2018年11月13日 (火)

月影の舞―立場茶屋おりき4 (今井絵美子)

月影の舞―立場茶屋おりき (時代小説文庫)

月影の舞 』は「立場茶屋おりき」シリーズ第4弾。

連作が続くほど、物語が折り重なって厚みが出て来ます。意外なところで過去の伏線が回収されて吃驚することも。独特の江戸語?にも慣れました。

1. 雨安居
2. 月影の舞
3. 秋の夕
4. 散紅葉
5. 風花

困っている人間は助け、職を与え、あまつさえ寝食にも困らないよう気を遣う。とっても男前なおりきです。また、そこに惚れ込んだ人たちが、おりきのピンチにはすかさず援助を申し出る。現代が失った「情」が生きている。そこがこの小説の魅力です。

お勧め度:★★★☆☆

2018年11月 8日 (木)

秋の蝶―立場茶屋おりき 3 (今井絵美子)

秋の蝶―立場茶屋おりき (時代小説文庫)

秋の蝶 』はシリーズ第3弾。

1巻を読んだときはピンと来なかったのですが、2巻以後、いろんな出来事がつながっていくので面白くなってきました。江戸の昔は、貧しくて死んだり、いきなり殺されたり、女衒に売り飛ばされたり、現代では考えられない悲劇が珍しくなく、それはおりきの周辺でも起こります。

売り飛ばされた三吉をようやく見つけ出し、おりきは立場茶屋に連れ戻し、妹おきちや茶屋の人々に支えられ、三吉がすこしずつ立ち直っていく様子には救われる思いがします。

1. 秋の蝶
2. 星月夜
3. 福寿草
4. 雛の燭
5. 海を渡る風

それにしても、おりきはよくできた人です。他人がちょっと気に入らないからといって毛嫌いせず、ましてやお客であれば誰であれ、常と変わらず真心を込めて接待します。だからこそ、人気の立場茶屋であり続けるのでしょう。

お勧め度:★★★★☆

2018年11月 5日 (月)

本のエンドロール (安藤祐介)

本のエンドロール

本のエンドロール 』 は、本を印刷、製本する過程を紹介する本だと思っていたら、小説だったんですね。印刷会社の営業担当・浦本学が主人公の、お仕事小説です。

1. スロウスタート
2. 長篠の風
3. ペーパーバック・ライター
4. サイバー・ドラッグ
5. 本の宝箱

しかし、この主人公が、あえてそういうキャラにしてあるのは理解できるのですが、仕事ができない上に、とんでもないお人好しなのです。自分の力でなんとかしようとするのは立派ですが、自分で責任を持てないなら上司や先輩を巻き込むべきです。それなのに取引先と勝手に盛り上がって事後承諾になるから上司はたまりません。それでも許されるのですから、この印刷会社は「夢のような職場」です。

わたしにとっては非常にストレスの溜まる一冊でしたが、電子書籍の台頭と、ほんとうに印刷業界は斜陽産業なのかについては興味がありました。電子書籍の普及は価格がネックだと思います。AmazonのKindle本を見る限り、紙の本より若干安いだけ。印刷も流通も不要なのだから、もっと安くできるのにしない。安くすると紙の本が売れなくなるから出版社も安くしない。1,500円の新刊単行本を買って、古本として700円で売れれば、実質800円で読めたことになります。一方の電子書籍は再販できないので、明らかに値付けが高すぎます。価格が納得できないものは買いません。

また、作中でも触れてありましたが、わたしは紙の本で育ったので、紙に馴染んでいますし愛着があります。でも、幼い頃からタブレットで本を読む世代が育てば、また変わってくるのでしょう。22世紀には、印刷は過去の技術になっているかもしれません。

お勧め度:★★★☆☆

2018年11月 2日 (金)

下鴨アンティーク 回転木馬とレモンパイ (白川紺子)

下鴨アンティーク 回転木馬とレモンパイ (集英社オレンジ文庫)

下鴨アンティーク 回転木馬とレモンパイ 』は、シリーズ第2弾。

1. ペルセフォネと秘密の花園
2. 杜若少年の逃亡
3. 亡き乙女のためのパヴァーヌ
4. 回転木馬とレモンパイ

2話で「杜若」と出たときに「ひょっとしたら」と能を連想し「井筒」と続いて確信しました。能が絡んでくるのがうれしい。京都、アンティーク着物、能、おいしい食べ物。着物のことは詳しくありませんが、わたしが好きな要素が詰まっていて、読んでいて楽しい。

主人公たちが通うのは同志社だな、とか、東寺の弘法市で、小柄な鹿乃が迷子になるのも無理はないとか、風景が眼に浮かぶのも楽しいのです。

今作では、4話がいちばん面白かった。不可思議度ナンバー1です。野々宮家の鹿乃と良鷹はさしづめ、古い着物についた物の怪を調伏する陰陽師のようです。

お勧め度:★★★☆☆
    

2018年10月30日 (火)

下鴨アンティーク アリスと紫式部 (白川紺子)

下鴨アンティーク アリスと紫式部 (集英社オレンジ文庫)

下鴨アンティーク アリスと紫式部 』 は、旧華族である野々宮家の娘・鹿乃が主人公。彼女は祖母から受け継いだ着物を愛用しているのですが、その着物は次々と不思議なことが起こります。

ずぼらなイケメン兄・良鷹と、大学准教授の下宿人・慧と3人暮らし。鹿乃は小学生の頃から慧を知っていて現在高校3年。京都を舞台に、ありえない不思議とほのかな恋物語を紡ぎます。

1. アリスと紫式部
2. 牡丹と薔薇のソネット
3. 星月夜

京都を舞台にした小説が好き。「あ、これは出町ふたばだな」「岡崎で能を見るなら京都観世会館だろうな」とか。演目は「熊野」と「石橋」かぁ。知っている場所が出てくるとうれしい。気軽に読めるので気に入ったのですが、外で読むには少女チックな表紙がちょっと恥ずかしい。

お勧め度:★★★☆☆

2018年10月26日 (金)

踊れぬ天使 佳代のキッチン (原宏一)

踊れぬ天使 佳代のキッチン
踊れぬ天使 』は「佳代のキッチン」シリーズ第3弾。

おいしいものと旅の風景を両方味わうことができるので、このシリーズは大好きです。今回は韓国から始まるから驚いのですが、釜山で「移動調理屋」をするわけではなく、観光旅行でした。

1. おみちょの涙
2. チャバラの男
3. ロングライド・ラブ
4. 踊れぬ天使
5. モンクス・ドリーム
6. カフカの娘

1話の「おみちょ」は金沢の近江町市場のこと。行きました。寒い時期だったのでカニだらけでした。高くて手が出なかったけれど。2話は藤枝市の茶畑が舞台。3話は佐渡島の自転車イベント、ロングライド。4話は群馬県大泉町のブラジル人との交流。5話は山形市でジャズピアノを聴きます。6話はついに稚内へ。しかも礼文島にも渡っちゃいます。いいなぁ、羨ましい。ぼくも稚内に行きたい!

ブラジル料理は想像できませんでしたが、あとは美味しそう。今後も期待しています。

お勧め度:★★★★★

2018年10月24日 (水)

雪の断章 (佐々木丸美)

雪の断章 (創元推理文庫)

雪の断章』は『ビブリア古書堂の事件手帖 ~扉子と不思議な客人たち~ 』で紹介されていたので鶴舞図書館で昭和50年の初版本を借りてきました。これ、活版印刷じゃないですか。

孤児の少女・飛鳥が、札幌中央通り公園で滝杷祐也に拾われ、養育され、大学進学を果たすまでの成長記であり、心の遍歴を記した物語です。ミステリーとしての殺人事件も起きますが、主眼はあくまで飛鳥の精神に置かれています。

飛鳥は5歳で孤児院から本岡家に引き取られ、そこで使用人以下の虐めに納得できず逃げ出したところを滝杷祐也と出会い、事情を聞いた彼は本岡家に電話するも「放り出していい」と言われ、やむなく自宅に泊めることにしたのですが...。

あとがきによると「飛鳥を生んだのは雪であり、少女へ、大人へと育てたのは美しい吹雪でした」。だから「雪の断章」なのですね。

思ったより面白かった。わたしは初めて知ったのですが、高校生くらいに読むといいかもしれません。

お勧め度:★★★★★

2018年10月22日 (月)

昭和天皇のお食事 (渡辺誠)

昭和天皇のお食事 (文春文庫)
昭和天皇のお食事 』は『ビブリア古書堂の事件手帖 ~扉子と不思議な客人たち~ 』の冒頭で紹介されていたのを見て、即、ネットから名古屋市図書館で予約したのです。

が、実際に紹介されていたのは『昭和天皇のお食事 』(板垣 信久、小西 千鶴著)でした。こちらは名古屋市図書館は所蔵しておらず、思わず同名の表記の本を借りたのでした。調べて見ると愛知県内の図書館にはなくて、国会図書館(東京、大阪)か岐阜県図書館にあります。買うには高いので借りたいけれど、岐阜県図書館では借りることができません。困ったな。

でも、この本も面白かった。昭和天皇がなにを食べているのかなんて知りませんでしたから。ホテルのフランス料理人だった著者が皇居の大膳に勤めることになり、それまではコストとスピード優先だったのが、食材の無駄よりも料理の完成度を求めることに戸惑い、ひととおりのことが叱られずにできるのようになるのに2年を要したといいます。

宮家は国賓も招くわけですから、さぞかし贅沢をしているように思ったのですが、そうではなく、鰻の蒲焼がお好きだったとか、高級フランス料理ばかり食べていたわけではないよう、すこし親近感をおぼえました。作中にもありますが、内外の賓客の接待のために昼も夜もフォアグラではつらいでしょう。そういうものはたまに食べるから美味しいわけで、ふだんはごはんと味噌汁がいちばん。好きなときに、好きなものを食べられるという意味では庶民のほうが幸せです。

また、今上天皇や皇太子殿下ではまた料理の出し方も変わってきているようで興味深いです。料理は人の身体をつくり、人を幸せにします。宮家の健康を背負っているという自負がつよく伝わってきます。大林宣彦のあとがき「解説にかえて」が泣けました。

お勧め度:★★★★☆

2018年10月19日 (金)

ビブリア古書堂の事件手帖 ~扉子と不思議な客人たち~ (三上延)

ビブリア古書堂の事件手帖 ~扉子と不思議な客人たち~ (メディアワークス文庫)

ビブリア古書堂の事件手帖 ~扉子と不思議な客人たち~ 』は、シリーズ第8弾。

1. 北原白秋 与田準一編 『からたちの花 北原白秋童謡集』(新潮社)
2. 俺と母さんの思い出の本
3. 佐々木丸美『雪の断章』(講談社)
4. 内田百間『王様の背中』(楽浪書院)

前作で栞子と大輔が結婚することになり、一区切りついたのですが、今度はふたりの娘・扉子を加えて続きます。6歳の扉子は母親に似て本が大好きで勘が鋭い。店の売り物の本を読んではいけないと言われているのに我慢できず、隅っこに隠れて本に没頭しているような女の子。母親としては、もっと友達と遊ぶとかしたほうがいいのに、と心配なようです。

次作での扉子の活躍が楽しみです。

お勧め度:★★★★★

2018年10月16日 (火)

闇の虹水晶 (乾石智子)

闇の虹水晶 (創元推理文庫)

闇の虹水晶 』 は、人の感情や病気などの「気」から石を作り出す力を持つ創石師ナイトゥルが主人公。彼は「その力、使えばおのれが滅び、使わねば国が滅びよう」という呪いを受けています。家族を殺した敵国に仕えることになったナイトゥルは...。

本格ファンタジーと言われるだけあって、読むのにパワーが要ります。それでも時々読みたくなるのです。

お勧め度:★★★☆☆

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