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2011年2月 1日 (火)

落日燃ゆ (城山三郎)

昭和3年から20年、即ち満州事変から太平洋戦争の戦争責任を裁くため、開かれた極東国際軍事裁判(東京裁判)。そこで元総理・外相 広田弘毅は他の6人の軍人とともに、唯一の文官として死刑判決を受けた。外交官時代から中国、ソ連との戦争を回避しようと軍部と対立しながらも奔走し、挙句の果てに「万歳! 万歳!」と叫ぶ軍人たちとともに処刑されてしまったのです。裁判では一切の弁明をしなかったといいます。

「万歳万歳を叫び、日の丸の旗を押し立てて行った果てに、何があったのか、思い知ったはずなのに、ここに至っても、なお万歳を叫ぶのは、漫才ではないのか。」

以前ご紹介した「永遠の0」(百田 尚樹)は零戦乗りの戦争体験を描き出した小説ですが、「落日燃ゆ」は、そのほぼ同時期を広田弘毅の視点で描いています。戦争そのものの描写は少なく、外交交渉や政治、軍部、天皇らの動向が中心です。

なぜ戦争が起こったのか。なぜ戦争を止めることができなかったのか。

明治憲法の統帥権。陸海軍は天皇の指示で動くので政府は関与できませんでした。つまり文民統制が効いていなかった。とはいえ、満州での関東軍は天皇の意向すら無視して暴走したわけです。その暴走の背景には日本国内の景気低迷、失業者の増加があり、国民も「国益」を求めていたことがあるようです。

わたしの両親は昭和一桁生まれ。幼い時期とはいえ、こんな時代を生きて、戦後の高度成長期を支えてきたのか…。戦争に関する状況は複雑で様々な要因があったことでしょう。太平洋戦争、東京裁判、靖国神社、明治憲法、日本国憲法、昭和天皇、朝日新聞などについて、今後も本などで調べていこうと思います。

広田弘毅は「自分は五十年早く生まれ過ぎたような気がする」と言ったといいます。たしかに、1990年代に広田が総理になっていたなら、見苦しい「政治とカネ」の問題は起きなかったかもしれません。歴史に「もし」は禁物だといいますが、それが多くの人の興味を引いたり、希望になったりするのです。

文庫本になっていますから、手元に置いておきたい一冊です。

お勧め度:★★★★☆

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