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2010年8月 6日 (金)

後宮小説 (酒見 賢一)

「腹上死であった、と記載されている。腹英三十四年、現代の暦で見れば一六〇七年のことである」

このように書き起こされるのは、史家の視点で綴られる素乾国の後宮のお話。とくに宮女の「銀河」を中心に進んでいきます。先帝の崩御に伴い、新帝の後宮に田舎娘の銀河が入宮することになり、女大学で半年間(帝王の子を宿すため)性戯を教え込まれ、みごと正妃の座を射止めた。ところが、折りしも反乱軍が城に向かってきており、銀河は後宮を守るべく反乱軍に立ち向かうのだった。第一回ファンタジーノベル大賞受賞作。

なんとも人を食った絵空事を淡々と第三者の視点で書いたものです。銀河が後宮に入るときに通ったトンネルを「たると」と呼び、それは膣(産道)を意味するとか、女大学で「男と女は子宮の有無で区別される」といったり、結局のところ、後宮そのものが子宮を模していることがわかります。ただ、あきれることはあっても嫌悪感はありません。なかなかたいした腕前の作家による、面白い小説だと思います。

「後宮小説」を原作として「雲のように風のように」というアニメも制作されました。著者はアニメの制作には関わっていないそうですが、本書のあとがきに控えめに意見を述べています。

  • 「たのむわ…菊凶」
  • 「王斉美をだせ」
  • 「幻影達たちが遊郭で遊びまくるところは入れて欲しかった」

菊凶というのは女大学の若い助教授みたいな役どころで宮女たちに人気がありますが、キャラが軽いのです。性的な表現は抑えてあるので子供でも楽しめますが、それではどうしても原作の妖しい魅力を伝えきれません。大人が洒落として楽しむ小説「後宮小説」と、子供が楽しむ歴史アニメ「雲のように風のように」という位置づけでいかがでしょうか。

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