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2011年1月 2日 (日)

神様のカルテ (夏川 草介)

 に働けばかどが立つ。じょうさおさせば流される。意地をとおせば窮屈きゅうくつだ。とかくに人の世は住みにくい。

夏目漱石が好きで、言葉遣いが明治を通り越して江戸時代の人間みたい(奥さんが「細君」だったり)で、病院でも変人扱いの内科医5年目の栗原一止が主人公。信州の民間病院は医師不足のために3日間ほとんど眠ることもできないほどの忙殺ぶり。過労で倒れても不思議じゃない状態で頭痛がひどい。

「ちなみに脳外科の教科書によると脳には痛覚神経はないらしい。だから仮に麻酔なしに脳みそをぐちゃぐちゃにスプーンでかきまわしても、人は痛みを感じない。もちろん実際に試した人はいないし、試してから「痛いですか?」と聞いて返事ができたら、それは人間ではない。」

面白い先生です。冒頭から内容に比して堅苦しい文体に構えてしまっていたのですが、ここで肩の力が抜けて最後まで一気に読んでしまいました。

私事になりますが、学生時代、大学病院の担当医から父の余命を知らされたとき「大学の先生だと偉そうにしていても結局父を救ってはくれなかった」と内心恨んだものでしたが、患者を看取るのが日常の医師にも苦悩があるのだろうと今は思います。終末医療のあり方も問題提起していて、わたしだったら治る見込みがなく、意識が戻らないのであれば延命治療は望みません。「名前を呼んでも二度と返事をしない」のが人の死だと思うからです。

本の帯には「神の手を持つ医者はいなくても、この病院では奇蹟が起きる」とあります。べつに奇蹟は起きませんが、いわゆる「ゴッドハンド」ものでないことは確かです。ひとりの医者が厳しい労働環境にありながらも患者と真摯に向き合う様を描いた小説です。泣けますから、電車や学校、待合室などでは読まないこと。ひとりの部屋で読みましょう。 (「神様のカルテ2」も読みたい!)

お勧め度:★★★★★

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