« 旅に出よう、滅びゆく世界の果てまで。(萬屋直人) | トップページ | つきのふね (森 絵都) »

2011年8月 8日 (月)

風に舞い上がるビニールシート (森 絵都)

「カラフル」のようなファンタジックな設定の児童書にも異分子がいたように、登場人物は、わがままで人間臭く、思わず眉をひそめてしまうようなことを平気でするような「毒気」を持っていて、きれいごとで済まないのです。それが喉に引っかかるから二度と飲みたくないと思いつつ「きれいごとばかりの小説が読みたいの?」と自問すると、それは何か違うと感じるから、また読んでみるわけです。

表題作(第6話)「風に舞い上がるビニールシート」とは、難民たちの命が毎日のように、それこそビニールシートが風に吹かれて舞い上がるように、弄ばれ、くしゃくしゃになり、飛んでいってしまう状況を指しています。その現場で難民対応に奔走するエドと結婚した里佳は、赴任したら1年は帰って来ない夫を、自宅には暖かく迎え入れようと努めるのですがエドには逆にそれが負担になるという葛藤が描かれています。(第135回直木賞を受賞し、TVドラマ化もされました)

第1話。オーナーパティシエの菓子店でパートナーとして働く弥生は、クリスマスイヴに『器を探して』出張する羽目に。プロポーズの機会を失った恋人は怒って「彼女を選ぶのか、僕を選ぶのか」と迫ります。

第2話。『犬の散歩』が日課の恵利子は、捨て犬に新しい飼い主を見つけるボランティアのために(えさ代を稼ぐため)夜のバイトをしています。犬のために何故そこまで?と訝る客に「牛丼なんです」。

第3話。夜間大学に通う祐介は、働きながらでも絶対に4年で卒業するためレポート作成を手伝ってくれるよう『守護神』ニシナミユキに頼みます。

第4話。仏像を作ることを諦め、修復することに専念する潔は、ある寺で出会った不空羂策観世音菩薩像に魅入られ、寺の鐘の音が五月蝿くて仕方ありません。

第5話。出版社に努める野田健一は、通販広告に関するクレーム対応のため、メーカーの担当者・石津直己と車で出かけますが、その車中で石津は明日の同窓会のための私用電話を掛けまくる『ジェネレーションX』に閉口します。

いずれも「お金ではない何か」に懸命になって生きてる人たちの話。必ずしも口当たりのよい話ばかりではありませんが、通して読んでみて「外した」「損した」とは思わないはずです。

お勧め度:★★★★★

« 旅に出よう、滅びゆく世界の果てまで。(萬屋直人) | トップページ | つきのふね (森 絵都) »

現代小説」カテゴリの記事

2018年12月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          
無料ブログはココログ