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2011年6月

2011年6月29日 (水)

さくら荘のペットな彼女 (鴨志田一)

学園寮「さくら荘」はちょっと変わった生徒たちの住処。ある日、高校2年に編入してきた椎名ましろの面倒を見るよう頼まれた。登校初日の朝、彼女を起こしに行くと、部屋は泥棒に入られたような惨状で、ましろがいない。と思ったら机の下で丸くなってるし、起きたと思ったら、な、何も着ていない!? 彼女は天才画家だが、自分では片付けはおろか、着替えさえできない「要介護者」だったのです。

というわけで、猫たちといっしょにましろも「飼う」ことになった主人公。しかし、猫とちがって人間だし、おまけに女の子だし、美人だし、天才画家だし。主人公の慌てぶりと突っ込みが愉快で、笑わせてもらいました。「イリヤの空 UFOの夏」のイリヤと「さよならピアノソナタ」の真冬も、一芸に秀でた美少女になぜか懐かれるという設定でした。ましろもはっきりしない性格なのかと思ったら、言葉は少ないものの意思は固い娘でした。

続巻も読んでみようと思います。

お勧め度:★★★★☆


2011年6月27日 (月)

オレたち花のバブル組 (池井戸 潤)

「オレたちバブル入行組」の続編。東京中央銀行営業第二部次長となった半沢は、また貧乏くじを引かされ、行内の「敵」と闘うことに…。120億円の損失を出した伊勢島ホテルの再建か、融資の引き上げか。おまけに金融庁の検査が入り、伊勢島ホテルを不良債権に「分類」されてしまうと銀行は膨大な貸倒引当金を積まなければならなくなる。これは半沢のみならず銀行にとって大問題。一方、半沢と同期入社の近藤は、出向先のタミヤ電機で、銀行の融資を受けるにも事業計画書すら作ろうとしない社長に手を焼いていました。

東京中央銀行をメインに、伊勢島ホテル、タミヤ電機を舞台に、半沢、近藤、渡真利の「バブル組」が今回も暴れます。「手柄は自分のもの、ミスは部下のせい」という上司や、派閥と自身の昇進のためだけに働いている管理職や役員。対するバルブ組が正義の味方かというとそうでもありません。おいしいところはちゃっかり押さえてます。結局、銀行員はみんな腹黒く見えてきてストレスが溜まります。話としては面白いのですが、銀行(という会社)が嫌いになりそうな点が残念です。

お勧め度:★★★☆☆

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2011年6月25日 (土)

オレたちバブル入行組 (池井戸 潤)

支店長命令で5億円融資した会社が倒産。主人公の融資課長・半沢に責任を押し付ける支店長。このままでは懲罰人事が待ってる。ピンチを切り抜けるには債券回収あるのみ。どうも銀行には良いイメージがないので避けていたのですが「これも池井戸潤だから読んでみようか」。

すると「空飛ぶタイヤ」や「下町ロケット」での中小企業の社長と同じ立ち位置に半沢課長はいたのです。有利な立場や権力をかさに弱者をいたぶる連中を許すな! というわけで、かなり面白かったです。

序盤は「おいおい、これはまずい展開では?」とヒヤヒヤしていたのが、中盤以降、反撃開始。そこまでやるか!という部分もありますが、やるなら徹底的にやりましょう。(笑)

お勧め度:★★★★☆

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2011年6月23日 (木)

さよならピアノソナタ encore pieces (杉井 光)

「さよならピアノソナタ」本編4冊の空白を埋める番外編。本編を読んだ方は是非! 第1章の、真冬とナオの物語は必読です。
  1. Sonate pour deux (真冬とナオ)
  2. 翼に名前がないなら(ベーシスト橘花)
  3. ステレオフォニックの恋(ユーリ)
  4. 最後のインタビュー(神楽坂響子)
  5. だれも寝てはならぬ(桧川哲朗)

第3章に、サイモン&ガーファンクルの「水曜の朝、午前3時」が出てきたので iPod で聴き直してみました。たしかに左右でひとつのハーモニーになっていて感動。過去になんとなく聞き流していた曲に発見があるのも、この本の良いところです。

1章がいちばん未来のお話で、それが順を追って過去に遡っていき、4章は神楽坂響子が中学生のときのお話。5章はオマケです。

お勧め度:★★★★☆

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2011年6月21日 (火)

さよならピアノソナタ 4 (杉井 光)

傷ついたフェケテリコ(ブラックバード)は飛べなくなったけれど、歌を忘れてはいなかったからバンドに身を投じたのです。ただ、お互い言葉が足りなくて気持ちが通じなくて、フーガのように逃げる旋律を追うばかり。おなじところをぐるぐる回っているうちに時が過ぎて、傷が癒えたフェケテリコは飛び去ってしまうのです。

「さよならピアノソナタ」の完結編です。今回のナオにはとくにイライラしましたが、とにかく無事に終わってよかった。「さよならピアノソナタ encore pieces」という番外編もあるそうです。また、本の中で取り上げられた楽曲を知りたい方は Wikipedia をごらんください。

高3の次男いわく「切な系」がお好きな方にお勧めします。

お勧め度:★★★☆☆

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2011年6月19日 (日)

さよならピアノソナタ 3 (杉井 光)

ナオと真冬のバンド「フェケテリコ」は、合唱コンクール、体育祭、文化祭といった2学期のイベントが目白押し。一方、真冬のまえに、幼なじみのヴァイオリニスト ジュリアン・フロベール(通称ユーリ)が現れる。いつの間にか真冬の右手は動くようになっていて、ユーリとヴァイオリン協奏曲をレコーディングする予定だという。ナオはユーリに嫉妬するが、ユーリは微妙な反応を示す。さて、ナオと真冬の関係はどうなるのか…。

といったところで第3弾です。言葉が足りない真冬と、鈍感+無神経なナオという絶望的なふたりですが(笑)音楽を通してすこしずつ相手のことを、そして自分の気持ちを知っていくことになるのです。

EL&Pの「展覧会の絵」か、懐かしいなぁ。

お勧め度:★★★★☆

2011年6月17日 (金)

さよならピアノソナタ 2 (杉井 光)

主人公ナオがベースで、幼なじみ千晶がドラムス、神楽坂先輩がギター(レスポール)というところに真冬もギター(ストラト)で加わってバンド結成…の予定なので二泊三日の夏合宿を行います。海で合宿なんてラノベのお約束ですが、一応、初ライブ(前座だけど)のための練習および曲作りが目的だそうです。

合宿はナオのハーレム状態なのに、本人は自覚なし。主人公の男は鈍感だと相場は決まっているけれど、これは鈍感を通り越して阿呆です。すぐに引きこもってしまい、逃げ出す真冬は「イリヤの空 UFOの夏」のイリヤに似てる。

彼らのサウンドを実際に聴いてみたい。でも、それを言葉でイメージさせるのが小説であって、これでいいのかな。イメージするしかないサウンドではなく、聴いたことのあるメロディ、たとえば「ブラックバード」や「デスペラード」が聞こえてくるのがうれしい。

お勧め度:★★★★☆

2011年6月15日 (水)

さよならピアノソナタ (杉井 光)

転校生は天才ピアニスト蛯沢真冬だった。彼女は、級友と馴染もうともせず、ひとりフェンダー・ストラトキャスターを弾きまくる。しかもピアノ協奏曲を…。

桧川直己(ナオ)は真冬に興味を持つが、散々罵倒されお手上げ状態。そんなところへ神楽坂響子先輩が、真冬をベースギターで「ぶっ飛ばす」方法を伝授してくれる。成功したら真冬とともに民俗音楽研究部に入部するよう約束させたのでした。彼女は一体なにを企んでいるのやら…。

「神様のメモ帳」の杉井 光の作品を読んでみたくて手に取りました。どちらも高校生が主人公ですが「神メモ」が裏社会の探偵ものという体裁をとるのに対して、この作品は、天上の音楽世界から落ちてきた天使の物語。クラシックだけでなく、レッド・ツェッペリンなど、ナオが好きなロックもいろいろ出てきます。音楽に興味のある方は楽しめると思います。

4巻まで一気に読んでみるつもりです。

お勧め度:★★★★☆

2011年6月13日 (月)

県庁おもてなし課 (有川 浩)

高知県庁観光部に新たに「おもてなし課」が新設された。観光振興策を探る掛水は、地元出身の人気作家に観光特使になってくれるよう依頼し快諾を得たのだが「お役所仕事」に対して鋭い指摘を受けることに…。

「図書館戦争」「海の底」「阪急電車」などの有川浩の新作ということで楽しみにしていました。読み始めるとじきに「小説中に登場する作家・吉門というのは有川浩自身だな。高知出身だというから自分の経験が元になってるのか」。巻末特別企画「物語が地方を元気にする!?」で事情が明らかにされています。高知県内の観光スポットもあちこち取材したのでしょう。読み応えがあります。

有川浩お得意の「ベタ甘」は影を潜め、掛水と臨時職員・明神多紀のじれったい恋が微笑ましい。有川浩らしい表現が散りばめられたうえに、土佐弁が地方色を添えています。ユニークな「観光小説」です。

高知県庁ホームページのおもてなし課のURLはつぎのとおりです。

http://www.pref.kochi.lg.jp/soshiki/020201/

お勧め度:★★★★★

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2011年6月11日 (土)

TSUGUMI (吉本ばなな)

主人公のつぐみは18歳。海辺の山本屋旅館で家族と暮らしている。「つぐみは生まれた時から体がむちゃくちゃ弱くて、医者は短命宣言をしたし、家族も覚悟した。そこでまわり中が彼女をちやほやと甘やかし、母親は労を惜しまず日本中の病院に付き添い、少しでもつぐみの寿命を延ばそうと力をつくした」結果、「つぐみは意地悪で粗野で口が悪く、わがままで甘ったれでずる賢い。人のいちばんいやがることを絶妙のタイミングと的確な描写でずけずけ言う時の勝ち誇った様は、まるで悪魔のようだった」。

語り手は白河まりあ、19歳。現在は東京の大学生。夏休みに山本屋旅館に泊まりにきて、幼なじみのつぐみやその姉の陽子らと過ごすうち、犬を連れた恭一に出会い、つぐみは恭一に恋をするのです。つぐみのストレートな告白には驚きましたが、それに動じない恭一もたいしたもの。男女の関わりだからと茶化さない小説にホッとしている自分がいます。

「キッチン」につづく2冊目の吉本ばななでしたが、とんでもなく性格の悪い人物を描いているわりに透明感があって、読後感もさわやかなのが不思議です。

お勧め度:★★★★☆

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2011年6月 9日 (木)

キッチン (吉本ばなな)

祖母を亡くした女子大生・みかげは、祖母と仲の良かった近所の大学生・雄一に拾われ、その母親(じつは女装、整形した父親)と3人で暮らし始めます。時の流れの中で、家族を失い、孤独に苛まれるみかげと雄一。ふたりは友達以上、恋人未満の微妙な関係。みかげが好きなのは台所。大学を辞めて料理の道へ進むことにしたのです。

「感受性の強さからくる苦悩と孤独にはほとんど耐えがたいくらいにきつい側面がある。それでも生きてさえいれば人生はよどみなくすすんでいき、きっとそれはさほど悪いことではないに違いない。もしも感じやすくても、それをうまく生かしておもしろおかしく生きていくのは不可能ではない。そのためには甘えをなくし、傲慢さを自覚して、冷静さを身につけた方がいい。多少の工夫で人は自分の思うように生きることができるに違いない」という信念を伝えたかった、と作者は文庫版のあとがきに書いています。

村上春樹のような「文学的な」文体が顔を見せます。でも、それは澄んだ、透明な苦悩をあらわす言葉。いわゆる「ふつうの幸せ」に甘んじることのできない女性たちの悩み、苦しみ、孤独が綴られています。

薄い文庫本なので、まだ読んだことのない方は一度手に取ってみてはいかがでしょうか。

お勧め度:★★★★☆

2011年6月 7日 (火)

イリヤの空 UFOの夏 その4 (秋山瑞人)

「イリヤの空 UFOの夏」第4弾、完結編です。イリヤを連れて逃げ出した浅羽が迎えた結末は…。
  1. 夏休みふたたび・前編
  2. 夏休みふたたび・後編
  3. 最後の道
  4. 南の島
  5. エピローグ

途中から「エヴァンゲリオン」みたいになってきました。身勝手な大人に憤る中学生、みたいな。しかし「敵」の姿が見えないのでイリヤが戦っているというのがいまひとつピンと来ません。この本を書いた人はサディスティックでやくざな男だと思います。(失礼)

良くも悪くも期待を裏切ってくれた本でした。

お勧め度:★★★☆☆


2011年6月 5日 (日)

イリヤの空 UFOの夏 その3 (秋山瑞人)

「イリヤの空 UFOの夏」第3弾。晶穂が、嫌っていたイリヤを新聞部の取材に誘うと、なぜか大喰いバトルに発展。一方、園原基地近くで起きた爆発は、輸送機の墜落なのか、北からの攻撃か。新聞部部長・水前寺は単身取材に向かい連絡が途絶える…。
  1. 無銭飲食列伝
  2. 水前寺応答せよ・前編
  3. 水前寺応答せよ・後編
  4. 番外編・ESPの冬

次第にボロボロになっていくイリヤを見ていると「最終兵器彼女」を思い出します。最後に浅羽はイリヤに訊ねます。「基地に戻りたい? それともぼくに助けてほしい?」。次巻「その4」が完結編となります。

お勧め度:★★★☆☆

2011年6月 3日 (金)

イリヤの空 UFOの夏 その2 (秋山瑞人)

「イリヤの空 UFOの夏」第2弾。園原中学の文化祭を通じて、浅羽とイリヤの仲がすこしずつ進行します。
  1. 正しい原チャリの盗み方・後編
  2. 十八時四十七分三十二秒・前編
  3. 十八時四十七分三十二秒・後編
  4. 番外編・死体を洗え

浅羽いわく、イリヤは「ヤドカリみたいな性格」。突つくと殻に籠ってしまい、放っておくと動き出す。また、奇妙な性癖があって、浅羽の下駄箱に子猫、カエル、コーヒーの空き缶、ポケットティッシュなんかを入れるのです。彼女の仕業なのは明らかなのに、本人はぶんぶん頭を振って否定する。これはどうやら浅羽への「私信」らしい。だから他言無用。ふたりだけの秘密。しかし、泳いだこともなく、学校に通ったこともなく、学園祭も知らないというのはどういうことでしょう?

「イリヤの空 UFOの夏」はアニメにもなっています。手っ取り早く観たいならアニメですが、ストーリーをじっくり楽しみたいならラノベをお勧めします。

お勧め度:★★★★☆

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2011年6月 1日 (水)

イリヤの空 UFOの夏 その1 (秋山瑞人)

非公認新聞部員・浅羽直之は、中学2年の夏休み最後の日の夜、学校のプールに忍び込んだ。すると、そこにはスクール水着の女子がじっと水面を見つめていた。彼女の手首には銀色の金属球が埋め込まれていて…。

現代の中学校が舞台なのですが、なにかがちがうのです。いつ戦争が起こるかわからない? 学校に核シェルター? 園原基地周辺でUFOがよく見られる? 二学期に転校してきた宇宙人少女・伊里野 可奈(イリヤ カナ)は園原基地に勤める兄といっしょに暮らしているらしい。基地を取材したい新聞部長・水前寺邦博は、浅羽に対してイリヤをデートに誘うよう命令するのですが…。

「電撃hp」の連載をまとめた本「イリヤの空 UFOの夏」第1弾。その4で完結します。
  1. 第三種接近遭遇
  2. ラブレター
  3. 正しい原チャリの盗み方(前編)
  4. 番外編・そんなことだから

学校になじもうとせず、クラスメイトが話しかけても拒絶する、ちょっと電波なイリヤが一体何者なのかはまだわかりませんが、いろいろと謎が多いので2巻以降でも楽しませてくれそうです。

お勧め度:★★★★☆


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