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2010年6月

2010年6月30日 (水)

ノーチラス号の冒険 4 ~ 恐竜の谷 (ヴォルフガンク・ホールバイン)

極北地方を航行していたノーチラス号は救難信号を受信する。救助のために氷の島へ上陸したマイクたちの目の前に現れたのは、一億二千万年前に絶滅したはずの肉食恐竜アロサウルスだった。恐竜の目をかいくぐり、島を探索するマイク達は、ひとりの少女と出会う。少女は言う。「『竜』がみんなを連れていったの……」。不思議なジャングルの島を舞台に、マイクと仲間たちの救出作戦がはじまる。海洋冒険ファンタジー第4弾!

極北の島に上陸したのに、不思議な霧を抜けて奥に進むとそこは巨大なシダが生い茂るジャングルだった。セレナいわく、その島はアトランティスの王となる者が挑む地だという。無事に戻った者が王になるというが、戻り方は知らない、と。

一億二千万年前に絶滅を免れて独自の進化を遂げた竜人が少女の仲間を捕えていたのです。マイクたちは彼らを無事助け出すことができるでしょうか。

2010年6月29日 (火)

妻は、くノ一 (風野 真知雄)

平戸藩の御船手方書物天文係の雙星彦馬は夜空の星が好きだという変わり者。そんな彦馬のもとに美しい嫁、織江がやってきた。ところが、わずかひと月で織江は失踪してしまう。じつは彼女は平戸藩の密貿易を怪しんだ幕府が送り込んだ「くノ一」だった。そうとは知らず妻を捜しに江戸へ赴く彦馬だった。「妻は、くノ一」シリーズ第1弾!

現在までに刊行されているのは次のとおりです。

  1. 妻は、くノ一
  2. 星影の女 妻は、くノ一 2
  3. 身も心も 妻は、くノ一 3
  4. 風の囁き 妻は、くノ一 4
  5. 月光値千両 妻は、くノ一 5
  6. 宵闇迫れば 妻は、くノ一 6
  7. 美姫の夢 妻は、くノ一 7

おっとりした雙星彦馬の性格が面白いのと、奉行所の同心から探索の手伝いを頼まれたりと、捕り物の醍醐味もあります。彦馬は織江を見つけ出すことはできるのか。ひと味ちがった時代小説です。

2010年6月28日 (月)

ノーチラス号の冒険 3 ~ 深海の人びと (ヴォルフガンク・ホールバイン)

「ノーチラス号の冒険」シリーズ第3弾。巨大クラゲにノーチラス号ごと捕えられ連れて来られたのは海底ドーム内の港。そこには新旧様々な船が係留されていた。海底の世界には温和な人間たちと魚人たちが住んでおり、マイクたちはその争いに巻き込まれてしまう。アトランティス最後の王女セレナは魚人だちを魔力で滅ぼそうとする。事態を収拾すべく、黒猫アスタロスと怪しげなピラミッドに入るマイクが見たのは…。

波乱万丈の冒険譚の主人公はマイクですが、黒猫アスタロスがその相棒といった感じになってきました。アスタロスは本来セレナの護衛だったのですが「もうその必要はない」とか。海底ドームで出会った雌猫に気に入られたアスタロスが逃げ回るのが愉快です。彼は猫の容姿をしていても「けもの」ではないようです。

「長老」とは何者か。セレナの魔力はどこから来たのか。そのあたりが今回のポイントになります。さて、マイクたちは海底ドームからノーチラス号で脱出できるのでしょうか。

2010年6月26日 (土)

武士道シックスティーン (誉田 哲也)

宮本武蔵を尊敬する剣道ひと筋の香織は、中学最後の横浜市民大会で、無名選手の早苗に負けてしまう。敗北の悔しさを忘れられない香織と、勝ち負けにこだわらず「お気楽不動心」の早苗。二人は同じ高校に進学して剣道部で再会を果たす。

鹿男あをによし」 (万城目 学)で女子高校の剣道の烈しい試合を見て面白かったので、今回まるごと剣道の小説を手に取ってみました。好対照のふたりの物語であることは目次を見ただけでわかります。

  1. 気剣体
  2. 長く構えましょう
  3. 兄の仇
  4. それは般若ですか
  5. 兵法者
  6. いい感じです
  7. 敵の正体
  8. 真面目にやってます
  9. 下克上
  10. 呼び捨ては苦手かも
    (以下、略)

こういう洒落っ気は好きです。奇数章の勇ましいタイトルが香織目線、偶数章のおっとりしたタイトルが早苗目線で語られます。とにかく香織は「勝つか負けるか」「斬るか斬られるか」ということにしか眼中にありません。しかし「自分は世界最強の女剣士を目指すのか」と悩むことになって…。

続刊「武士道セブンティーン」「武士道エイティーン」と続きます。(もちろん続けて読んでみるつもりです)

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2010年6月25日 (金)

はやぶさ新八御用旅 ~ 東海道五十三次 (平岩 弓枝)

隼新八郎は主君根岸肥前守より京へ祝物を届けるよう命を受け江戸を発ったが、じつは「身分を国許へ向かった大名の姫君をお護りせよ」という密命を受けていた。東海道を西進するうち、五人の侍が斬りかかってきた。「はやぶさ新八御用旅」シリーズ第1弾。

  1. 東海道五十三次
  2. 中仙道六十九次
  3. 日光例幣使道の殺人
  4. 北前船の事件

東海道を下る旅情緒のうちに謎と人情を絡めた語り口はさすが「御宿かわせみ」の平岩 弓枝。安心して読ませてもらいました。「大名の姫君」について詳しいことを聞いていない新八郎は誰が姫君なのかわかりません。途中、事件に巻き込まれ、意外な結末に…。

2010年6月24日 (木)

クビキリサイクル ~ 青色サヴァンと戯言遣い (西尾維新)

日本海に浮かぶ孤島に隠れ棲む財閥令嬢が科学、絵画、料理、占術、工学、5人の天才女性を招待したところ、密室連続殺人が起こる。工学の天才美少女「青色サヴァン」こと玖渚 友(くなぎさ とも)とその冴えない友人「戯言遣い」いーちゃんは「天才」の凶行を証明終了(Q.E.D.)できるのか?

「化物語」「傷物語」「偽物語」のあと、それらより先に書かれた「戯言シリーズ」1巻目「クビキリサイクル」を読んでみました。アクの強いキャラが揃っていて会話が楽しい。しかし、なにが本当でなにが嘘なのやらさっぱりわからん。そうしているうちに事件は起こります。組み立てとしてはミステリーで、最後にどんでん返し(種明かし)もあります。

1冊の本を読み終えるという「結果」よりも、一字一句を読む「過程」を楽しむ本でした。「化物語」よりも濃い内容を期待される方にお勧めします!

2010年6月22日 (火)

ノーチラス号の冒険2 ~ アトランティスの少女 (ヴォルフガンク・ホールバイン)

「ノーチラス号の冒険」シリーズの第2巻。ノーチラス号をドイツ海軍のヴィンターフェルト艦長に奪われるくらいなら自分たちで破壊しようとするけれど、戦艦レオポルド号と衝突して水深200mの岩棚で動けなくなる。損傷個所を確認するため外へ出たマイクたちは奇妙なドームを発見。中に入ると片目の黒猫とガラスケースで眠る少女がいたのです。

「アトランティスの少女」という副題からわかるように、その少女はアトランティスの王女であり、黒猫は彼女を守っていたのです。しかし、追ってきたヴィンターフェルトに王女をさらわれ、ノーチラス号も拿捕されてしまいます。さて、マイクたちの運命は?

スリリングな展開に目が離せず、一気に読んでしまいました。じつは王女はとんでもない力を秘めていて…。それは読んでからのお楽しみ!

2010年6月21日 (月)

偽物語(下) (西尾維新)

主人公 阿良々木 暦の「ちいさいほうの妹」 阿良々木 月火がその身に取り込んだ怪異の物語「つきひフェニックス」。…なのですが「おおきいほうの妹」の話に始まり、化物語の登場人物が出てきたりと、月火の話は後半に入ってからようやく始まります。仲がいいのか悪いのかわからない兄妹ですが、比較的あっさりと解決してしまったようです。つまり、バトルパートよりもギャグパートが長いわけですが、それはそれで面白いのです。

▼八九寺真宵と
「●●●文庫あたりですかね」
「伏字にすんな! やましいことなんかねえよ!」
「富士見ファンタジア文庫あたりですかね?」
「伏字にしてくださいお願いします!」
「ところで乾拭木(からぶき)さん」
「確かに僕は明日、神原の部屋の掃除をする予定だけども、だからと言って別に掃除好きの掃除マニアってわけじゃないんだから、乾いた布での掃除法みたいな名前で僕を呼ぶな。僕の名前は阿良々木だ」
「失礼。噛みました」

▼忍野忍と
「忍ってばすっかり、ギャグ漫画とかに出てくる、駄目なタイプの吸血鬼になっちゃってるよな。語尾がザマスって感じ」

「うむ。太陽は儂の敵じゃ」
「敵か」
「いつか倒す」
「………」
スケールでけえ!

このあと「傾物語」「猫物語」が刊行予定です。ファンの方はお楽しみに!

2010年6月19日 (土)

ノーチラス号の冒険 1 ~ 忘れられた島 (ヴォルフガンク・ホールバイン)

16歳のマイクはクリスマス休暇前、親友パウルの父、ドイツ海軍のヴィンターフェルト艦長に誘拐されてしまう。窮地から救い出してくれたインド人のシンは死んだ父親の遺産がある「忘れられた島」のことを告げる。大国が狙う父の遺産とは? 波乱の海洋冒険ファンタジーの幕開け!

これはジュール・ベルヌの「海底2万里」をベースにホールバインが創作した物語。ネモ船長の息子マイクは「忘れられた島」に眠るノーチラス号に無事乗り込むことができるでしょうか。

全12巻のタイトルを以下に挙げます。

  1. 忘れられた島
  2. アトランティスの少女
  3. 深海の人びと
  4. 恐竜の谷
  5. 海の火
  6. 黒い同胞団
  7. 石と化す疫病
  8. 灰色の監視者
  9. 失われた人びとの街
  10. 火山の島
  11. 氷の下の街
  12. ノーチラス号の帰還

冒険小説がお好きな方はもちろん、「海底2万里」ファンにもお勧めします!

2010年6月18日 (金)

ウォーリアーズ II ~ 真夜中に (エリン・ハンター)

森に危機が迫っていた。スター族からのお告げを受けた4匹の猫と2匹の友達の猫が、部族をこえて旅に出た。第1期「ウォーリアーズ」の主人公ファイアスターの子供たちが命をかけて活躍する、手に汗握るシリーズ!

4部族の猫たちは平和に暮らしていたのですが、そこへ人間の開発の手が伸びてきたのです。森に重機が入り、木が切り倒され、猫が捕らえられる…。スター族のお告げに従い、6匹の猫たちが命がけの旅に出ることになります。

第2期も全6巻ですが、現在までに刊行されているのは以下の5巻です。

  1. 真夜中に
  2. 月明り
  3. 夜明け
  4. 星の光
  5. 夕暮れ

部族猫は自分の部族に対する忠誠を求められ、他部族に対する敵愾心が強い。旅の仲間はその恩讐を乗り越えることができるのかどうかが見所のひとつでしょう。猫たちの運命は一体どうなるのか、目が離せません。

2010年6月17日 (木)

ウォーリアーズ ~ ファイヤポー、野生にかえる (エリン・ハンター)

飼い猫のラスティは、自分の中に、野生の猫への憧れがあることを感じていた。そして、ある日、森の中へと入って行き、野生の猫と戦うことになった。それを見ていた野生猫の戦士が、自分たちの部族へ、ラスティを誘う。野生猫になったラスティは、ファイヤポーという名前をもらい、愛と裏切り、友情と戦いの世界に翻弄されることになる。

猫たちは4つの部族(サンダー族、リヴァー族、シャドウ族、ウィンド族)に分かれ、各部族には族長、副長、戦士、戦士見習い、看護猫、看護猫見習い、長老といった階級(役割)と掟が定められています。4つの部族の猫が天に召されるとスター族の仲間入りをして、生きている猫たちを見守ってくれると信じられています。

野生猫となったファイヤポーは戦士になる際、族長からファイヤハートという戦士名をもらいます。「ウォーリアーズ」第1部の全6巻はサンダー族のファイヤハートを中心に語られます。

  1. ファイヤポー、野生にかえる
  2. ファイヤポー、戦士になる
  3. ファイヤハートの戦い
  4. ファイヤハートの挑戦
  5. ファイヤハートの危機
  6. ファイヤハートの旅立ち

人間からみると小さなコミュニティですが、部族間の対立など、そこで起こることは人間社会の縮図のよう。猫好きの方だけでなく、ファンタジー好きの方にもお勧めします。

2010年6月15日 (火)

428 ~ 封鎖された渋谷で (Wii)

200X年某日、始まりは女子大生誘拐事件だった。雑踏に紛れた小さな事件が、やがて世界を揺るがす危機に代わる。道路、電車、報道…すべてが断たれていく街の中であなたは選択を迫られる。かつて渋谷最大のチームを率いた男、新米刑事、熱血フリーライター、ウィルスの研究者、ネコの着ぐるみ…さまざまな主人公の視点を切り替えてドラマを読み進めていってほしい。任天堂「みんなのおすすめセレクション」に選ばれた新感覚サウンドノベル。

姉マリアの身代金5000万円の入ったアタッシュケースを持つ大沢ひとみが渋谷駅前に立っているところからドラマは始まります。午前10時から午後8時まで、5分刻みでストーリーが展開し、それぞれの登場人物の視点を切替えながら互いの連鎖をたぐりつつ物語を読み進めていくゲームです。

昔、パソコン「Apple ][」 にテキストアドベンチャーゲームというのが登場し、画面に表示される状況説明に対してGO WESTとかOPEN DOORといったコマンドを入力してストーリーを辿っていくものでした。それにグラフィック(絵)がついて、その絵が動くようになって進化してきたものに、テレビドラマ「24~TWENTY FOUR」のような複数人のリアルタイム性を加えたものがこのゲームというと、説明が大雑把すぎるでしょうか。

実写の静止画(写真)をバックに「小説」を読み進める中で時折(その主人公の行動を決める)選択を迫られます。その選択次第でBAD ENDを迎えることもあれば、他の人物に対して影響を与えます。ですから、物語が行き詰らないようにすべての登場人物の物語を並行して読み進め、行き詰ったところは過去に戻って選択を変えたりすることになります。その選択もどれを選ぶべきかを理詰めで判断できるわけではなく、物語の未来は見えないので、どうしても試行錯誤せざるを得ず、意外に時間がかかります。

想像以上に凝ったストーリーで楽しめました。一定の条件を満たすとボーナスシナリオを読むことができます。そのひとつが実写ではなくアニメベースで、それを原作にしたアニメ「CANAAN」(カナン)がありますので興味のある方はごらんください。カメラマンの大沢マリアとライターの御法川(みのりかわ)が上海に取材に出向き、マリアはカナンと再会します。

本(小説)がお好きな方は是非「428 ~ 封鎖された渋谷で」をお試しください!

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2010年6月13日 (日)

新・御宿かわせみ (平岩 弓枝)

江戸時代末期、東吾は行方不明となり、畝源三郎も命を落とすが、麻太郎、花世、源太郎たちはたくましく成長し、新たな時代を確かな足取りで歩き出す。「御宿かわせみ」シリーズ第2部、明治編スタート。

登場人物たちがいきなり世代交代していて驚いたというかショックでした。たしかに第1部「御宿かわせみ」では終盤、麻太郎、源太郎、花世、千春たちが成長しているのは実感していましたが、神林東吾が乗っていた船が沈んで行方不明、麻生家に賊が押し入り、源右衛門、七重、小太郎、奉公人が惨殺され、その探索に当たっていた畝源三郎も何者かに短銃で撃たれて絶命したのです。時代小説って、あっさり人が死んでしまうと感じるのはわたしの勘違いでしょうか。東吾はまだ死んだと決まったわけではありませんが、思い入れのあった登場人物が突然いなくなってしまうのは残念です。

さて、麻生小太郎がイギリスに留学する直前に命を落としたため、父の宗太郎が神林麻太郎に代わりに留学を勧め、5年後に日本に帰ってきたところから話は始まります。明治になり、社会は大きく変化しました。太陰暦から太陽暦に変わり、日月火水木金土の七曜制になり、キリスト教の布教も許され、奉行所は廃止され東京警視庁が設立され、外国の服装や文化が流れ込んできました。そういった変化を歴史的事件からではなく、庶民の視点から描くという意味でも興味深いものがあります。

現在、つぎの3巻が刊行されています。 

  1. 新・御宿かわせみ
  2. 華族夫人の忘れもの
  3. 花世の立春

麻生家に押し入った下手人は彼らの手できっと明らかにされるはず。明治の世をジュニアたちがたくましく生きていく様子を楽しませていただきます。

2010年6月11日 (金)

樹上のゆりかご (荻原 規子)

都立高校2年の上野ひとみは合唱祭当日のパンの売り子を頼まれたが、あるパンにカッターナイフの刃が入っていたことがわかり、その後、生徒会執行部と関わりをもつようになる。元は男子校だった進学校に女子は全体の3分の1。その学校には「名前のない、顔のないもの」が巣くっているという。

主人公の女の子の高校生活をリアルに、そしてミステリアスに描く小説です。「樹上のゆりかご」というタイトルは次のマザーグースからとられています。

Hush-a-bye, baby, on the tree top,
When the wind blows the cradle will rock;
When the bough breaks the cradle will fall,
Down will come baby, cradle, and all.

マザーグースだけでなく、オスカー・ワイルドの戯曲「サロメ」の解釈について論じられたりと(高校生らしい?)知的な会話もあります。中学生の上野ひとみが主人公の「これは王国のかぎ」の続編という位置づけのようですが、ストーリーは独立しているので単独でも楽しめます。

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2010年6月 9日 (水)

偽物語(上) (西尾維新)

化物語」の後日譚。阿良々木 暦の二人の妹「ファイア・シスターズ」が怪異(化物)に立ち向かう。「化物語」の登場人物たちも健在。阿良々木 火憐(あららぎ かれん)の「かれんビー」。今回の怪異は「蜂」です。

「化物語」「傷物語」と読んできたので西尾維新の語り口にも慣れてきて、余裕をもって楽しめるようになりました。相変わらず言葉遊びが効いています。

「どうせ暇なんだろ?」
「蝦ではあるかもね」
「並べて書かなきゃ似てるって絶対に気付けないような漢字を間違うな」

「エアコンなんて昔はなかったんだから……心頭滅却すれば火もまた鈴虫だよ」
「火から生命を作り出すとは、それは斬新な錬金術だな」
神の域じゃねぇか、それ。

「震えてなんかいねー。もし震えているんだとすれば、それは土砂震いだ」
「そんな自然災害のような震え方をするとは、愉快な娘だ」

登場人物はみんな突っ込み上手です。(笑)

2010年6月 7日 (月)

海の底 (有川 浩)

春の桜祭りでにぎわう横須賀米軍基地を突如海から現われた巨大甲殻類が襲った。警察官がもつ武器などでは成すすべもなく食われてしまう。海上自衛隊の潜水艦に逃げ込んだ自衛官2名と子供たち13名の運命は?

塩の街」「空の中」に続く有川 浩の「自衛隊三部作」のひとつ「海の底」です。体長が1~3mの「ザリガニ」が集団で人間に襲いかかってくるもので警察や機動隊でさえ撃退できません。陸上自衛隊の出動(武器使用))には政府の決断が必要だし、米軍も基地を蹂躙されて黙っているはずがない。政治的駆け引きと現場指揮者の采配。前者のまどろっこしさと後者の思い切りの良さが対照的。

主舞台は潜水艦「きりしお」内部です。幹部実習生の夏木と冬原が13人の子供たちの世話をするのですが、ひとりだけ高3の女の子がいました。最年長なので頼りになるものの、なにやら子供たちの間には歪んだものが存在し、諍いが絶えません。夏木と冬原コンビは「図書館戦争」の堂上と小牧を彷彿とさせますが、順番からいうと「海の底」のほうが先ですね。この自衛官コンビのやり取りも愉快です。最後には「ベタ甘」も登場しますのでご期待ください。

それにしても「海の底」ではなく「海の外」の話が延々と続きます。潜水艦も全く動きません。それについては作者もあとがきで「海の底(から来た奴ら)ということで一つ」と書いているのでよしとします。(笑)

「自衛隊三部作」の中ではこの「海の底」がイチオシです。泣けます!

2010年6月 6日 (日)

傷物語 (西尾維新)

前作「化物語」の前日譚である「こよみヴァンプ」収録。主人公 阿良々木 暦がなぜ「吸血鬼もどき」になってしまったのかが明かされる。

「化物語」で、怪異の専門家「忍野メメ」が仮の棲家としている学習塾跡の廃墟ビルに8歳くらいの少女が膝を抱えて座っているけれど、ヴァンパイアだということ以外語られず気になっていました。

今回も言葉遊びが盛りだくさん。たとえば、動揺した主人公が「残念ながら、全く心当たりがないんだけど」というセリフを左右反転、裏返して印刷して「声が裏返っていた」と続けたり、「しかし、いずれにしても僕の立ち位置からの視点で見たら、廿いんだよね」「にじゅういん?」「あ、違う、甘い」と漢字で遊んでみたり、「危ない、危ない、惚れちゃうところだった」「掘れちゃうとこって、温泉とか石油とか?」と突っ込んだりとか。こういった活字遊びが面白い。

また芸能ネタもあります。「どうしてこんな時間にひとりでGメン'75みたいに歩いてるの?」「ひとりでGメン'75みたいに歩くのは無理だ」。とても高校生の突っ込みとは思えません。(笑)

マンガやアニメなど視覚に訴えるメディアが増えても「本も面白い!」と思えるものがあれば子供たちも活字から離れることはないでしょう。

2010年6月 5日 (土)

3001年 終局への旅 (アーサー・C・クラーク)

「2001年宇宙の旅」でHAL9000によって宇宙船ディスカバリー号から放逐された副長フランク・プールが冷凍状態で救助され蘇生されたのは1千年後だった。驚くべき科学の進歩に戸惑いながらも適応に努めるうち、ゴライアス号のチャンドラー船長からガニメデへの旅に誘われる。かつて木星という名で知られていた世界にやり残した仕事があるのだった。「2001年宇宙の旅」から「2010年宇宙の旅」「2061年宇宙の旅」と続くシリーズ完結編。

「2001年宇宙の旅」はスタンリー・キューブリックがアーサー・C・クラークの協力を得て映画を製作し、その後小説として発表されました。映画は1度見ただけでは理解できず何度か見た記憶があります。宇宙服で船外活動中のフランク・ブールがHALによって真っ暗な宇宙空間に放り出されたときの絶望感はよく覚えています。それがまさか生き残ることになろうとは!

木星へ向かったプールは、モノリスによって禁断の地とされた衛星エウロパへの着陸を試みる。そこにデイブ・ボーマンが「存在」していると考えたから。果たしてプールの呼びかけに応じた。「聞こえるよ、フランク。こちらはデイブだ」。

かつて未来だった「2001年」が過去となり、「2010年」が現在となり、いつか「3001年」も過去になったと人類が地球で思うことがあるのかどうか。歴史は繰り返す~宇宙の悠久の時の流れに思いを馳せながら「オデッセイ」シリーズを読み直してみるのも一興ではないでしょうか。

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2010年6月 3日 (木)

陽気なギャングが地球を回す (伊坂幸太郎)

嘘を見抜く名人、天才スリ、演説の達人、精確な体内時計を持つ女。この4人の銀行強盗が「売上」を別の現金輸送車襲撃犯に奪われてしまった。取り戻すべく動き出すと死体は出てくるわ、仲間の息子が何者かに狙われるわ...。映画化もされた話題作。

伊坂幸太郎は初めて読みましたが、テンポがいいのと、個性的で「陽気なギャング」たちは愉快でした。拳銃は持っているけれど、あくまで威嚇用。といいつつ、スイッチが入ると躊躇なく引き金を引きそうなところが怖い連中です。(笑)

2010年6月 1日 (火)

化物語 (西尾維新)

ある日、高校の階段で阿良々木 暦の上から落ちてきた少女、戦場ヶ原ひたぎにはほとんど体重がなかった。怪異(化け物)と関わりをもつ少女たちと出会う阿良々木 暦の体験を描く新感覚ホラー。

このブログでこれまでご紹介してきた本とはすこし異質ですが、ライトノベルは大学、高校の息子たちも好きなので以前からいろいろ読んでいます。「化物語」はその中でも異色。ライトノベルの多くは文庫本なのですが、これはソフトカバー本を(辞書のように)ケースに入れてあり、ハードカバー並みの価格になっています。しかも「化物語」は上下巻に分かれています。これは次男から借りて読みました。(笑)

個性的な登場人物たちの掛け合いが面白い。ずいぶんマニアックな突っ込みが続けられる場面もあり、このテンポに慣れると快感になってきます。阿良々木 暦は戦場ヶ原ひたぎと付き合うようになるのですが、八九寺 真宵(はちくじ まよい) との掛け合いが愉快です。

目先の変わった小説を読んでみたい方にお勧めします。

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