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2010年9月

2010年9月30日 (木)

RDG 3 レッドデータガール 夏休みの過ごしかた (荻原 規子)

学校にもずいぶん慣れてきた鈴原泉水子と生徒会執行部は、宗田真響の誘いを受け、夏休みに長野県戸隠で合宿を行うことになりました。「ふつうの学校生活」に憧れる泉水子は合宿にも期待するのですが、真響の思惑があちこちで問題を起こす始末。一方、宗田真夏の愛馬タビが危篤だという知らせが入って真夏は飛んでいったのですが、3人目の宗田姉弟である真澄(6歳で病死したが霊となって現れる)が真夏の代わりに合宿に参加することになり、それが大事件に発展していくのでした。

「レッドデータガール」シリーズも3巻目になり、ようやく事態が大きく動き始めました。これまでは不思議なことがあってもほぼ水面下だったのが、各々の思惑や確執、異能の力が明らかになっていきます。宗田真響の「目的のためには他人がどう思おうがおかまいなし」といった態度が気に入らないのですが、泉水子が彼女を支持しているので今のところは許しておいてあげます。(笑)

学年で成績トップの陰陽師 高柳一派。それに対抗する宗田姉弟+日本史研究会(実態は宗田真響ファンクラブ)が鈴原泉水子と相楽深行を取り込もうとしているという構図が見えます。権力争いはほどほどにしておいてほしい、と思うのでした。それよりも真澄の存在にどういう意味があるのか、泉水子に憑いている姫神とは一体何者なのか、といった不思議を明かしていってほしい。

いよいよ目が離せない「レッドデータガール」です。RDG4も期待してます!

2010年9月28日 (火)

童話物語(上)(下) (向山 貴彦)


妖精は疫病を撒き散らし、世界を滅ぼす「妖精の日」を起こすものと信じられていた。恵まれない13歳の少女ペチカが、人間観察のため地上に下りてきた妖精フィツと出会い運命の歯車が動き出す。

書評では、主人公のペチカが「極めて性格の悪い少女」と紹介されていたので悪いイメージを抱いていたのですが、悪いのは性格ではなく環境です。幼い頃に親と死に別れ、教会の下働きに連れて来られたものの、鬼のような守頭に虐げられ、他の子供たちにもいじめられ、いつもおなかをすかせて、寒さに震えていては性格がねじれても仕方ないでしょう。ペチカは母親の写真を宝物のように大事にしていて、写真を眺めては母の膝に抱かれて本を読んでもらう夢を見るのです。そのときだけは母親似の優しい目になるのです。母親に愛された記憶があったのがペチカの救いだといえます。

たしかに、おなかをすかせた子猫が寄ってきても「あっちに行け」と足蹴にして、翌朝子猫は冷たくなっていたりします。しかし、それまで暮らしてきたトリニティの町から逃げ出し、妖精フィツと旅を続けるうち、時々やさしい心が見え隠れするようになります。一方、教会でペチカをいじめていたルージャンが彼女に謝りたくて追いかけてきます。主にペチカとフィツ、ルージャンの物語です。

永遠の生命を与えられた妖精界から来たフィツは言います。「確かに人間はひどいことも、愚かなこともするけど、でも、ぼくらの世界と違って、ここでは誰もが変わることができるんだ」「変われるってことはいつでも可能性があるってことなんだ。変われるってことは今日がだめでも、明日はうまくいくかもしれないってことなんだ。変われるってことは絶対にあきらめるなってことなんだ!」。下界ではフィツも生身の身体。文字通り死にそうな体験を何度もして悟ったようです。

執拗に追ってくる守頭から逃げるうち、ペチカは馬車で旅する盲目のおばあさんや、大きな街の花屋さん夫婦、機関車の女性運転士など、いろんな人に助けられます。やがてペチカはふつうの暮らしを体験し、徐々に変わっていきます。そして、フィツとは無関係に「妖精の日」が起こるのです。そのときペチカは?

長編小説ですが、読み始めたら一気でした。途中「指輪物語」を思い出したり、もっと書き込んでほしかった部分もありました。ファンタジーが好きな方は是非!

2010年9月26日 (日)

暗闇への祈り―探偵藤森涼子の事件簿 (太田 忠司)

名古屋を舞台にした高校生探偵の活躍を描いた「甘栗と金貨とエルム」「甘栗と戦車とシロノワール」の著者には、他にも名古屋を舞台にした探偵小説があると知って読んでみました。絶版になっていたので名古屋市図書館で借りたのですが、「探偵藤森涼子の事件簿」として「暗闇への祈り」は2作目にあたり、1作目は「歪んだ素描」です。しかし1作目は短編集なので、2作目の帯に「シリーズ初の長編」とあったわけです。

2作目から読んでも問題ありませんでした。推理小説を読みたかったわけではないので人が死なないのもよかった。30歳目前の藤森涼子という人間もきちんと描かれていて面白かった。しかし、やはり地元ネタに目がいくのでした。

「地下鉄本山駅と八事駅を結ぶこの道沿いには、四つの大学が並んでいる。そのため学生も多く、彼らをターゲットにしたしゃれた店もいくつか建っていた。誰が言ったのか、一時期この通りを「名古屋の原宿」と呼ぼうとしていたことがあったが、いつしかその名は消えてしまった」

わたしが東京から名古屋転勤の際、近くに名古屋大学や南山大学のある本山方面へ不動産屋さんに案内され「この山手通りは名古屋の青山通りというんです」と聞かされて「それはいくらなんでも無理があるかも」と思ったのを思い出しました。(苦笑)

名古屋以外に横浜も舞台になっています。興味のある方はぜひご一読ください!

2010年9月25日 (土)

【新釈】 走れメロス 他四編 (森見 登美彦)

表題作の太宰治の「走れメロス」の他、中島敦の「山月記」、芥川龍之介の「藪の中」、坂口安吾の「桜の森の満開の下」、森鴎外の「百物語」を森見流に書き上げた愉快な短編集です。この5編を選んだのは、それが各作家の代表作だとか有名だとかいうのではなく、森見が書きたいと思ったものだとか。

もっと真面目な内容かと思いきや、「夜は短し歩けよ乙女」「四畳半神話大系」のように京都の街を舞台に、京大生と思しき面々が繰り広げる怪しくも可笑しい物語になっています。「走れメロス」は親友との約束を守るために走るのではなく、最初から親友など見捨てて京都を脱出しようと奔走するのです。(笑)

面白かった! お勧めです。

2010年9月22日 (水)

華胥の幽夢 ~ 十二国記 (小野 不由美)

十二国の歴史を彩る5つの物語。景王陽子は、泰麒蒿里は、楽俊は、そして延王尚隆、泰王驍宗、供王珠晶、采麟揺藍、祥瓊、月渓、利広は、それぞれの胸に何を秘めるのか。

  • 戴国王驍宗(ぎょうそう)の命で漣国へ赴いた泰麒(たいき)を待っていたのは。
  • 芳国王仲韃(ちゅうたつ)への大逆の張本人月渓(げっけい)に慶国王陽子から届けられた親書とは。
  • 延で学ぶ楽俊のもとへ旧知の陽子から届けられた書簡とは。
  • 才国の宝重華胥華朶(かしょかだ)に託された理想の王国への憧憬の行方は。

「十二国記」シリーズの最後を飾る短編集です。終わってしまうのが名残惜しく、大事に読ませてもらいました。また、どこかで会えることを願いつつ…。



 

 

2010年9月20日 (月)

西の善き魔女 VI ~ 闇の左手 (荻原 規子)

「世界の果ての壁」の謎を追うルーンとフィリエル、ユニコーンを駆り竜退治に赴くユーシス。彼らが辿り着いた南の地には、東の帝国の侵略軍が―グラールの危機に、フィリエルは女王と対峙するため聖神殿へ乗り込む。賢者とは?吟遊詩人とは?わらべ歌や童話に隠された「世界」の秘密がついに明かされる。

南方でルーンと出会ったフィリエルは共に、異端の研究組織ヘルメス党に身を寄せる。一方、南を回り込んで侵攻してきたブリギオン軍。そのことを女王陛下の吟遊詩人が知っていたからには女王もご存知のはず。それなのに有効な手を打たないというのは何事かと、フィリエルは女王陛下に直訴することを決意します。直情型のフィリエルです。(笑)

そうしてアデイル、レアンドラ、フィリエルが女王から呼び出され、世界創生の秘密が明かされます。彼女たちが選んだ道は?

2010年9月19日 (日)

西の善き魔女 V ~ 銀の鳥 プラチナの鳥 (荻原 規子)

女王候補アデイルは「西の善き魔女の名において、ブリギオンの侵攻を止めた者をこの国の女王に」という課題を受け、親友ヴィンセントと共に侍女に化けて隣国トルバートへ向かいます。アデイルを待ち受けていた罠とは…? 長篇ファンタジー東方冒険篇!

今回はアデイルの冒険です。フィリエルだけでなく、アデイルも意外に行動力があることが判明します。ところが、アデイルは刺客に襲われ、そこをティガという傭兵に救われます。一方、ブリギオン帝国は西方のトルバートへ侵攻してくるはずが、なぜか南へ軍隊を進めていることがわかり、第4巻でフィリエルが目撃した事実とつながるわけです。

女王候補アデイルとレアンドラ、そしてフィリエル。この3人はそれぞれ性格も考え方も異なり、ちがう方向を目指していたはずなのですが、それが次第に交錯して…。グラール王国と彼女たちの運命はいかに?

2010年9月17日 (金)

8分音符のプレリュード (松本祐子)

吹奏楽部でフルートを奏でる秋山果南(あきやま かなみ)は、担任の新藤先生に憧れ、将来は教師になろうと、毎日黒板消しを買って出るような娘。そこへ波多野透子(はたの とうこ)という転校生がやってきます。ところが彼女はまったくクラスに馴染もうとしません。しばらくして透子は天才少女ピアニストとして有名だったのが、母親が運転する自動車で事故に遭い、手を怪我してしまったということがわかります。

透子は吹奏楽部への入部を勧められますが「興味ない」とつれない返事。それでも吹奏楽部がコンクールに向けて練習していた曲の編曲を手伝ってくれ、果南も彼女の才能に驚きます。指揮に関するあたりは「のだめカンタービレ」を思い出します。(笑)

果南が秋に透子に出会って春までの間の出来事を綴った物語です。特に大事件が起こるわけではないけれど、果南が日常の様々な出来事を通じて成長していく様子が描かれている、さわやかな一編です。

2010年9月16日 (木)

グラウンドの空 (あさの あつこ)

「バッテリー」の著者あさの あつこが贈る、新しい野球小説です。小学生のとき父親に夏の甲子園に連れていってもらい野球に魅せられ、中学で野球を始めたキャッチャーの瑞希は、先輩たちが卒業するとピッチャーがいなくなってしまうので困っています。そこへチームメイトの良治がピッチャーを見つけてくるのです。

転校生の透哉という少年が野球をやるらしいと聞いて、瑞希と良治は透哉を呼び出します。透哉の投げる球を受けた瑞希は感激。彼が入部してくれれば地区大会はもちろん全国だって狙えるはず。ところが透哉は対人恐怖症なのか、学校にすら出てこない。一体彼は過去になにがあったのか?

あさの あつこは登場人物を丁寧に描き、その心のうちを熱く静かに語ってくれます。人生の一部分を切り取って描かせたらすごく上手い。「バッテリー」が気に入った方は是非どうぞ!

2010年9月14日 (火)

黄昏の岸 暁の天 ~ 十二国記 (小野 不由美)

泰王驍宗は文州での反乱鎮圧に赴き、そのまま行方知れずとなってしまう。悲報を受けた泰麒はあまりの衝撃に大鳴動とともに姿を消した。戴国は王と麒麟を失い、偽王の圧制が始まる。将軍季斉は助けを求めるべく慶国へと騎獣を奔らせた。

もしも王が斃れたなら麒麟が次の王を選びます。麒麟が斃れたなら王も運命を共にし、蓬山で再び麒麟が生まれるのを待つことになります。しかし、王も麒麟も死んだわけではなく行方不明となるのは前代未聞。待っていても国は荒れるばかりで夢も希望もありません。

なんとかして季斉を助けたい景王 陽子ですが、戴国の王を探し出すためとはいえ、他国へ兵を連れて入ることは天の禁忌。それを侵せば景王も景麒も斃れてしまいます。景王は延王らと相談し、おそらく蓬莱へ飛ばされてしまったと考えられる泰麒を探し出すことに決めます。

国のため、民のためという切なる思いを何故天は聞き入れてくれないのか。季斉は叫びます。陽子は「天は自ら助ける者を助けるのだ」。重いテーマをどんどん読ませる素晴らしい小説です!

2010年9月13日 (月)

図南の翼 ~ 十二国記 (小野 不由美)

先王の没後、荒廃の一途を辿る恭国。豪商の娘、12歳の珠晶(しゅしょう)は王となるべく蓬山(ほうざん)を目指す。途中騎獣を騙し盗られながらもなんとか蓬山の麓にたどり着く。そこから先は妖魔の跋扈する地。果たして少女は麒麟の前に出ることができるのか。十二国供王誕生の物語。

黄海を渡り蓬山までの案内人兼ボディガードとして黄朱を雇います。彼は黄海で妖獣を狩ることを生業としており、宿で残りのひと部屋を取り合って成り行きから雇われたのです。12歳にしては「小賢しい」珠晶とはなにかと衝突します。依頼人を妖魔から守ることが任務とはいえ、他の道連れを省みない黄朱を「互いに助け合うべきでしょ」と珠晶は責めます。

草食動物が群れるのは、肉食動物に襲われたときに自分が助かる確率を上げるため。逆にいえば、他者を犠牲にして自分は助かるということ。300万人を救うために数十人を犠牲にすることは王であれば日常茶飯事ではないか。珠晶は悩みます。そして、馬車を仕立て大勢の従者をしたがえた者が妖魔に追われ徒歩の者を置き去りにしたとき、珠晶は単身歩いて戻ることを決意します。

「風の万里 黎明の空」で祥瓊が出会った恭王が珠晶です。あのときは幼いのに居丈高でしたが、その理由の一端がこの物語からわかってきます。また「東の海神 西の滄海」で登場した更夜にも会うことになります。さまざまな角度から描かれる「十二国記」がいろんな人物でつながっているのが興味深いですね。

2010年9月11日 (土)

西の善き魔女 IV ~ 世界のかなたの森 (荻原 規子)

ユーシスは、アデイルが止めるのも聞かず、隣国に出没する竜を退治する騎士としてグラールを出発。フィリエルはひそかに彼のあとを追う。北の辺境で生まれ育ったフィリエルが南方を目指す「西の善き魔女」シリーズ第4弾。

なんと竜退治です。いよいよもってお姫様ファンタジー? フィリエルの気が強いという点では「マインド・スパイラル」シリーズのレノーラに似ていますが、フィリエルのほうが現実味があります。また、SFっぽいところがあるのは「グイン・サーガ」に似ています。不可解なことをすべて魔法と片付けるのではなく、オーバーテクノロジーとして想像させてくれます。

女王試金石をもつフィリエルには(女王候補ではないものの)不思議なことが次々と起こります。冨も権力も拘泥せず、自分に素直に力強く進んでいくフィリエルに乾杯!

2010年9月10日 (金)

西の善き魔女 III ~ 薔薇の名前 (荻原 規子)

フィリエルは、幼馴染ルーンと自分の安全のため、女王候補アデイルとともに王宮へ上がる。華やかさの影には陰謀や駆け引きが渦巻いていたが、フィリエルは持ち前の勇気と行動力で道を切り開こうと奮闘する。一方、伯爵家の好意で王立研究所に入ったルーンはフィリエルに黙って姿を消してしまう。

予想はされたことですが、王宮もたいへんなところのようです。利権やプライドを賭けた暗闘が繰り広げられており、女王候補アデイルの味方としてはフィリエルも渦中の人となってしまいます。また、王宮内でも身の危険を感じたフィリエルは、ロウランド家のユーシスから婚約を求められます。婚約すればフィリエルはロウランド家の名前が守ってくれるわけです。しかし、ルーンはどうする?

と、波乱の展開の「西の善き魔女」シリーズ第3弾です。

2010年9月 8日 (水)

風の万里 黎明の空 (下) ~ 十二国記 (小野 不由美)

鈴の道連れの少年は、止水郷の郷長 昇紘の車に轢き殺される。だが、それを目撃した人たちは口をつぐんだまま。重税を課し、些細なことで死刑にしてしまう非道の郷長に復讐を誓う鈴は、密かに同志を得て蜂起の準備を手伝う。武器を運ぶ途中、祥瓊と出会い意気投合したふたりは再会を願います。一方、慶王 陽子は昇紘の黒幕に捕われた恩人を探して拓峰に向かう。各々の宿命を負った三人の少女が出会うとき、人々の希望である慶国が動き始める。「十二国記」シリーズ第4弾。

上下巻に分かれていても1巻と数えれば「十二国記」は全7巻。後半に突入です。

長く暗かった物語も、最後に陽子が采配をふるって悪の根を断ち、溜飲を下げることができました。これが「水戸黄門」であればオチが約束されているので安心して見ていることができますが「十二国記」では王が斃れることもあるので不安で仕方ありません。でも、だからこそ登場人物たちが困難を克服していく様に胸を打たれるのでしょう。

 

2010年9月 7日 (火)

風の万里 黎明の空 (上) ~ 十二国記 (小野 不由美)

傀儡でしかないことに思い悩む慶王 陽子、先王であった両親を殺され市井の暮らしに落とされた祥瓊、そして親に捨てられ海客となった鈴。この3人の少女が苦難を経て運命に引き寄せられていく様を描く。

陽子は自国の実態を知ろうと町に下ります。たとえ傀儡であっても王ですから、剣を振るうこともできれば、慶麒をはじめ心強い味方がいます。一方、王族の暮らしを奪われ苦汁を舐める中で(自分が失ったものを持っている)慶王を許せない祥瓊と、見知らぬ世界で言葉が通じないがために厳しい仙の暮らしに甘んじる鈴の様子はたしかに苦難といえますが、ふたりとも自分を哀れみ、他人を責め、周囲を思いやることがありません。他者との触れあいを通じて自らの不明に気付いていくふたり。

ここまで読み進んでくれば、すでにどっぷりと「十二国記」の世界に浸っているわけですが「風の万里 黎明の空」の上巻は読むのがつらかった。しかし、陽子はもちろん、祥瓊も鈴も与えられた運命を切り開いていってくれるはず。それを信じて下巻に進みましょう。

2010年9月 6日 (月)

カラフル (森 絵都)

死んだはずのぼくの前に天使が現われて「おめでとうございます、抽選にあたりました!」

生前犯した罪のために輪廻のサイクルから外されたぼくは再挑戦の機会を得た。自殺を図った少年、真(まこと)の体を借り、真として生活しながら1年以内に自分の罪を思い出さなければならないのだ。果たしてぼくの魂は救われるのだろうか?

臨終を告げられた10分後に生き返った真。涙を流して喜ぶ両親と冷静な兄。過去の記憶がないぼくが見知らぬ人間の体を借りて、真自身と周囲の人間たちの観察を続けるうち、とんでもないことがわかってくるのです。真が自殺したのもわかるような気がする…。しかし、ここでまた自殺するわけにもいかず。(苦笑)

 人は自分でも気付かないところで、だれかを救ったり苦しめたりしている。
 この世があまりにカラフルだから、ぼくらはいつも迷ってる。
 どれがほんとの色だかわからなくて。
 どれが自分の色だかわからなくて。

人生はきれいごとでは済まないけれど、人間も捨てたもんじゃない。そんなふうに思わせてくれる物語です。

2010年9月 4日 (土)

空色勾玉 (荻原 規子)

村娘狭也の平和な日々は祭りの晩に破られた。「鬼」が来て手渡した「水の乙女の勾玉」…憧れの「輝」の宮で待っていた絶望…そして神殿で縛められて夢を見ていた輝の末子稚羽矢との出会いが、狭也を不思議な運命へと導く…。神々が地上を歩いていた古代日本、光と闇がせめぎあう戦乱の世を舞台に織り上げられた、話題の日本神話ファンタジー。

地上を治める光(輝)と、地下を治める闇のそれぞれに王が居て、反目して争いもすれば惹かれあってもいる古代日本が舞台です。主人公の狭也(さや)は闇の一族でありながら輝の月代王に惹かれ、誘われるままに輝の宮へ采女として入ります。そこで稚羽矢(ちはや)と出会い、闇の一族の宝である大蛇の剣を目にする。その剣は輝の一族を滅ぼす力を持つため稚羽矢に封じさせているのです。

狭也は月代王が本当は自分を求めてはいないことに気付いて闇の一族のもとへ走ろうと考えます。一方、兄姉に閉じ込められている稚羽矢を外に連れ出そうとするうち、稚羽矢も狭也と共に行くと言い出します。稚羽矢は輝の末の御子。不死の身であって飲み食いすら必要ありません。自らも理解していない力を秘めていて、その力を制御することもできず、どこでいつ破裂するか知れない「爆弾」なのです。

狭也のまっすぐで飾らない気性と行動力、そして稚羽矢の自我がすこしずつ芽生えていく様子が生き生きと描かれます。一度は読まれることをお勧めします!

2010年9月 3日 (金)

西の善き魔女 II ~ 秘密の花園 (荻原 規子)

幼なじみのルーンの安全を守るため、フィリエルは伯爵と女王候補アデイルに力を貸すことを約束。貴族の娘としてふるまうのに必要な教育を受けるべく、修道院附属学校に入学する。しかし平和に見えた学園は、乙女たちの陰謀が渦巻く場所。フィリエルは初日から生徒会の手荒い歓迎を受けることに…。「西の善き魔女」シリーズ第2弾。

修道院附属学校は表向きは貴族のお嬢様学校ですが、実は陰謀うずまくとんでもない場所。フィリエルは大いに戸惑いますが、それでも強気な彼女は立ち向かっていきます。フィリエルもたいしたものですが、アデイルも一筋縄ではいかない傑物。さすが女王候補というべきでしょうか。(笑)

2010年9月 2日 (木)

西の善き魔女 I ~ セラフィールドの少女 (荻原 規子)

セラフィールドの荒野の天文台に篭って研究三昧の父と、その弟子ルーン。15歳になった少女フィリエルは舞踏会に向かうが、身に着けていった亡き母の首飾りが王族の目に留まり…。一方、異端とされる天文研究が元となり天文台が何者かに襲われ、ルーンがさらわれてしまう。それでもくじけずルーンを救い出そうと走り出すフィリエル。「西の善き魔女」シリーズ第1弾!

初めての舞踏会で王子様とダンスをして…まさにシンデレラストーリー。かと思いきやフィリエルは女王の後継者争いに巻き込まれていきます。ぶっきらぼうな幼馴染ルーンとの関係も目が離せず、女の子が憧れる物語ではないでしょうか。でも、老若男女を問わずお勧めします!

  1. セラフィールドの少女
  2. 秘密の花園
  3. 薔薇の名前
  4. 世界のかなたの森
  5. 銀の鳥 プラチナの鳥
  6. 闇の左手
  7. 金の糸紡げば
  8. 真昼の星迷走

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