんが、それでも動機は私怨。この世界では「正々堂々」という言葉は死語みたいです。

1巻と2巻は面白かったけれど3巻からイマイチ。表紙のいろりは許すとしても、イラストページのSD夜々もイマイチ。最初なにをしてるかわからなかった。巻物かと思ったら梱包材(通称プチプチ)なんですね。5巻がどうなるか心配です。

お勧め度:★★★☆☆

2011年12月 9日 (金)

機巧少女は傷つかない 3 (海冬レイジ)

シャルロットの妹アンリエットは何度も自殺未遂を繰り返す。どうも姉に迷惑をかけたくないというような話なのだが、一体どういうこと? そうこうするうちにシャルが学園の時計塔を木っ端みじんにしてしまう。え、学園長を狙っているって!?

「魔王」というトップの座を賭けて戦う「夜会」が開催されているにも関わらず、雷真(と夜々)は場外乱闘ばかり。大怪我をしてもすぐにまた出て行って怪我の上塗り。不死身なのかゾンビか。これでは「彼女は戦争妖精」の宮本伊織と同じです。ストーリーを本筋(夜会)に戻しましょうよ。>作者

1巻がシャル、2巻がフレイ、3巻はアンリと仲良くなって、4巻では誰が登場するのか楽しみです。

お勧め度:★★★☆☆

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2011年12月 7日 (水)

機巧少女は傷つかない 2 (海冬レイジ)

夜会への参加資格を得た雷真と夜々。ふたりが寮の自分たちの部屋に戻ると(表紙絵の)少女と犬が網で宙吊りにされていました。「部屋に女を連れ込んで吊るしたの!?」と怒る夜々。そういう状況じゃなくて…自分で仕掛けた罠に自分ではまるドジっ娘フレイと愛犬ラビ。どうやら彼女には彼女なりの理由があって、夜会で最初に当たる対戦相手(雷真と夜々)を暗殺しようとしているらしい。しかし黙って殺されるわけにはいかないし…。

ツンデレ娘シャルと竜のシグムント、フレイとラビ、フレイの兄・ロキとケルビム、人形師・花柳齋硝子と夜々の姉・いろり、妹・小紫、雷真の担任教師キンバリー女史。人間ではない相棒を戦わせるという意味では「彼女は戦争妖精」(嬉野秋彦著)とおなじ。ただ世界観は「機巧少女は傷つかない」のほうがしっかりしているように思います。1巻でシャル、2巻でフレイというようにキャラをしっかり描いています。バトルだけでは殺伐とするので、ちょっとエッチなギャグパートも用意されているわけです。

余談ですが、各巻、冒頭カラーイラストページの最後にあるSD夜々が可愛い!

お勧め度:★★★★☆

2011年12月 5日 (月)

機巧少女は傷つかない 1 (海冬レイジ)

魔術仕込みのからくり人形の夜々(やや)とその人形使い雷真(らいしん)は、日本から英国ヴァルプルギス王立機巧学院にやってきた。雷真は人形使いのトップ(魔王)になるための競技会「夜会」の参加資格を得るため、有資格者(つまり強敵)に喧嘩を売って、冒頭から無茶をやってくれます。でも、そうでなくちゃ面白くない!

夜々は「彼女は戦争妖精」のクリスみたいに戦うマシンなのですが、ほとんど人間と変わりません。違うのはものすごく強いということ。性格にはちょっと問題があって、いわゆるヤンデレです。雷真が女子に近づこうものなら嫉妬に狂って絞め上げられます。おかげで学園では「あなた、人形相手になにを…」と変態扱いされてます。学園ラブコメ+バトルアクションものです。

機械同士の戦いなのにどうも血なまぐさいのは抵抗がありますが、雷真のまっすぐな気性と、夜々とのボケとツッコミが愉快で退屈しません。久々に面白いと思えるラノベに出会いました。

お勧め度:★★★★☆

2011年12月 3日 (土)

あかんべえ (下) (宮部みゆき)

お化けが出ると人は「成仏させてやらねば」と思うけれど、幽霊にしてみれば有り難迷惑かも。成仏とは幽霊にとって「死ね」と言うようなもの。え、でもすでに死んでるし…。おりんは「ふね屋」のお化けさんたちとすっかり仲良しになります。でも、そのことは家族にも内緒です。どうしてわたしにだけお化けさんが見えるんだろう?

実は、ふね屋は墓地のうえに建てられていて、向かいのお寺は30年前に焼けたとか。再興されなかったのは住職が恐ろしい罪を犯したからだと聞いたおりんは、もっと詳しいことを知ろうと探索を始めます。怖いけど知りたい、知りたいけど怖いという葛藤が可愛いおりん。つらい現実にも立ち向かっていく健気さがこの小説のおおきな魅力です。

わたしは「ぼんくら」「日暮らし」よりも気に入りました。宮部みゆきの時代小説に興味をもった方にまずお勧めしたい「あかんべえ」です。

お勧め度:★★★★★

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2011年12月 1日 (木)

あかんべえ (上) (宮部みゆき)

宮部みゆきの時代小説「ぼんくら」「日暮らし」という連作を読んだあと、他にも面白そうな時代ものはないかと探して見つけたのが「あかんべえ」でした。

料理人太一郎とその妻・多恵の12歳になる娘おりんは高熱を出して三途の河原に迷い込んでしまう。船着き場から離れた場所に出るのは迷ったからで、まだ死ぬことはないと翁は言った。実際、おりんは助かった。助かったが、その日から幽霊が見えるようになった。

亡者、幽霊、怨霊、亡霊が登場する時代ものですが、ホラーというよりファンタジーとして描かれていて、素直で健気なおりんの姿に好感が持てます。

さて、おりんたちが暮らす深川の「ふね屋」は両親が念願かなって出した料理屋です。が、じつはそこには幽霊たちが棲みついていて、おりんは5人(5体?)の「お化けさん」たちとの付き合いが始まります。按摩の笑い坊、侍の玄之介、三味線弾きのおみつ、幼い娘のお梅、亡者のおどろ髪。彼ら自身もなぜこの世に、しかもこの場所に憑いているのかわからないといいます。忘れてしまっているのです。おりんは、このお化けさんたちを成仏させてあげたいと考えるようになって…。

表紙絵はおどろおどろしいけれど、実際は江戸深川を舞台にしたファンタジックなミステリー。怖さよりは好奇心が先に立って「え、次はどうなるんだろう?」と気が急きます。おりんも、大人の欲や勝手、わがままを見聞きしてショックを受けながらも成長していく様が眩しい。ぜひ!

お勧め度:★★★★★

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