空飛ぶタイヤ (池井戸 潤)
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走行中の大型トレーラーの左前輪が突然外れ、小6の男の子を連れた母親の背中を直撃、死亡させてしまいます。大手自動車メーカー「ホープ自動車」の調査結果は「整備不良」。事故を起こした運送会社の社長・赤松は「整備不良などありえない」と、真相を追究しようとしますが、そこに中小企業を見下した、大企業の論理が立ちはだかります。 これは2000年に発覚した三菱自動車によるリコール隠しをモチーフにした経済小説です。フィクションとはいえ、トラックのエンブレムがオーバルを3つ重ねたものだとか、ここまでリアルに書いてよいのかと心配になるほど。当時のニュースは今でも覚えていて「三菱自動車は終わったな」と思ったものです。「罪罰系迷門企業」という第5章のタイトルは皮肉が利いてます。なんとか生き残ったみたいですけど、一度死んでますからゾンビです。 タイヤ(ホイール)を固定するハブは、ブレーキパッドのような消耗品ではありません。乗用車のそれを見たことがありますが「こんな小さな部品でボディを支えているんだ」と驚きました。4個のハブでタイヤにかかる全重量を支えているのです。自動車は止まらなくなるくらいならエンジンがかからないほうがマシ。欠陥自動車などまさに「走る凶器」です。 赤松運送は取引先や銀行から見放され倒産の危機に直面。家族や従業員たちも世間から犯罪者呼ばわりされ、つらい日々を送ることになります。何度もくじけそうになりながらも「舐めるなよ」と大企業に立ち向かっていく様子に勇気をもらいました。 自動車メーカー、銀行、運送会社にお勤めの方はもちろん、社会人であれば共感できることが多々あるはず。長い小説ですが「それからどうなるんだろう」と先が気になって、一気に読んでしまいました。お勧めです! お勧め度:★★★★★ |
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