2019年7月 7日 (日)

渦 妹背山婦女庭訓 魂結び (大島真寿美)

渦 妹背山婦女庭訓 魂結び
渦 妹背山婦女庭訓 魂結び 』は「妹背山婦女庭訓」や「本朝廿四孝」などを書いた人形浄瑠璃作者、近松半二の生涯を描いた小説と聞いては読まねばなりますまい。

・硯
・廻り舞台
・あをによし
・人形遣い
・雪月花
・渦
・妹背山
・婦女庭訓
・三千世界

「妹背山婦女庭訓」の2段目から4段目は見たことがあります。最初は蘇我入鹿が帝位を簒奪しようと目論んでいたのに、気がつくと田舎娘のお三輪が出てきて落差にびっくりしました。でも、それも本書を読んで「なるほどー」と納得しました。お三輪のモデルがいたんですね。

この小説「渦」は、わたしの感覚からすると破天荒なストーリー展開の「妹背山婦女庭訓」が書かれた背景を見事に描いています。人形浄瑠璃ファン必読です!

いちばんよかったのは「雪月花」。半二が嫁取りしたお話です。最後に、お三輪の独白が入ってきますが、半二に作られたキャラクターが浄瑠璃だけでなく歌舞伎でも演じられ、ひとり歩きを始めた証拠。すごくよくわかります。

近松半二いわく「まったくこの世は狂言やな。それぞれが、それぞれの役回りを背負って動いている。いや、動かされているのかもわからんけどな。」

ラストで「柝の音が聞こえた」っていいなーすごく手の込んだ小説です。

お勧め度:★★★★★

2019年6月28日 (金)

任侠浴場 (今野敏)

任侠浴場 (単行本)
任侠浴場 』は「任侠シリーズ」第4弾。出版社、私立高校、病院を立て直してきたヤクザの親分・阿岐本雄蔵が今回手がけることになるのは、赤坂にある銭湯です。

たいして儲からないのに、親分の道楽みたいなものに付き合う代貸・日村誠司は心配性で苦労性。今回は銭湯の経営再建のヒントを得るため、松山の道後温泉まで出張に行くことに。わたしも道後温泉には行ったことがあるので懐かしかったです。

親分いわく「休むときに思いっきり休まねえから、いざというときの踏ん張りが利かねえんだ。日本人はめりはりを忘れちまったんだ」。銭湯は日本のパワーの源だといわんばかり。大風呂敷、ここに極まれり! いいですねえ。こういうノリ、好きです。

お勧め度:★★★★★

2019年6月19日 (水)

スガリさんの感想文はいつだって斜め上 (平田駒)

スガリさんの感想文はいつだって斜め上
スガリさんの感想文はいつだって斜め上 』は書店で見かけて思わず買ってしまった一冊。

1. 夏目漱石『こころ』
2. 新美南吉『手袋を買いに』

茅野から名古屋に転校してきた文学少女・須賀田綴。クラスメイトに分けてあげようと持って来たスガリを出した途端、教室は阿鼻叫喚の坩堝に。スガリとは蜂の子。名古屋の女子高生にとっては「虫」。それ以来、彼女のニックネームは「スガリ」になったのです。

スガリさんは、私立鶴羽学園の男性家庭科教員・直山杏介を顧問に、読書感想部を立ち上げ、ユニークな読書感想文を杏介に読ませようとしてきます。これがなかなか面白い。

一方、名古屋の覚王山にある「揚輝荘」の1階にあるカフェでアルバイトしているスガリさん。ここは実在していて、私も行ったことがあるので親近感を覚えます。

直山先生の出番を減らしてでも、スガリさんをもっと前面に出してほしい! 続編に期待してます。

お勧め度:★★★★★

2019年6月13日 (木)

鹿の王 水底の橋 (上橋菜穂子)

鹿の王 水底の橋
鹿の王 水底の橋 』は「鹿の王」の続編ですが、東乎瑠帝国の医療のあり方を問うものになっていて、ふと『新章 神様のカルテ』を思い出しました。また泣けちゃうのでしょうか?

1. 真那の故郷
2. 秘境 花部
3. 鳴き合わせ、詩合わせ

「鹿の王」の内容を忘れてしまってて読めるのか心配だったのですが問題ありませんでした。黒狼熱大流行の危機を脱した東乎瑠帝国では、ふたりの次期皇帝候補の政争が起こっているところへ、オタワルの医術師ホッサルと恋人ミラルが飛び込んでしまいます。

オタワル医術は人の命を救うことを第一義とし、一方の清心教医術は宗教色がつよく、貝毒や馬の血の血清などを「穢れ」として嫌う。次期皇帝争いは医術2派の命運をも左右するため、ホッサルも巻き込まれてしまいます。

その鍵を握るのが、真那の父・安房那侯。真那によって安房那領に招かれたホッサルとミラルが診た患者は?

読み応えがあり、医療について考えさせる内容でした。あとがきも興味深かった。

お勧め度:★★★★★

2019年6月 6日 (木)

ありふれたチョコレート2 (秋河滝美)

ありふれたチョコレート〈2〉 (アルファポリス文庫)
ありふれたチョコレート2 』は続編であり完結編です。元上司である瀬田と結婚し、SICで働くため、ニューヨークにやってきた茅乃ですが、まず英語の壁に阻まれます。瀬田係としてだけでなく、いろいろ仕事を任される茅乃は、日本でお気に入りだったチョコレートを、なんとかしてアメリカでも手頃な価格で手に入るようにしたいと奮闘します。

恋愛小説というよりはビジネス小説。ラノベとしては珍しい筋立てですね。楽しませていただきました。

お勧め度:★★★☆☆

2019年6月 1日 (土)

新章 神様のカルテ (夏川草介)

新章 神様のカルテ
新章 神様のカルテ 』は「神様のカルテ」シリーズの最新刊です。

主人公の一止は榛名との間に小春という娘に恵まれ、本庄病院から信濃大学の大学院生として大学病院で働くことになりました。医師8年目。大学病院に移っても激務であることは変わらないようです。

1. 緑光
2. 青嵐
3. 白雨
4. 銀化粧
5. 黄落

「元来が医療というものは、人が人の命を左右するという無茶な使命を負わされている。かかる乱暴な礎石の上に、理不尽と不条理と矛盾の三本柱を立て、権威という大きな屋根をかけたのが大学病院だ」。すごくよくわかる説明です。

理不尽と不条理と矛盾に弄ばれ、患者の命を支えるという重圧に耐え、一止はそれでも淡々と漱石節で語ります。生真面目で堅苦しいユーモアが愉快です。しかし、大学病院は重症患者が多いようで、フィクションだとわかっていても気が滅入ります。

クライマックスは残り3分の1。膵癌の29歳女性が7歳も娘と夫との暮らしを1日でも長く続けたいと願い、それに懸命に向き合う医師の姿は感動的でした。スタバで読んだのは失敗。涙が止まりませんでした。

毎日のなにげない暮らしがどんなに幸せなことなのか、心に刺さりました。

お勧め度:★★★★★

2019年5月25日 (土)

八咫烏外伝 烏百花 蛍の章 (阿部知里)

烏百花 蛍の章 八咫烏外伝
烏百花 蛍の章』は、八咫烏シリーズの外伝集です。第一部全6巻を読み終えて時間が経っているので、過去の経緯を思い出せない部分もありましたが、それでも楽しかった。本編では語られなかった、登場人物たちの生まれや育ちなどがわかって、世界観がより深く伝わってきました。

1. しのぶひと
2. すみのさくら
3. まつばちりて
4. ふゆきにおもう
5. ゆきやのせみ
6. わらうひと

3話は残酷だけど純粋なお話、4話は雪哉の母について、5話はその雪哉と若宮とのやりとりに爆笑、6話は、真赭の薄と澄尾のやりとりが愉快です。第2部が待ち遠しい!

お勧め度:★★★★★

2019年5月20日 (月)

うつくしい繭 (櫻木みわ)

うつくしい繭
うつくしい繭 』は、日経夕刊文化面で紹介されたときから興味がありました。

1. 苦い花と甘い花(東ティモール)
2. うつくしい繭(ラオス)
3. マグネティック・ジャーニー(南インド)
4. 夏光結晶(日本 九州・南西諸島)

1話はちょっと切ないし、2話ではラオスの奥地の様子が語られ、3話ではインド。作者はタイで働き、東ティモール、フランス、インドネシアなどに滞在していたとか。久しぶりに面白い小説を読ませてもらいました。

お勧め度:★★★★★

2019年5月13日 (月)

さくさくかるめいら 居酒屋ぜんや 4 (坂井希久子)

さくさくかるめいら 居酒屋ぜんや (時代小説文庫)
さくさくかるめいら 』は「居酒屋ぜんや」シリーズ第4弾。

1. 薮入り
2. 朧月
3. 砂抜き
4. 雛の宴
5. 鰹酔い

結局読むことにしました。鶯に関わる部分は飛ばし読みだけど。只次郎が手習いを教えているお栄はかわいい。幼くてもしっかりしているところは「のんのんびより」のれんげを思い出します。れんげはちょっと変わり者だけど天才肌。

さて、お妙のまわりで人が何人も死んでいます。表面上、不審死はないのですが、これは偶然なのか必然なのか。それは必然でしょう。結末が気になります。

お勧め度:★★★☆☆

2019年5月 8日 (水)

ころころ手鞠ずし―居酒屋ぜんや (坂井希久子)

ころころ手鞠ずし―居酒屋ぜんや (時代小説文庫)
ころころ手鞠ずし』は「居酒屋ぜんや」シリーズ第3弾。

1. 大嵐
2. 賽の目
3. 紅葉の手
4. 蒸し蕎麦
5. 煤払い

2巻を読んで時間が経ったので、読みながら思い出してたら「あ、こいつ...」。そう、林只次郎っていう鶯侍が「ぜんや」の常連なのですが、どうも胡散臭いのです。読むのやめようかなぁ。でも、せっかく借りてきたし、お妙のつくる料理はおいしそうだし。

時代はちがうけれど「居酒屋ぼったくり」と雰囲気が似ています。妙齢の女将が取り仕切る、ちいさな居酒屋に、ちょっと気になる男が通ってくる。旗本の次男坊と、有名企業の創業者一族の次男坊。わたしは「ぼったくり」の要のほうがいいな。

お妙の亡夫は水死らしいけれど、それも怪しい。お妙が知らない謎が隠されているようで気になります。続けて読むべきかどうか。

お勧め度:★★★☆☆

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