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2010年9月28日 (火)

童話物語(上)(下) (向山 貴彦)


妖精は疫病を撒き散らし、世界を滅ぼす「妖精の日」を起こすものと信じられていた。恵まれない13歳の少女ペチカが、人間観察のため地上に下りてきた妖精フィツと出会い運命の歯車が動き出す。

書評では、主人公のペチカが「極めて性格の悪い少女」と紹介されていたので悪いイメージを抱いていたのですが、悪いのは性格ではなく環境です。幼い頃に親と死に別れ、教会の下働きに連れて来られたものの、鬼のような守頭に虐げられ、他の子供たちにもいじめられ、いつもおなかをすかせて、寒さに震えていては性格がねじれても仕方ないでしょう。ペチカは母親の写真を宝物のように大事にしていて、写真を眺めては母の膝に抱かれて本を読んでもらう夢を見るのです。そのときだけは母親似の優しい目になるのです。母親に愛された記憶があったのがペチカの救いだといえます。

たしかに、おなかをすかせた子猫が寄ってきても「あっちに行け」と足蹴にして、翌朝子猫は冷たくなっていたりします。しかし、それまで暮らしてきたトリニティの町から逃げ出し、妖精フィツと旅を続けるうち、時々やさしい心が見え隠れするようになります。一方、教会でペチカをいじめていたルージャンが彼女に謝りたくて追いかけてきます。主にペチカとフィツ、ルージャンの物語です。

永遠の生命を与えられた妖精界から来たフィツは言います。「確かに人間はひどいことも、愚かなこともするけど、でも、ぼくらの世界と違って、ここでは誰もが変わることができるんだ」「変われるってことはいつでも可能性があるってことなんだ。変われるってことは今日がだめでも、明日はうまくいくかもしれないってことなんだ。変われるってことは絶対にあきらめるなってことなんだ!」。下界ではフィツも生身の身体。文字通り死にそうな体験を何度もして悟ったようです。

執拗に追ってくる守頭から逃げるうち、ペチカは馬車で旅する盲目のおばあさんや、大きな街の花屋さん夫婦、機関車の女性運転士など、いろんな人に助けられます。やがてペチカはふつうの暮らしを体験し、徐々に変わっていきます。そして、フィツとは無関係に「妖精の日」が起こるのです。そのときペチカは?

長編小説ですが、読み始めたら一気でした。途中「指輪物語」を思い出したり、もっと書き込んでほしかった部分もありました。ファンタジーが好きな方は是非!

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