2018年10月16日 (火)

闇の虹水晶 (乾石智子)

闇の虹水晶 (創元推理文庫)

闇の虹水晶 』 は、人の感情や病気などの「気」から石を作り出す力を持つ創石師ナイトゥルが主人公。彼は「その力、使えばおのれが滅び、使わねば国が滅びよう」という呪いを受けています。家族を殺した敵国に仕えることになったナイトゥルは...。

本格ファンタジーと言われるだけあって、読むのにパワーが要ります。それでも時々読みたくなるのです。

お勧め度:★★★☆☆

2018年10月13日 (土)

星をつなぐ手 桜風堂ものがたり (村山早紀)

星をつなぐ手 桜風堂ものがたり

星をつなぐ手』は『桜風堂ものがたり 』の続編。前作を読んでからお楽しみください。

序章 白百合の花
第一話 夏の終わりの朝に
 幕間1 カーテンの向こう
第二話 遠いお伽話
 幕間2 ケンタウロスとお茶を
第三話 人魚姫
 幕間3 Let it be
 幕間4 神様の手
終章 星をつなぐ手

冒頭、人気作の新刊が一冊も届かないと知った月原一整は慌てます。そこへ銀河堂書店のオーナーから呼び出しを受けて...。

欠けている部分に、あたかも用意されていたかのようにピースがハマっていくストーリー。予想外の展開はないから安心して読むことができます。誰かが怪我したり傷ついたりするんじゃないかとドキドキ、ハラハラするのは心臓に悪いという方には、お伽話のように沁みると思います。

お勧め度:★★★★★

2018年10月 8日 (月)

名古屋で文楽 義経千本桜(道行初音旅) 新版歌祭文(野崎村の段) を観てきました

2018年10月5日に名古屋市芸術創造センターで行われた文楽公演(夜の部)を観てきました。

中日文楽がなくなって、わたしが知る限り、名古屋市での文楽公演はここだけになりました。そのおかげで満員御礼。2階席のうしろのほうなので舞台が遠いけれど、双眼鏡持参なのでダイジョーブ。

B1

「義経千本桜」は初めて。舞台背景は桜が満開です。「道行初音旅」って有名らしいけれど、どんなものかと思ったら、艶やかで賑やかなミュージカルでした。(笑)

静御前は勇ましいイメージがあったけれど、ここではお姫様。静御前がもつ初音の鼓にされた両親を追ってきた小狐が(って、そうそう、そういう話がありましたっけ)義経の忠臣・佐藤忠信に化けて、義経がいる吉野山へ向かうのでした。

太夫3人が登場人物を謡い分け、三味線カルテットが盛り上げます。舞台左手に字幕装置が立っていますが、ストーリーはどうでもよくて、謡と人形と三味線の世界を楽しみます。途中、静御前が投げた扇を、佐藤忠信がパッと受け取るシーンがあり「え?」。一瞬、なにが起こったのかわからず「おぉ、すごーい。サーカスみたい!」。文楽って時々サプライズがあって楽しい。

B2

15分の休憩をはさんで「新版歌祭文」は「野崎村の段」。床はいつもの太夫と三味線ひとりずつに戻って「あぁ、これだ」。太夫が複数の登場人物のセリフを謡い分けます。

久松とふたりの娘の義理と愛情の駆け引き。丁稚奉公先の油屋のお嬢さん・お染めと、義父・久作の娘・おみつ。久作が久松とおみつの祝言を挙げさせようとしているところにお染めが現れ、おみつが邪険に追い払おうとするのですが、席を外した隙にふたりが会ってしまい...。

いちばんうしろの席から観ていて「やっぱり(能よりも)文楽のほうが人気があるんだな」。能がいちばん地味で、文楽より派手なのが歌舞伎。文楽は面白いけれど、目のやり場に困ります。字幕を見ていると舞台が見れない。床を見ても人形から目が離れる。とかく疲れます。字幕を頼らないのが理想なのですが、そのためには同じ演目の2回目以降でないとむずかしい。

名古屋では、能は毎月なにかしら舞台があるけれど、文楽は年に一度。大阪の国立文楽劇場まで足を伸ばせばチャンスが増えるけれど、あそこの椅子はお尻が痛い。普段は能、たまに文楽、いつかは見たい御園座歌舞伎ってね!

2018年10月 5日 (金)

花だより みをつくし料理帖 特別巻 (高田郁)

花だより みをつくし料理帖 特別巻
花だより』は「みをつくし料理帖」シリーズ完結後の後日譚。澪が大坂に戻ったあとの物語。うれしくて即購入しました。

1. 花だよりー愛し浅蜊佃煮
2. 涼風ありーその名は岡太夫
3. 秋燕ー明日の唐汁
4. 月の船を漕ぐー病知らず
 巻末付録:澪の料理帖
 特別付録:みをつくし瓦版

1話目は江戸のつる家の店主・種市が大坂の澪に会いに行くと言い出し、2話目は、御膳奉行・小野寺数馬が娶った乙緒視点。3話目はあさひ太夫の名を捨て、生家の再建を果たした野江。4話目が澪と源斉夫婦の奮闘を描きます。

やっぱり「みをつくし料理帖」は善いなぁ。ありがとうございました!

お勧め度:★★★★★

2018年10月 1日 (月)

師弟の祈り 僕僕先生: 旅路の果てに (仁木英之)

師弟の祈り 僕僕先生: 旅路の果てに

師弟の祈り』は「僕僕先生シリーズ」完結編。美少女仙人・僕僕先生と王弁の長かった旅も終わろうとしています。

神は人を滅ぼそうとします。それは天地創造後の黄炎大戦のように、まさにこの世の終わり。僕僕先生と王弁はどう立ち向かうのでしょうか!?

そのふたりは仲良しでいい雰囲気なのです。王弁も慌てないし、僕僕先生も照れ隠しをしません。かつての旅の仲間もふたりの変わりように気づいて、驚くと同時に祝福してくれます。

しかし、人の世は争いや滅びと無縁ではいられないようで悲しくなります。お気に入りのシリーズが完結して嬉しい反面、寂しい。

お勧め度:★★★★★

2018年9月25日 (火)

姫町能の「道成寺」を観てきました

おおきな釣鐘が登場する「道成寺」は一度観てみたいと思っていたのです。

しかし、いちばん安いB席の前売りが1万円はちょっと高い。さらに、わたしが好きな笛の藤田六郎兵衛さんが6月に他界され、ショックで気が抜けてしまいました。わたしを能に引き込んだのは、あの笛の音だったのです。

Hime1

しかし、二日前になって「せっかくのチャンスだから」と思い直し、ネットからチケットを予約。当日、前売料金で入ることができました。姫町財団設立記念公演が、藤田六郎兵衛さん追悼公演になってしまいました。あぁ、あの笛が二度と聴けないなんて返す返すも残念です。一方「道成寺」の小鼓は、人間国宝の大倉源次郎さん。『大倉源次郎の能楽談義』を読んで以来、聴きたかったので楽しみです。一流の能楽師、囃子方を間近で見ることができるのも能の魅力です。

午後1時半開演かと思いきや、まず解説が入ります。これが長くて、能「千手」が始まったのは1時55分。5時半終了予定は大丈夫なのか。それと名古屋能楽堂定例公演では無料のイヤホンガイドが有料でした。(1000円払って借りて、返却時に500円バック)

Hime2

「千手」は、一ノ谷の合戦で敗れた平重衡が鎌倉に護送され、せめてもの慰めにと酒宴がもようされ、そこへ遣わされた千手の前と重衡の心の交流を描きます。

意外に長かったからか休憩が入ります。その後、狂言「萩大名」。愚鈍な大名は31文字の短歌すら覚えることができず、太郎冠者(召使い)が必死にフォローするのですが...。狂言は(能とちがって)なにを言っているのかわかるし笑えるので、深刻なストーリーの能の合間には気分転換にもなります。

その後の仕舞2本は退屈。次の舞囃子「安宅」に登場した囃子方を見て「あ、大倉源次郎さんだ!」。背が高いなぁ。わたしはシテ方より囃子方が気になるので仕方ありません。堪忍してください。大倉源次郎さんの右手が柳の枝みたいに動いています。双眼鏡で見ると指がすごく長い。それがパラパラと自在に動いて、指の腹や先を巧みにつかって鼓を打ちます。なんかすごい!

「道成寺」では、まず狂言方が作り物の鐘に太い竹を通して4人で運んできます。高さが170cmほどあるので竹を頭上に掲げなければならず辛そう。舞台中央に置くと、今度は天辺に結んであるロープをほどいて、天井の輪っかに通します。天井まで5mはあるだろう輪っかにどうやって通すのか。「まさか梯子を立てるわけにもいかないだろうし」と思っていたら、長い竹竿が2本持ち込まれました。作法があるのか、持って回った手順を踏んで一方の竿の先にロープの先端を挟んで、ひとりがそれを輪っかに通したところをもうひとりが先端を掴んで引きおろします。ここで思わず拍手が湧きます。(笑)

そのロープをシテ方が5人がかりで引っ張って鐘を引き上げます。以前「バックステージツアー」で骨組みだけの鐘を見ましたが、その状態で60kgはあるとのこと。つまり、いまは70kg以上? 「動滑車を使えば半分の力で上がるのに」って、そういう問題ではありませんね。

圧巻は、白拍子に化けた大蛇が道成寺の新しい釣鐘の法要に潜り込んで舞を舞うシーン。大鼓につづいて、小鼓がシテ方のほうに向きなおり「一騎打ち」を繰り広げます。ふだんは涼しい顔で鼓を打っている大倉源次郎さんの表情がおおきく動きます。「あぁ、小鼓が見えないから白拍子さん、ちょっと移動してくれないかな」。舞うといいつつ、ほとんど動かないから、能を見ながら寝てしまう人がいるのも無理ありません。寝不足は能鑑賞の敵です。

「鐘入りは危険で、間違えると大怪我をする」と聞いていたので、鐘が落ちる瞬間に飛び込むのかと思ったら、上のパンフレットの写真のように、シテがちゃんと鐘の下に入ってから、ゆっくり鐘を下ろし、あと数十センチのところでドンっと落とすので危険はありません。鐘の下端にはクッションが入っているので軟着陸。それを舞台では「雷が落ちたのか!?」と大騒ぎ。

鐘のなかで衣装替えをするようですが、間狂言が終わったのが25分後。鐘の中は暑くないのかな。舞台の照明は結構熱いのです。

ともあれ、たいへん見ごたえのある曲でした。ありがとうございました。

ちなみに、すべて終わったのは午後6時15分でした。

追記:名古屋能楽堂へ足を運んだときには、ロビーで能などのチラシを探します。面白そうで、開催日時が都合のよいものを探すと、ネットよりもヒット率が高い。そこで見つけたのが、10月5日に名古屋芸術創造センターで行われる文楽(夜の部)「義経千本桜」道行初音旅と「新版歌祭文」野崎村の段。気づくのが遅かったけれど、名古屋能楽堂の事務室で調べてもらったら、まだいくらか席が残っていたのでチケットを買って帰りました。久しぶりの文楽なので楽しみです!

サラバ! (西加奈子)

サラバ! 上 (小学館文庫)
サラバ! 』 に限らず、直木賞とか芥川賞とは距離(時間)を置く癖があるので、4年経ってようやく読んだのですが、非常にくたびれました。

はじめのうちは、ユーモラスな言い回しにクスクス笑いながら読めたのですが、その後も家族の紹介を通じて、延々と自分探しの旅が続くので何度挫けそうになったことか。

それでも、イランで生まれてエジプトで育ったという、異国の地での出来事はおもしろい。エジプトから帰国した母親の戸惑いが愉快。

「まず、スーパーの品数と清潔さに打ちのめされた。一時帰国のときは、宝物のように見えたそれらが、これから永遠に手に入るものだと認識してしまった途端、どうしようもなく贅沢で、ふざけたものに変わった。あらかじめ小さく切られたネギのパックを見て、母は「嘘やろ」と言い、レトルトの袋に書いてある「ここからお開けください」の矢印を見て「阿呆か」と言った。母が言うには、このままでは、日本人の手は退化し、脳みそも小さくなるに違いない、とのことだった」。

これはまったく同感です。日本の企業は日本人(顧客)を甘やかしすぎ。かまぼこや卵焼きくらい自分の手に包丁をもって切りなさい。中学高校入試に「生活力」という実技科目を加えるべきではないでしょうか。

お勧め度:★★★☆☆

2018年9月20日 (木)

料理人の光 ヤッさんIV (原宏一)

料理人の光 ヤッさんIV

料理人の光 ヤッさんIV 』 はシリーズ第4弾。前作からずいぶん時間が経っていますが、個性的なヤッさんは忘れようがありません。

築地市場は移転騒動中なので、ヤッさんは足立市場に現れたようです。

・河川敷食堂
・寮姉の献立
・タケ坊の道
・料理人の光
・日向灘の恋
・旅立つ舌

「ヤッさんシリーズ」ファンの方であれば、安心して読むことができるのでオススメです。

お勧め度:★★★☆☆

2018年9月15日 (土)

プラネタリウムの外側 (早瀬耕)

プラネタリウムの外側 (ハヤカワ文庫JA)

プラネタリウムの外側 』は『グリフォンズ・ガーデン 』の後日譚にあたる連作小説です。理系世界の恋愛小説というのは、文系のわたしには刺激的なのです。

北海道大学にある有機素子コンピュータでチューリングテストの研究を行うという名目で、じつは出会い系サイトで稼いでいる南雲助教のもとへ工学部2年の佐伯衣理奈がやってきます。彼女は元恋人の川原圭が札幌駅で列車に轢かれて死んだのは自殺ではないと確かめるため、有機素子コンピュータで会話プログラムを開発して川原圭の行動をシミュレートしようというのです。

有機素子コンピュータは、同じパラメータを設定しても解が一意にならないので、人間の会話プログラムを組みにはうってつけ。チューリングテストでは、ある人が、2台のコンピュータにテキスト入力して会話を行い、一方が人間、もう一方がコンピュータの会話プログラムが相手をします。どちらが人間なのか区別できなければ、そのコンピュータは知性を持っているといえるというもの。今でいうAI、人工知能の開発です。

出会い系サイトの「さくら」の補助システムとして開発を始めて、徐々にコンピュータに直接、人間(客)の相手をさせるようになっていきます。IDの盗用を防ぐため、登録したApple Watchをはめているときだけログインできるなど、コンピュータ好きには興味深い小説です。

前作同様、現実と仮想現実が交錯するなかで、物語は進んでいきます。さて、南雲助教が手がける会話プログラムはどこまで行くでしょうか。興味のある方はぜひご一読を! 前作を読んでいなくても楽しめます。

お勧め度:★★★★★

2018年9月10日 (月)

下町ロケット ゴースト(池井戸潤)

下町ロケット ゴースト

下町ロケット ゴースト 』は、シリーズ第3弾。

ロケットエンジンのバルブ、人工心臓の弁、そして今回は(耕運機の)トランスミッションのバルブ。なのですが、ピンチに陥るのは佃製作所ではなく、創業5年のベンチャー企業「ギアゴースト」。縁あって佃はギアゴーストに手を差し伸べることになるのですが...。

冒頭、佃製作所では耕運機のエンジンの改良が進み、納入先に採用を打診するのですが、これがピンと来ません。自家用車であればともかく、5%の燃費改善と言われてもピントがずれているような気がします。佃社長らしくない。

たしかに池井戸潤ではあるのですが、どうもキレがありません。これでは「下町ロケット」が墜落してしまいそう。

後編「ヤタガラス」に期待しています。

お勧め度:★★★☆☆

«フォー・ディア・ライフ (柴田よしき)