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2011年2月

2011年2月28日 (月)

遠い夏の英雄 (スーザン・ブロックマン)

米海軍特殊部隊SEALのトム・パオレッティ大尉は任務中に敵の攻撃を受け頭部を損傷し、静養のため30日の休暇を取ることになります。ボストン近郊の故郷の町に帰ってきたトムは、高校生の頃、好きだったケリーと再会し、惹かれていきます。一方、トムは以前逃がしてしまったテロリスト「商人」を目撃。SEALの上官に報告しても、すでに死亡したはずのテロリストのことなど、頭部負傷のせいにされて取り合ってくれません。トムも自分に自信が持てないながらも、数人の仲間を呼び寄せて動き始めます。

第二次世界大戦における第55師団記念式典が物語の核になっていて、そこへトムの叔父ジョーと、ケリーの父チャールズが出席することになっているのですが、ジョーとチャールズはなぜか大喧嘩を繰り返します。一体、彼らの過去になにがあったのか…というのが縦糸となり、いろんな人物が横糸を紡いでいきます。

文庫600ページの大作で読み応えがあります。ただ、その半分が妄想と情事ではないかと感じるほど。RWA(アメリカ・ロマンス作家協会)の読者人気投票で第一位獲得とあるので、これがアメリカの「ロマンス」なのでしょうか。わたしは「(株)魔法製作所」シリーズの軽いお色気で十分満腹です。

「遠い夏の英雄」とは誰のことなのか考えながら読んでみてください。

お勧め度:★★★☆☆

2011年2月27日 (日)

ビートキッズ (風野 潮)

中学の吹奏楽部(ブラバン)が舞台。成績優秀で音楽センスは抜群だけど口が悪い菅野七生(かんのななお)がパーカッション担当に誘ったのが横山英二(よこやまえいじ)。大阪でいうところの「アホ」やけどリズム感はバッチリ! このふたりを中心に繰り広げられる青春音楽小説です。

英二の母は体が弱いけれど、もうすぐ妹が生まれる。ところが父親は博打好きで家にいないことが多く、家庭での英二は母を助けて孤軍奮闘。一方の七生は楽器店の息子ということで羨ましいことばかりかというとそうでもなくて、それぞれに悩みを抱えつつ音楽に取り組んでいるわけです。

テンポよく転がっていくストーリーのおかげで、すんなりと読破できました。続編「ビート・キッズ2」も出ています。

お勧め度:★★★☆☆

2011年2月24日 (木)

空飛ぶタイヤ (池井戸 潤)

走行中の大型トレーラーの左前輪が突然外れ、小6の男の子を連れた母親の背中を直撃、死亡させてしまいます。大手自動車メーカー「ホープ自動車」の調査結果は「整備不良」。事故を起こした運送会社の社長・赤松は「整備不良などありえない」と、真相を追究しようとしますが、そこに中小企業を見下した、大企業の論理が立ちはだかります。

これは2000年に発覚した三菱自動車によるリコール隠しをモチーフにした経済小説です。フィクションとはいえ、トラックのエンブレムがオーバルを3つ重ねたものだとか、ここまでリアルに書いてよいのかと心配になるほど。当時のニュースは今でも覚えていて「三菱自動車は終わったな」と思ったものです。「罪罰系迷門企業」という第5章のタイトルは皮肉が利いてます。なんとか生き残ったみたいですけど、一度死んでますからゾンビです。

タイヤ(ホイール)を固定するハブは、ブレーキパッドのような消耗品ではありません。乗用車のそれを見たことがありますが「こんな小さな部品でボディを支えているんだ」と驚きました。4個のハブでタイヤにかかる全重量を支えているのです。自動車は止まらなくなるくらいならエンジンがかからないほうがマシ。欠陥自動車などまさに「走る凶器」です。

赤松運送は取引先や銀行から見放され倒産の危機に直面。家族や従業員たちも世間から犯罪者呼ばわりされ、つらい日々を送ることになります。何度もくじけそうになりながらも「舐めるなよ」と大企業に立ち向かっていく様子に勇気をもらいました。

自動車メーカー、銀行、運送会社にお勤めの方はもちろん、社会人であれば共感できることが多々あるはず。長い小説ですが「それからどうなるんだろう」と先が気になって、一気に読んでしまいました。お勧めです!

お勧め度:★★★★★

2011年2月22日 (火)

赤い靴の誘惑~(株)魔法製作所 (シャンナ・ウェンドソン)

ユーモア・ファンタジー「(株)魔法製作所」シリーズ第2弾。主人公のケイティはMSI社で仕事を認められてきた矢先、社内でスパイ事件が起こり、捜査担当に任命されてしまいます。社内には疑心暗鬼のムードが漂い、仕事の効率は落ちる一方。そんな折、テキサスからニューヨークに両親が出てくることになって…。

両親が出てくると聞いて心配になったのが「ひょっとしてイミューン(魔法が効かない体質)って遺伝したりして」。第2巻は公私共にケイティ危機一髪! ケイティは困ったことになっても自分で抱え込んでしまうタイプなので事態は泥沼化。なかなかスリリングな展開で、読後感は「あぁ、楽しかった!」。

お勧め度:★★★★☆

2011年2月20日 (日)

ニューヨークの魔法使い~(株)魔法製作所 (シャンナ・ウェンドソン)

ユーモアファンタジーとしてはピアズ・アンソニーの「魔法の国ザンス」シリーズが好きなのですが、この「(株)魔法製作所」シリーズも面白い。ザンスは純粋な(?)ファンタジーの世界ですが、魔法製作所は現代のニューヨークに存在する魔法社会が舞台です。映画でたとえるなら「9 to 5」+「ハリー・ポッター」といったところでしょうか。 

主人公はテキサス出身のケイティ・チャンドラー、26歳。本を開いた途端「う、文字が多い」。このケイティがよくしゃべるんです。いかにもアメリカ人らしいユーモア満載で笑えます。

田舎から出てきて1年、ニューヨークで勤める会社のボスは二重人格のイヤな奴。そこへ新しい働き口の誘いを受けるのですが、それが魔法製作所だったのです。そういえば、ニューヨークに出てきてから、背中に羽をつけた妖精みたいな人とか、教会の屋根にガーゴイルがとまっていたり消えたりしてたっけ。「都会には変わった人がいるんだなぁ」と思っていたけれど、ふつうの人にはめくらましが効いてたのが、ケイティは魔法が効かない体質(イミューン)なのでそのまま見えてしまっていたわけです。

魔法使いたちにとってイミューンは貴重な存在。契約書のめくらましなどを見抜くことができるからです。ということでケイティは転職。そこのCEOはアンブローズ・マーヴィン。マーヴィン? なんと彼はあの…だったのです!

ニューヨークで魔法ビジネスを行う会社のOLになったケイティの目を通して魔法社会を体験してみませんか?

お勧め度:★★★★☆

2011年2月18日 (金)

トッカン―特別国税徴収官 (高殿 円)

国税局は「金」専門の警察。国税徴収法は日本の法律では最高の強権。裁判所の令状なしで押しかけ、金品を剥奪しても滞納者は手出しができない。警察相手と異なり黙秘する権利すらない。それだけに「徴収」は嫌われる。

特別国税徴収官(略してトッカン)鏡 雅愛付きの徴収官・涼宮深樹25歳、あだ名は「ぐー子」。東京の京橋税務署勤務。滞納者の取立てに向かうと「帰れー!」という怒号のみならず塩を浴びせられます。「お母さん、あなたの娘はいま塩を撒かれました。」 それでも塩ならまだしも…。ひ、ひどい。

冒頭から笑わせてくれます。面白い! 以下の5話が収められています。

  1. 死神と葬式女
  2. 美しき銀座の滞納者
  3. ガールズ・ウォー
  4. 女のオトシマエ
  5. イッツ・マイワーク

単に安定を求めて公務員となった「ぐー子」でしたが、さまざまな経験を積むうちに自分の仕事に目覚めてゆき、冷徹な上司の秘密も徐々に明かされていきます。お勧めです!

お勧め度:★★★★★

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2011年2月16日 (水)

空想オルガン (初野 晴)

「退出ゲーム」「初恋ソムリエ」に続く“ハルチカ”シリーズ第3弾です。吹奏楽の甲子園といえる普門館(全日本吹奏楽コンクール)出場を目指す上条春太と穂村千夏。吹奏楽部の活動を縦糸に、さまざまな事件が持ち上がり、よせばいいのに首を突っ込んでいくふたりなのでした。

  1. 序奏
  2. ジャバウォックの鑑札
  3. ヴァナキュラー・モダニズム
  4. 十の秘密
  5. 空想オルガン

「序奏」は「これまでのあらすじ」なので、今回も4編の連作短編集になっています。

この作家は思わせぶりな、というか凝ったタイトルが好きなようです。ジャバウォックというのはルイス・キャロルの「鏡の国のアリス」に出てくるナンセンス詩「ジャバウォックの詩」にうたわれる怪物。一度読み終えたら冒頭に戻ってみると「なるほど」と納得する仕掛けです。

今回いちばん面白かったのは「十の秘密」。ガングロ女子高生たちの吹奏楽が話題をさらいます。一から十までの「秘密」が順に挙げられていくのですが「???」といった感じにミステリー。(笑)

ミステリーといっても高校生の日常に潜むものなので人が死なないところがいい。一方、ハルチカを含む不自然な「三角関係」をずっと引っ張っていますが、これはどう収めるつもりなのでしょうか?

お勧め度:★★★★☆

2011年2月14日 (月)

初恋ソムリエ (初野 晴)

「退出ゲーム」の続編(ハルチカ・シリーズ第2弾)です。今回も4編の連作を収めてあります。

  1. スプリングラフィ
  2. 周波数は77.4MHz
  3. アスモデウスの視線
  4. 初恋ソムリエ

高校の吹奏楽部が舞台にしては(前巻では)音楽の話題が少なかったのですが、今回は吹奏楽の甲子園「普門館」を目指して仲間集めと練習に熱が入ります。ちょっと音楽小説っぽくなってきましたが、穂村千夏と上条春太は例によって他所事に巻き込まれて、というより首を突っ込んでいくのでした。

4編のうち、いちばん面白かったのは「アスモデウスの視線」。アスモデウスというのは「ソロモン王に封印された72柱の悪魔のひとり。色欲を司る悪魔」。なにやら穏やかならざるタイトルですが、水面下に重いテーマが沈んでいます。この作者は「隠し味の秘密を聞いてビックリ」みたいな作り方が好きなようです。その証拠が「初恋ソムリエ」。タイトルは高校生らしく、ほんわかしていますが実際は…読んでからのお楽しみ!

お勧め度:★★★★☆

2011年2月12日 (土)

退出ゲーム (初野 晴)

清水南高校の吹奏楽部1年のフルート奏者・穂村千夏(チカ)と、ホルン奏者・上条春太(ハルタ)が主人公。このふたりの名前をとって「ハルチカ・シリーズ」第1弾です。

  1. 結晶泥棒(化学部の部室から硫酸銅の結晶が消えた)
  2. クロスキューブ(6面真っ白なルービックキューブの謎)
  3. 退出ゲーム(演劇部Vs.吹奏楽部 即興劇対決)
  4. エレファンツ・ブレス(それはどんな色?)

上記4章の連作ミステリーになっています。(うしろの括弧内はわたしが記入しました)

いちばん面白かったのが「退出ゲーム」。前半のお題は「恩師の送別会において、最後の別れの挨拶の前に退出する」。制限時間10分以内に各チーム2名ずつが即興劇のなかで退出したほうが勝ち。ただし「このゲームはいかに退出を阻止するかがポイントになる」のです。これは結構、頭を使います。観客がいわば審判。観客が納得する退出理由が必要になります。

背景に重いテーマを抱えながら”ハルチカ”コンビが軽妙に解決に導いていくあたりが魅力です。とくにミステリーだと構えなくていいと思います。

お勧め度:★★★★☆

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2011年2月10日 (木)

阪急電車 (有川浩)

小学生の頃、仁川に遠足に行ったきりだから今津線にはあまり縁がありませんが、阪急宝塚線沿線に住んでいたので身近に感じます。宝塚ファミリーランドにも何度も連れていってもらいましたっけ。(動物園のアライグマが好きでした。)

この「阪急電車」を読むのも2回目。「袖すり合うも他生の縁」的な構成が秀逸なので、今回はメモを取ってみました。

これは今津線の宝塚駅から西宮北口駅までの往復で、出会い、別れる人たちの物語です。有川浩お得意の「ベタ甘」ではないものの、くすぐったい恋のお話も盛り込まれています。電車の中で読みながら、ときどき顔を上げて周囲の人を観察してみるのが面白そう。

■ 宝塚駅
 征志がユキと出会う
■ 宝塚南口駅
 討ち入り後の翔子
■ 逆瀬川駅
 時江と孫娘(ドッグランの帰り)が翔子と出会う
■ 小林駅
 翔子が駅周辺を散策
■ 仁川駅
 ミサ、カツヤと別れてから時江に出会う
「下らない男ね。やめておけば?」
■ 甲東園駅
 ミサ、女子高生(えっちゃん)たちの恋バナを聞く
■ 門戸厄神駅
 圭一が美帆と出会う
■ 西宮北口駅
 翔子、茨木への帰り道
 ミサは神戸方面へ
 圭一と美帆が途中下車

□ 西宮北口駅
 ミサ、行儀の悪いおばさんたちに立腹
(ミサ、カツヤと別れるため友人の兄・健吾に助けてもらう)
□ 門戸厄神駅
(おばさんグループの)康江、ミサと出会う
□ 甲東園駅
 悦子の彼氏との馴れ初め話
□ 仁川駅
 圭一と美帆のその後
□ 小林駅
 翔子、おばさん軍団をやり過ごし、意地悪されてる小学生と出会う
 その後、ミサと出会い食事へ
□ 逆瀬川駅
 時江と孫娘と愛犬、おばさん軍団に遭遇
 ユキと征志の助勢を得て撃破。おばさんたちは逃走
□ 宝塚南口駅
 征志が銘酒を手に入れてユキと食事
□ 宝塚駅
 征志はユキにある提案をする

お勧め度:★★★★★

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2011年2月 9日 (水)

あの戦争は何だったのか~大人のための歴史教科書 (保坂正康)

1945年から60年後、2005年に発行された本書の性格は著者自身がつぎのように書いています。

「太平洋戦争を正邪で見るのではなく、この戦争のプロセスに潜んでいるこの国の体質を問い、私たちの社会観、人生観の不透明な部分に切りこんでみようというのが本書を著した理由である。あの戦争のなかに、私たちの国に欠けているものの何かがそのまま凝縮されている。そのことを見つめてみたいと私は思っているのだ。その何かは戦争というプロジェクトだけではなく、戦後社会にあっても見られるだけでなく、今なお現実の姿として指摘できるのではないか。
戦略、つまり思想や理念といった土台はあまり考えずに、戦術のみにひたすら走っていく。対症療法にこだわり、ほころびにつぎをあてるだけの対応策に入りこんでいく。現実を冷静に見ないで、願望や期待をすぐに現実に置きかえてしまう。太平洋戦争は今なお私たちにとって”良き反面教師”なのである。」

歴史を振り返ったときに、太平洋戦争への始まりとなった事件はなにで、直接のきっかけを作ったのは誰なのか。「父が子に教える昭和史~あの戦争36のなぜ?」(半藤一利 他)という解説集のような本のつぎに読んだこともあって、戦争に至る経緯を著者の考えで1冊にまとめてあるという意味で興味深いものでした。「大人のための歴史教科書」というよりも「副読本」といったところでしょうか。

なぜ戦争を避けることができなかったのか。なぜ無謀な戦闘が繰り返されたのか、といった疑問に対する答えが知りたくて、最近戦争関連の本を読んでいるのですが、限定的な意味での責任者はいても、単純なわかりやすい答えは見つかりそうにありません。そもそも戦争に勝つための条件(目標)が曖昧で、天皇がどうの、内閣がどうの、軍部と右翼がどうのと、国内の勢力闘争に明け暮れ、国家戦略もなく、無闇に戦線を拡大して自滅していく…。翻って現代日本はどうか、ということをじっくり考えてみる必要があるでしょう。

 お勧め度:★★★☆☆

2011年2月 7日 (月)

謎解きはディナーのあとで (東川篤哉)

「失礼ながらお嬢様――この程度の真相がお判りにならないとは、お嬢様はアホでいらっしゃいますか」

ほんとに失礼な執事の影山。宝生グループ総帥の娘である麗子に対して悪口雑言。お嬢様として、そして国立署の刑事としてのプライドはあるものの、実際のところ、影山の名推理によって難事件が解決していくのです。

空気が読めない上司・風祭警部と宝生麗子が事件現場で聞き込みなど行い、麗子がお屋敷に帰宅してディナーのあと影山に事件の詳細を話すと冒頭のようなセリフが跳ね返って来て、あっさり解決してしまうのでした。

ラノベみたいなキャラクター設定と珍妙な会話が面白い。

「見たまえ、宝生君。今度こそ動かぬ証拠だ」
麗子は言われるままに猫を見た。黒猫のタンゴは小さな布団に寝そべって、右前足を嘗めている。これが動かぬ証拠と言われても――「猫、動いてますけど?」
「『動かぬ証拠』は単なる比喩だ。そりゃ猫は動くさ」

本の帯には「とにかく面白いと書店員さんからも反響続々」とコメントが並んでいたので、読み応えがあるものと期待したのですが肩透かしを食らいました。本格ミステリーとしては事件の謎解きも人物描写も弱い。軽く読めるユーモアミステリーとしてお楽しみください。

お勧め度:★★★☆☆

2011年2月 6日 (日)

僕は友達が少ない 4 (平坂 読)

小鷹と夜空は10年前知り合いだった!? だけど小鷹いわく「昔は友達だったとしても今も同じというわけにはいかない」って、とっても残念な言い訳。ふたりがめでたく「友達」になってしまうと「隣人部」は廃部でしょう。だから、なかったことにして「隣人部」の活動はいつものパターンで続くのでした。 ここまで来ると神経が麻痺してきて、これはこれで面白いかも。

お勧め度:★★☆☆☆

2011年2月 5日 (土)

僕は友達が少ない 3 (平坂 読)

友達をつくりたい面々が集う「隣人部」は夏休みに入っても活動中。夏といえば海、夏祭り、花火!みたいなお約束イベントに挑戦するもやっぱり残念な結果に…。「僕は友達が少ない」=略称「はがない」第3弾。

基本的にイベント短編集なので、ドラマチックなストーリーがないんです。そのイベントもお約束ばかりで食傷気味。それでも唯一新展開を感じさせてくれるのがラストシーン。夏休み明けの9月1日、登校してきた夜空を見た小鷹はあることを思い出します。ここでもう「おしまい」にしてもよいのではないでしょうか。(おいおい)

お勧め度:★★☆☆☆

2011年2月 3日 (木)

父が子に教える昭和史~あの戦争36のなぜ? (半藤一利 他)

「落日燃ゆ」(城山三郎)を読んで、満州事変から東京裁判まで「ここをもうすこし詳しく知りたい」と思っていた「痒いところ」に手が届く本。手軽な参考書としてお勧めです。

  1. 昭和恐慌
  2. 満州事変
  3. 二・二六事件
  4. 戦前暗黒史観
  5. 南京事件
  6. 朝鮮統治
  7. ノモンハン事件
  8. 日独伊三国同盟
  9. 従軍慰安婦
  10. 新聞の責任
  11. 海軍善玉説
  12. エリート参謀
  13. 真珠湾奇襲
  14. 零戦
  15. 戦艦大和
  16. 特攻
  17. 戦場の兵士
  18. 原爆投下
  19. 東条英機
  20. 昭和天皇
  21. 無条件降伏
  22. 引揚げ
  23. シベリア抑留
  24. 北方領土
  25. マッカーサー会見
  26. 闇市
  27. 皇族と華族
  28. 人間宣言
  29. 日本国憲法
  30. 民主主義
  31. 東京裁判
  32. 共産党
  33. 朝鮮戦争
  34. 天皇退位
  35. 吉田 茂
  36. 講和条約

一部納得のできない記述もありますが、本でも新聞でもそこに書いてあることを鵜呑みにしてはいけません。正しいと思われる情報を集めたうえで自分の頭で考えましょう。我が家で「父が子に教える」のはそういうことです。

お勧め度:★★★★☆

2011年2月 1日 (火)

落日燃ゆ (城山三郎)

昭和3年から20年、即ち満州事変から太平洋戦争の戦争責任を裁くため、開かれた極東国際軍事裁判(東京裁判)。そこで元総理・外相 広田弘毅は他の6人の軍人とともに、唯一の文官として死刑判決を受けた。外交官時代から中国、ソ連との戦争を回避しようと軍部と対立しながらも奔走し、挙句の果てに「万歳! 万歳!」と叫ぶ軍人たちとともに処刑されてしまったのです。裁判では一切の弁明をしなかったといいます。

「万歳万歳を叫び、日の丸の旗を押し立てて行った果てに、何があったのか、思い知ったはずなのに、ここに至っても、なお万歳を叫ぶのは、漫才ではないのか。」

以前ご紹介した「永遠の0」(百田 尚樹)は零戦乗りの戦争体験を描き出した小説ですが、「落日燃ゆ」は、そのほぼ同時期を広田弘毅の視点で描いています。戦争そのものの描写は少なく、外交交渉や政治、軍部、天皇らの動向が中心です。

なぜ戦争が起こったのか。なぜ戦争を止めることができなかったのか。

明治憲法の統帥権。陸海軍は天皇の指示で動くので政府は関与できませんでした。つまり文民統制が効いていなかった。とはいえ、満州での関東軍は天皇の意向すら無視して暴走したわけです。その暴走の背景には日本国内の景気低迷、失業者の増加があり、国民も「国益」を求めていたことがあるようです。

わたしの両親は昭和一桁生まれ。幼い時期とはいえ、こんな時代を生きて、戦後の高度成長期を支えてきたのか…。戦争に関する状況は複雑で様々な要因があったことでしょう。太平洋戦争、東京裁判、靖国神社、明治憲法、日本国憲法、昭和天皇、朝日新聞などについて、今後も本などで調べていこうと思います。

広田弘毅は「自分は五十年早く生まれ過ぎたような気がする」と言ったといいます。たしかに、1990年代に広田が総理になっていたなら、見苦しい「政治とカネ」の問題は起きなかったかもしれません。歴史に「もし」は禁物だといいますが、それが多くの人の興味を引いたり、希望になったりするのです。

文庫本になっていますから、手元に置いておきたい一冊です。

お勧め度:★★★★☆

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